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JFETやMOS FETでおなじみの電界効果トランジスタってどんな半導体?

電子工作に携わっている方にとって、電界効果トランジスタ、あるいはFETという言葉は非常に馴染み深いものであると思います。

現在あらゆる電子機器に使われている半導体素子であり、もし電界効果トランジスタがなければ、私たちの生活は今とは大きく異なるものだったでしょう。

それくらい、不可欠なものとなります。

でも、実は電界効果トランジスタについてよくわからない・MOS FETは知っているけど、電界効果トランジスタって何?と言った方は意外と多いもの。

そこでこの記事では、電界効果トランジスタの概要および種類・分類、用途について解説いたします。

電界効果トランジスタとは?

1. 電界効果トランジスタとは?

電界効果トランジスタは、FET(Field effect transistor)とも呼ばれます。

その名の通り、電界を利用して電子回路内で電流制御を行うトランジスタのことです。

では電界とは何かと言うと、電流が流れている場所です。

物質は電流が流れると帯電することとなりますが、帯電物の電荷が影響を与える範囲の空間を電界と呼びます。

電界効果トランジスタを簡単に解説すると、ある物体の電界が、別のところから流れてきた電荷を引き付け電流の通り道を作るトランジスタとなります。

また、電界効果トランジスタは、三つの端子を持っていることが特徴です。

この端子はそれぞれドレイン・ソース・ゲートと呼ばれており、後述する電界効果トランジスタの種類によって動作原理は異なりますが、ゲート端子で電圧印加したりしなかったりすることで、ドレイン・ソース間を流れる電流をオンにしたりオフにしたりと言った制御を行います。

そのため、スイッチング素子や増幅素子としての役割を担います。

この時、ドレイン・ソース間を流れる電流の通り道のことを、チャネルと呼びます。

トランジスタはp型半導体とn型半導体で構成されますが、正孔(プラス電荷)がキャリア(電荷の運び手)となる電界効果トランジスタをp型チャネル、自由電子(マイナス電荷)がキャリアとなるものをn型チャネルと呼びます。

ただし、大半の電界効果トランジスタは、ソース・ドレインは同じ半導体が使われているため差異はありません。

そうは言っても、実際の使用下で逆にすることはできません。

ちなみに、バイポーラトランジスタまたはユニポーラ(モノポーラ)トランジスタといった用語を聞いたことがありませんか?

バイポーラトランジスタの場合はそれぞれの半導体の正孔と自由電子の両極性を用いて電流を流します。

最初にトランジスタが発明された時は、バイポーラトランジスタを指していました。

その後、電流を流す時、正孔か自由電子いずれかのみを利用するユニポーラトランジスタが開発されますが、電界効果トランジスタはこのユニポーラ型に当たります。

電界効果トランジスタでドレイン・ソース・ゲートと呼ばれる端子は、バイポーラトランジスタではコレクタ・エミッタ・ベースと称します。

もっとも、電界効果トランジスタは種類によって構造が若干変わり、後述するMOS FETではドレイン・ソース・ゲートの他に逆起電時に回路破損を防ぐためのバックゲート端子(寄生ダイオード)が搭載されていたり、複数ゲートや複数FETを組み合わせたりした製品もラインナップされています。

また、電界効果トランジスタは前述の通り電界によって電流制御を行うため駆動方式は電圧となりますが、バイポーラトランジスタは電流駆動です。

そのため電界効果トランジスタは入力インピーダンス(入力時の抵抗)が高いというメリットを有します。

さらに言うと自己消費電力がきわめて少なく、かつ高速動作が可能であることから、様々な電子機器に用いられてきました。

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2. 電界効果トランジスタの種類・分類

電界効果トランジスタとひとくちに言っても、いくつかの種類が存在します。

また、その種類分けは、「何で分類するか」によって変わってきます。

ただ、比較的ポピュラーな分類として、ゲート接合部分がどのような構造となっているかでJFETとMOS FETに二分することがあります。

① JFETとMOS FET

JFETはJunction Field Effect Transistorの略で、「接合型電界効果トランジスタ」と呼ばれています。

JFETは土台となるp型半導体またはn型半導体にゲートを取り付けたものですが、ゲート部分は土台と対極になる半導体を用い、PN接合を構成します。

JFETにもnチャネル型とpチャネル型があり、前者はゲートに電圧印加をしない状態でドレイン・ソース間に電流が流れ、ゲートにマイナス電圧を印加するとオフ状態となります。

後者はゲートに電圧印加をしない状態でオンになることは同一ですが、ゲートにプラス電圧を印加することでオフ状態となります。

MOS FETはゲート部分をMOS(Metal Oxide Semiconductor)構造とした電界効果トランジスタを指します。

このMOSとは金属酸化膜半導体のことで、シリコン表面を酸化させてSiO2(二酸化シリコン膜)を作り、かつ電極として金属を搭載させたことが特徴です。

JFETと同じくp型半導体またはn型半導体を土台に用いますが、ソース・ドレインにそれぞれ対極となる半導体が取り付けられた積層構造を採ります。

JFETと異なり、ソース・ドレイン間にだけ電圧印加しても電流は流れません。

しかしながらnチャネルにおいては、ドレイン・ソースそれぞれにプラス・マイナスとなるよう電圧印加し、さらにゲートからプラスの電圧印加を行うことで導通を果たします。

pチャネルではドレイン・ソースそれぞれにマイナス・プラスとなるよう電圧印加し、さらにゲートからマイナスの電圧印加を行うことでオン状態となります。

現在はMOS FETの方が主流となりつつあります。

なお、MES FETと呼ばれる、ゲートをショットキー接合性金属として用いるタイプの電界効果トランジスタもあります。

ショットキー接合とはpn接合のように整流作用を持つ金属・半導体のことを指しますが、pn接合に比べて高速動作が可能となります。

そのためMWS FETは非常に高性能なデバイスとして知られていますが、一方で低ゲインといった特性もあります。

そのためHBT(ヘテロ接合バイポーラ・トランジスタ)が取って代わるようにはなってきましたが、比較的高価などといった欠点も存在します。

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② エンハンスメントモードとディプレッションモード

さらに別の電界効果トランジスタの分類として、ゲート電圧への印加の有無によってオンオフがどのように変わるか、といったモードも挙げられます。

二種類あり、それはゲートに電圧印加しないと電流が流れないエンハンスメントモード(ノーマリーオフ)

そして電圧印加していない時に電流が流れるディプレッションモードです。

MOS FETのほとんどはエンハンスメントモードとなり、JFETはディプレッションモードとなります。

ただし、ゼロスレッショルドと呼ばれる、エンハンスメントモードとディプレッションモードの折衷デバイスも近年ではラインナップされるようになってきました。

MOS FETで用いられる仕様で、スレッショルドとは閾値(しきいち)のこと。閾値電圧が0Vになるよう調整されていることが特徴です。

3. 電界効果トランジスタの用途

前述の通り、トランジスタ自体がスイッチングや増幅素子として用いられます。

では、なぜバイポーラトランジスタではなく、電界効果トランジスタが使われるのか?

それは、電界効果トランジスタが「電圧」によって電流制御できる、という特性が一つの大きな理由として挙げられます。

電圧による制御は入力インピーダンスが高く、かつ余計な電流が流れないため、前後の回路に与える影響を最小限で済ますことができます。

これは、自己消費電力が少なく、エコであることにも繋がります。

高速スイッチングが可能、というのも利便性が高い点ですね。

また、比較的小型化しやすく、集積化が容易である、という点も挙げられます。

とりわけMOS FETにおいては小型デバイスによく用いられてきました。

そのため電界効果トランジスタは、アナログ・デジタル回路ともに広く用いられています。

アナログ回路においては、パワーエレクトロニクスの分野でよく活躍しています。電源回路における増幅素子として。

あるいはインバーターや電子ボリュームなど、その使用シーンは多岐に渡ります。

ちなみにIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)のベース部分として用いられることもあります。

デジタル回路では、ロジック素子として用いられます。小型化による集積化が比較的しやすい電界効果トランジスタならではです。

私たちの身の回りの様々な電子デバイスに搭載される電界効果トランジスタは、私たちの生活に必要不可欠なものであることがよくわかります。

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