私たちの日常生活の、何百・何千の電子機器にセンサは使用されています。
血圧を正確に数値化して健康管理をする。
スマートフォンを横向きにすると画面も傾く。
デジタルカメラで美しい風景を高画質で写真に収める。
快適な空間のために、任意の温度・湿度を保つ。
こういった、普段何気なく活用している機能は全てセンサの恩恵によるものです。
私たちの生活に欠かせない、そしてこれからもより利便性を高めてくれるセンサについて、理解を深めましょう。
この記事では、圧力センサ、加速度センサ、光センサ、湿度センサ、温度センサの5種類を解説いたします。

目次
1. センサとは
センサの語源は英語のセンス(sense)です。
「感覚、五感」「知覚」といった名詞であり、「~を(五感のいずれかで)感じる」「(機械が自動的に)~を感知する」といった意味ですね。
この語源の通り、センサは人の五感で感じるような現象、あるいは外的信号を感知し、再現し、電気信号へと変換できる電子素子です。
そうは言っても、「検知」自体が容易ではありません。
例えば私たちは、光や音(空気の振動)、圧力などであれば検知しやすく、再現も比較的できそうなように思えます。
一方で味覚であったり、匂いであったり、時にはストレスであったり、言葉にするのも難しい感覚と言うのは存在しますね。
しかしながら現代のセンサ技術は非常に進んでおり、そういった言語化しづらい・検知したかどうかもわからない感覚を検知し、再現し、電気信号に変換しています。
また、人間の感覚ではどうしても結果に安定性を欠きますが、センサは高精度に、そして正確に測定し、数値化してくれます。
このように、今やセンサは私たちの能力を超えて「五感」を持ち、微細な感覚までもカバーしてくれていると言えるでしょう。
なお、センサの測定範囲は入力信号と出力信号の関係から決められています。
入力値が大きすぎると出力がそれ以上に上がらず、反対に小さすぎる場合には十分な出力が得られない、ということになります。
検出できる最小量のことを検出限界と呼び、入力信号に対する出力信号の割合を感度、あるセンサが有効に測定できる範囲をダイナミックレンジと言います。
また、センサには半導体が欠かせません。
センサ自体の歴史は長く、半導体を検知素子に用いないものもありますが、本稿では一般的に広まっているシリコン製半導体センサを主軸に解説いたします。
しかしながら最近では、シリコンよりも熱伝導率が高く、シリコンに代わる画期的なセンサ材料としてダイヤモンドが注目度を高めています。
2. 圧力センサとは
圧力センサは五感で言うと、「触覚」を検知するセンサと言えます。
もちろん被計測体は物体のみならず、気体や液体からかかる圧力を検知するためにも広く使われています。
具体的な使用例では、血圧計がわかりやすいでしょう。もちろん血圧計のみならず、自動車エンジンの制御、エアコンの風圧制御などに用いられてきました。
圧力センサの多くは、センサに設けた弾性体の「たわみ」で圧力を検知し、たわみの量を検出することで利用できます。
この弾性体部分によっていくつかの種類があるのですが、前述の通り、現在最も使われており、高感度を誇る半導体式についてご紹介いたします。
1 圧力センサの原理・仕組み
圧力センサは、弾性体でたわみの量を検出する、とお話しました。
この弾性体をきわめて薄く設計し、より感度を高めた変換器をダイヤフラム(隔膜)、検出機器としてダイヤフラムゲージと呼びます。
センサチップにあたる、というわけですね。身近では、聴診器の身体に当てる箇所で用いられています。
ちなみに加工技術の向上により、このダイヤフラムをシリコンウェハー(ICチップの基板にあたる部分)上に作成できるようになってきました。
そのためチップ化が実現しており、小型機器にもますます活用されています。
また、ダイヤフラムに耐腐食性の材料を使用することで、反応性がある液体・気体も計測対象とすることができます。
このダイヤフラム上に、さらにp型半導体で形成したひずみセンサ(検知されたたわみ量を再現し、電気信号に変換するための半導体素子)を設けます。
このひずみセンサは、なぜ電気信号を発することができるのでしょうか。
それは、ピエゾ抵抗と呼ばれる、半導体の特性によるものです。ちなみにピエゾとは「押す」という意味のギリシャ語です。
半導体にひずみを与えると電気抵抗が発生します。この電気抵抗がどれくらい変化したか=どれくらいたわんだかがわかるため、圧力検知へと繋がるのです。
その後、増幅回路によって信号が増幅され、圧力として測定されます。
ちなみに従来の金属線を用いたひずみセンサに比べて、ゲージ率(ひずみの変形と電気抵抗の変化を関係式にしたもの。
ゲージ率が大きいほど感度が高く、最小量も大きい)が高く、高精度なことが特徴。
また、ひずみセンサ自体もシリコン製半導体であるため、ダイヤフラム上に簡単に作成でき、かつ小型・軽量化にも適しています。
とはいえピエゾ抵抗による電気抵抗変化だけでは検出結果に十分とは言えません。
そこで、4つのひずみセンサをブリッジ回路(ホイートストンブリッジ回路と呼ばれる)で構成することで、微小なたわみ量をより正確に検知しています。
なお、圧力センサ単体としてもよく用いられますが、ダイヤフラム基板上に温度センサや増幅回路、電源などを組み込み、インテリジェントセンサ(集積回路タイプのセンサのこと。
一個でデータ処理やメモリを内蔵している優れもの)として利用されることもあります。
ちなみにこういった利用技術をMEMS(メムス、Micro Electro Mechanical Systems)と言います。
センサのインテリジェンス化は現在急速に進んでおり、圧力センサのみならず各種センサで、あらゆる産業の飛躍へと貢献しています。
2 圧力センサの用途
自動車のエンジン制御、血圧計、エアコンや掃除機の風圧制御と言った身近なところから近年急速に成長しているロボット産業までとあらゆるところで用いられます。
後者はロボットハンドの握力を制御し、生卵などと言ったやわらかなものを割らずにつかむ、という動作を実現しています。
また、2016年、大阪に本社を置くコンフォートラボから、圧力センサで人によって異なる重心を検知し、その人の身体に最適な靴を提供できる足型測定機器を開発し、世間を沸かせました。
3. 加速度センサとは
ゲームのコントローラーに使われたことで、にわかに注目を浴びた加速度センサ。
「加速度」とは単位時間あたりに速度がどれくらい変化したか、その変化の割合を示したものです。
こう聞くとわかりづらいかもしれませんが、傾きや動き、振動あるいは衝撃と言った変位量を検知・検出するためのセンサが加速度センサです。
例えばゲームのコントローラーを傾けて、画面の中のモーターカーを操縦した経験はありませんか?
これは、コントローラーに内蔵された加速度センサが、コントローラーの傾きの変位量を検知し、ゲーム内に反映されている形です。
また、自動車のエアバックも加速度センサの仕事です。車がどれくらい衝撃を与えられたか、どれくらい傾いたかをセンサに検知させ、エアバックを稼働させています。
1 加速度センサの原理・仕組み
加速度センサは加速度の検出方式によっていくつかの種類に分かれますが、現在多くの小型機器類に採用されているのが、前項でも言及したMEMS技術によるものです。
MEMSは数ミリとい極小にまでシュリンクしたセンサをウェハー上に集積化させ、小型かつ高感度・高精度を実現することに長けた注目技術。
圧力センサと同様に、加速度センサの拡張性をますます高めてきました。今回は、このMEMS式加速度センサの原理・仕組みをご紹介いたします。
とは言え、加速度センサの原理は結構プリミティブ。
ご存知、ニュートンの運動方程式を利用しています。
ニュートンの運動方程式をおさらいすると、ある重りにかかる力をF、それによってバネが伸びた量(変位量)をα、重りの質量をmとした時、F=mαと言うものでしたね。
さらに、バネの変位量はかけた力に比例するため(フックの法則)、バネにかかる力をF、バネ定数をk、バネの変位をxとした時、F=kxという方程式も成り立ちます。
このことから、加速度と変位の関係は加速度α=kx/mという計算式で表すことができ、つまりバネがどれくらい伸びたか、その変位量を測れば加速度αを算出できる、と。加速度センサは、この原理を利用しています。
なお、MEMS型加速度センサは、変位量を測定し加速度を算出するセンサチップと、そのチップからの信号を増幅・調整して正確な電気信号に出力する回路で構成されているのですが、センサチップの素子よってさらに細かく分類することができます。
この素子は、加速度センサの仕様に大きく影響します。
代表的なピエゾ抵抗式と、静電容量式をご紹介いたします。
- ■ピエゾ抵抗効果を利用した加速度センサ
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X圧力センサでもご紹介したピエゾ抵抗。圧力センサでも用いられています。
ひずみがかかった時に電気抵抗が発生し、その変化量によって変位を検出する、と言うものでしたね。
仕組みとしては、センサチップの可動部(ニュートン方程式の「重り」にあたる部分)と固定部を繋ぐバネの箇所に半導体をセッティングし、バネが変化するとピエゾ抵抗効果によって電気抵抗が発生、その変化値で加速度センサの役割を果たします。
多くのMEMS製品に言えることですが、構造がシンプルなため大量生産が可能なことから比較的安価。
そのため携帯電話やゲーム機器などに用いられています。後述する静電容量式に比べるとやや感度・精度は低くなりますが、広範に普及しています。
なお、圧力センサ同様、ホイートストンブリッジ回路が組まれ、素子が四つ使用されます。
- ■静電容量変化を利用した加速度センサ
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もう一つ、静電容量の変化を利用した加速度センサもポピュラーです。
静電容量とは、蓄電量のこと。どれくらい電荷を貯められるかを表します。
このセンサチップは可動部とバネ、そしてひずみによって静電容量変化を発生させる櫛の歯状の電極で構成されており、可動部が電極日本に挟まれるような形で設計されています。
この可動部に力が加わると二枚の電極版の距離が変わり、静電容量が変化します。コンデンサの特性を思い出してほしいのですが、静電容量は挟まれた電極板間の距離に反比例しましたよね。
こうして、静電容量変化から加速度を検出し、信号処理している、という手法です。
このセンサチップにはシリコンやガラスといった安定した物質を用いるため温度特性に優れ、かつ微細かつ繊細な加工がしやすく、多くのメーカーから採用されています。
このように、加速度センサはいくつか種類がありますが、MEMS技術によって小型・軽量で、手に入れやすい価格帯で売り出されています。
また、多軸タイプの加速度センサもラインナップされており、より精密・精緻な加速度に対する検出が実現しています。
2 加速度センサの用途
ゲームのコントローラーで傾きに応じて画面のキャラクターの動きを変える。
あるいはスマートフォンの画面切り替え。
また、カメラの手ブレ感知モードも、加速度センサが用いられています。
ちなみに歩数計も用途として挙げられます。
上下・前後・左右への移動を検知することで歩数を検出しています。
その他自動車のエアバッグ。また、圧力センサでもご紹介したロボット産業ですが、倒れた際に自力で起き上がる機能は加速度センサに依るものです。
4. 光センサとは?
光センサは光検出器とも呼ばれるように、光の有無をキャッチし、電気信号に変換する電子部品です。
光を受けて発動することから、受光素子とも呼ばれます。私たちの目も、光を受けて視覚していますよね。
光センサもまた、ありとあらゆるシーンで活用されています。
コンビニの入り口の前に立つと自動ドアが開く、人が通ると玄関ライトが点灯する、トイレから出ると勝手に水が流れる、など、今や当たり前となった便利なこれらの機能は、人体が影となってセンサに光が遮断されることによって起動する仕組みとなっています。
光センサの良いところは、センサと接触することなく検出が可能なこと。
被検出体の制約も少ないため、汎用性の高さも特徴です。
また、光センサが検知する光は、何も可視光だけに留まりません。
赤外線や紫外線などを感知し、明確な電気信号にすることで、人では視覚できない光にも対応してくれます。
1 光センサの原理・仕組み
あらゆる光センサが存在しますが、半導体の光電効果を原理としたものが多くなります。
光電効果とは、光の照射によって励起した(エネルギーを持った)電子が飛び出したり、光起電力が発生したりする現象です。
物質の表面から電子が外部に飛び出すことを外部光電効果、物質内部で電子が励起され、伝導体の役割を担う電子が増加する現象を内部光電効果と呼びます。
前者は金属、後者は半導体や絶縁体に見られる現象です。
外部光電効果を使った光センサには光電管や光電子増倍管があります。
内部光電効果を使った光センサは光導電セルやフォトダイオードなどが挙げられます。
前述の通り、現在のセンサ技術は半導体が主流のため、後者の方式がよく用いられています。
センサは長寿命なことが求められるため、それに適した半導体が使われていることも要注目。それぞれの仕組みをご紹介いたします。
- ■光導電セル
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光導電セルは半導体の内部光電効果によってエネルギーを得た電子が自由に移動することで電気抵抗が下がる、という光導電効果を利用したセンサです。
フォトレジスタやフォトセルとも呼ばれます。
この材料には、可視光対象となりますが、硫化カドミウム(CdS)と呼ばれる硫黄とカドミウムの化合物が用いられます。
優れた感度を持ち、比較的大電流にも対応。かつ安価であることから幅広く利用されています。
ただし反応速度はやや遅くなります。
また、カドミウムがRoHA(ローズ、ロハス。EUによる有害物質規制)の指定物質となっていることから、EU圏内では使われていません。
- ■フォトダイオード
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フォトダイオードは、 光の強度の増加に対して流れる電流の量が変化する半導体です。
光の強度が増すと光起電力が発生します。
ダイオードの名前の通り、p型半導体とn型半導体で構成されることとなり、PN接合タイプ、p型半導体とn型半導体の間に真性半導体(抵抗が大きい)i層を形成したpinタイプとが存在します。
光導電セルに比べて応答速度に優れていること。
また、紫外線から近赤外線まで高い感度を実現すること。
さらに、低ノイズで比較的長寿命であることから、こちらも様々なシーンで使われてきました。
なお、抵抗が大きくキャリアの少ないi層を挟んだpinタイプの方がp型半導体-n型半導体の接合容量が減るため、応答速度は高くなります。
ちなみに今回は光の強度(量)を検出する光量センサを中心に解説いたしましたが、光には強度の他、波長(色)・位相・偏光という情報があります。
特に波長の検出は非常に難易度が高いのですが、簡易型分光器などで精密な検出・検知が可能となってきました。
2 光センサの用途・使い方
光の遮断によって動作する自動ドアや自動点灯ライト。
あるいはエアコンやテレビなどのリモコン-電源間の信号伝送。
デジタルカメラの撮影素子など、非常に身近なところで用いられているのが光センサです。
また、医療分野でも欠かせないセンサで、レントゲンのX線もまたイメージセンサを使って電磁波を利用することで実現しています。
5. 湿度センサとは?
「今日、ムシムシしない?」そんな会話を誰しもがしているでしょう。
そんな湿度を検知・検出し、電気信号に変えるのが湿度センサです。
湿度とは、空気中に含まれる水蒸気の水の量を数値化したもの。
空気が含むことのできる水蒸気量(飽和水蒸気量)を1とした時、実際の空気中の水分量を比率で表します。
なお、飽和水蒸気量は、温度によって一定です。そのため、後述する温度センサと一緒に使われることが多くなります。
1 湿度センサの原理・仕組み
昔は「伸縮式湿度計」などとも呼ばれる、シンプルな湿度計を使って計測を行っていました。
簡単に解説すると、湿度によって伸縮する毛や糸をセッティングして、その伸縮状況で変位量を計測する、というものです。
構造は単純で直読できるというメリットはありますが、一方で誤差が大きいという難点もあります。また、目視しなくてはならないため、オートメーション化することができません。
そこで、半導体の出番です。この毛や糸の代わりに半導体を用いて、素早く正確な湿度のセンシングが可能になってきました。
電気信号に変換するため電気式湿度計とも呼ばれます。
この湿度センサでよく用いられる方式には、静電容量方式と抵抗変化方式があります。
- ■静電容量方式
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加速度センサのところでも解説しましたが、半導体の静電容量の変化で計測を行う手法です。
仕組みとしては、二つの電極間に感湿材料を挟み込みます。この材料が吸湿すると二つの電極の距離が開き、静電容量は小さくなります。脱湿されると静電容量は大きくなります。
この変化を電気信号として、検知する、という手法です。
静電容量式は高精度で応答速度がきわめて早く、結果も安定しています。
また、感度が高いため低湿度の計測にも対応できるという便利なセンサ。
一方でノイズ対策が必須で構造も複雑化しやすく、コストがかかってしまうという点もあります。
そこで、もう一つの方式として、抵抗変化が選ばれるケースもあります。
- ■抵抗変化方式
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抵抗変化方式の湿度センサも電極と感湿材料を用いますが、こちらは櫛型にした電極の上に感湿材料を塗布して感湿膜を形成します。
この電極には電流が流されており、湿度が上がって感湿膜が吸湿すると水分子が増え、感湿膜の可動イオンも増えます。
すると電極同士のインピーダンス(簡単に言うと、交流の抵抗の総称)が下がり、結果として導電性が良くなります。
つまり、抵抗が小さくなります。
逆に脱湿すると水分子が減り、結果としてイオンが材料へと戻り、導電性が悪くなる、つまり抵抗が大きくなります。
この抵抗の差を電気信号に変換し、回路に送るという手法です。
抵抗変化方式は静電容量方式に比べると感度や精度は悪くなりますが、構造がシンプルなため大量生産可能で、お手頃価格です。
ノイズに強いという特性もあります。
また、小型・軽量化が容易なことも大きなメリットでしょう。
2 湿度センサの用途
後述する温度センサとセットで使われることが多くなりますが、湿度センサは家電で大活躍中。
例えば冷蔵庫内の湿度を一定に保ったり、エアコンや空気清浄機で、湿度によって温度・風量を変える自動制御を担ったりします。
また、プリンターなどのOA機器は湿度が大敵です。
乾燥すると紙詰まりを起こしたり、逆に湿度が高いとインクがにじんだりしてしまうためです。
機械内部を一定の湿度に保つため、湿度センサが用いられてきました。
6. 温度センサとは?
気温や体温を測ることはもちろん、火災警報器や安全装置からエアコンなどの家電までと、幅広い用途で用いられる温度センサもまた、覚えておくべきセンサと言えるでしょう。
温度センサは研究開発がさかんで、様々な測定原理を用いたセンサがラインナップされてきましたが、被測定体の温度範囲やどれだけ正確に計測しなくてはならないかなど、シーンによって採用するスタイルは異なってきます。
この回では、温度センサとして非常によく用いられる熱電対を用いたもの、サーミスタを用いたもをご紹介いたします。
次項で詳しくご紹介いたします。
1 温度センサの原理・仕組み
温度センサは、基本的には被計測体に感温部を接触させることで熱を移動させ、それぞれが熱平衡になる原理を利用しています。
まず、熱電対の仕組みについてご説明いたします。
熱電対とは、熱電効果の中の一現象です。異なる種類の金属の両端をくっつけて輪を作り、それぞれの接点の温度を変えると温度差によって熱起電力が生じる、というもの。片方の温度を覚えておいて、もう一方の接点で温度を感知し、発生した起電力を対比することで測定を行います。
ちなみに金属線にプラチナ(白金)を用いると高い精度が出せますが、貴金属のためコストがかかってしまいます。
そのため感温部にのみこういった貴金属を用い、他の導線は別途合金で代替する補償導線を用いることが一般的です。
熱電対は金属線を細くすることで熱容量を小さくし、高い精度での測定を可能にします。
もう一つのサーミスタは、熱電対と同じく金属線を感温部に用いますが、同時に金属酸化物半導体を設置し、そこから生じる電気抵抗の変化によって温度測定を行います。
酸化物半導体は熱によって変化する電気抵抗が大きい抵抗体であるため、変化した電位差を検知・測定することで温度を把握します。
温度の増加とともに電気抵抗が減少するNTC(negative temperature coefficient)、ある温度で急減するCTR(positive temperature coefficient)、急増するPTC(critical temperature resistor)の三種類がラインナップされています。温度測定ではNTCが広く普及しています。
ちなみにcoefficientは係数という意味です。
どちらも被測定体と温度センサを接触させて用いるため、熱容量の小さいものの測定にはあまり向いていません。
なぜなら、熱平衡に達する前に被測定体の温度が変わってしまう可能性があり、これは誤差に繋がります。
そこで最近では、熱放射を利用した非接触式温度センサも主流となりつつあります。
2 温度センサの用途
温度センサもまた電気ポットやアイロンといった、身近な家電に使われてきました。
また、光センサと同様に人感センサとしても利用されています。光の遮断ではなく、人間の放射熱を感知するものです。
また、火災予防という観点からも温度センサへの需要は非常に高いものがあります。
というのも、現在一般住宅全てに火災警報器の設置が義務付けられています。火災警報器には種類があり、煙やガス、光の乱反射を検知するものもありますが、温度センサは主に熱検知として用いられています。