トランジスタの基本回路マルチバイブレータとは?

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マルチバイブレータをご存知でしょうか。

トランジスタのスイッチング動作を応用して形成する電子回路の一つで、シンプル設計であるため、初級プログラミングガイド等で目にしたことがあるかもしれません。

この記事では、マルチバイブレータとはどのような回路で、どんな用途で使われているかをご紹介いたします。

マルチバイブレータとは

1. マルチバイブレータとは?

マルチバイブレータは、「バイブレータ」と付くように、振動を生むための電子回路です。

ただ、機器類のわかりやすい振動ではなく、スイッチングのオンオフでパルス信号を連続的に発生させるような電子回路となります。

マルチバイブレータと言った時、使われる半導体はいくつか存在しますが、最も一般的な形はトランジスタ二つを、四つの抵抗と二つのコンデンサそれぞれでたすき掛けにしたように接続したものです。

トランジスタのスイッチングによって演出される信号は方形波やのこぎり波と言った矩形波(くけいは。非正弦波形のこと)で、これが高速に遷移していくことが特徴です。

マルチバイブレータのこの動作は、発振回路タイマー、ラッチ回路(保持回路)フリップフロップ回路と、デジタル・アナログどちらでも活躍してきました。

マルチバイブレータは、回路の種類によって三つに分類することができます。

非安定,単安定,双安定です。次項でそれぞれを解説いたします。

2. マルチバイブレータの種類

トランジスタのスイッチング動作によってパルス信号を発生させる、と言う点では変わりませんが、マルチバイブレータは回路の構成によって次の三種類に分類することができます。

① 非安定(無安定/a stable)マルチバイブレータ

最も基本的なマルチバイブレータが非安定です。

「安定していない」という文字通り、オンオフの繰り返しを続けた状態でパルス信号を発生させます。

前述の通り、マルチバイブレータの基本形は二つのトランジスタ・四つの抵抗・二つコンデンサで構成されています。

ただし、抵抗はR1とR4よりもR2とR3の方を大きくします。

電圧印加すると、一方のトランジスタがオンに、もう一方のトランジスタはオフ状態になっています。

ちなみにこのどちらがオンになるかオフになるかは、製品仕様やコンデンサの充電数値によって異なってきます。

ところでトランジスタがオンになっている状態と言うのは、コレクタ-エミッタ間に電流が流れている、ということですね。

この時、ベースから印加される電圧は一般的に0.6V程度と言われており(Vbe等と呼ぶことも)、それ以上は上がりません。

そうして、たすき掛けになっているコンデンサは電圧印加によって充電することとなりますが、より小さい抵抗に接続されたコンデンサの方が当然早く充電が行われることとなります。

このコンデンサは電源に印加した数値程度まで電圧を上げますが、もう一方のコンデンサも充電されて0.6V近くになると、今度はもう一方のトランジスタの方にVbeが流れ、コレクタ-エミッタ間に電流が流れている、つまりオン状態となります。

この繰り返しによってオンオフとパルス信号を作り上げるのが非安定マルチバイブレータです。

なお、パルス信号のような矩形波には、周波数の考えが欠かせません。

広帯域周波数を有しているため、予期せぬパルスを発生させてしまうケースがあるためです。

非安定マルチバイブレータの周波数は抵抗とコンデンサの数値によって決定し、1/CRに比例します。

② 単安定(monostable)マルチバイブレータ

一つの安定状態を維持するマルチバイブレータです。

安定状態というのは、外部から何らかの動作が加わらない限り、トランジスタのオンオフの変更が行われない、ということです。

もし非安定状態になったとしても、一定時間が経過すると再び安定状態へと戻ります。

この時間は、抵抗とコンデンサの数値によって決定されます。

こういった特性から、ワンショット・マルチバイブレータユニバイブレータと呼ばれることもあります。

基本的な回路構成は非安定マルチバイブレータと同様ですが、こちらは一方のトランジスタとコンデンサが交流結合されており、もう片方が直流結合となっています。

タイマーなどの、一定時間の信号を発生させるのに向いており、また安価回路設計もシンプルという利点があります。

③ 双安定(bi stable)マルチバイブレータ

フリップフロップに属し、メモリ等の記憶素子にも用いられるのが双安定マルチバイブレータです。

コンデンサを用いず、トランジスタ二つと抵抗四つで構成されます。

そのためコンデンサに伴う蓄電・放電の時間を持たず、電圧印加によって一方のトランジスタをオンに、もう一方をオフにした状態を安定して維持し続けることとなります。

次に入力信号があるとスイッチングが行われますが、それまでは状態の切り替えは行われません。

こういった背景から、レジスターなどにも長らく用いられてきました。

単安定マルチバイブレータ同様に回路の構成が容易なため、他のマルチバイブレータに比べて若干高価にはなりますが、よく用いられています。

3. マルチバイブレータの用途

マルチバイブレータの黎明は1919年と、約100年もさかのぼることとなります。

繰り返しになりますがとてもシンプルな設計であるゆえに、様々なシーンで用いられることとなりました。

アナログ回路においては、そこまで高精度な時間計測が求められないタイマーや時刻計測の水晶振動子替わりに、あるいは車のウィンカーランプ等に代表される発信器として、その他では周波数発生器の利用などが挙げられます。

デジタル回路においても、メモリ等の保持機能の役割を果たしています。

集積回路がまだ一般的ではなかった時代は、マルチバイブレータを複数個利用するケースも見られました。

近年では集積回路がより安価になったこと。加えてマルチバイブレータは精度を出しづらいことから、マイコン等に置き換わりつつある分野も存在します。

しかしながらシンプルゆえにバリエーションをつけやすい特性をも持ち、覚えておいて損のない回路と言えるでしょう。

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4. まとめ

マルチバイブレータについて解説いたしました。

マルチバイブレータとはトランジスタの基本的な回路であり、約100年の歴史を有すること。

タイマーや発振回路、フリップフロップ回路等様々なシーンで用いられていること。

非安定・単安定・双安定と、三つの回路構成があること。

最も代表的な回路は非安定型ですが、メモリとしては双安定型がよく使われていることなどをご理解頂けたでしょうか。

シンプルで覚えやすい回路かと思いますので、電子工作に携わる方は抑えておきましょう!

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