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SoC(システム ・オン・チップ)とはどのような半導体製品か?

スマートフォンや自動車、AI、医療機器・・・電子機器の利便性は日進月歩の勢いですが、とりわけ小型・軽量化の波は増すばかりです。

近年では生成AIなどAI関連でCPUやASIC、LSIという言葉を耳にすることも多いのではないでしょうか?

そんな機器のダウンサイジングを語るうえで、集積回路の存在は欠かせません。

発明から70年近くが経とうとしていますが、集積度はますます向上し、一つのチップで様々なシステムを実現することが可能になりました。

その代表格がSoC(システム・オン・チップ)です。

この記事では、SoCとはどのような半導体製品か、どんな役割・用途があるのかを解説いたします。

System on a chip(システム・オン・チップ)とは

1. SoCってどんな半導体製品?

SoCはSystem on a chip(システム・オン・チップ)の略称です。

一枚の基板(チップ)上に半導体など各種素子を実装したものを集積回路と呼びますが、この集積回路の機能や実装された素子の集積具合、種類などは様々です。

そんな中で、一つの統合されたシステムを組み込んでいるのがSoCとなります。

「統合されたシステム」とは、プロセッサコアやマイコン、その他各種機能を指します。

ある目的のために必要な要素全てを載せ・かつ単体でシステムとして機能するよう設計されていることが特徴です。

CPUと混同しがちですが、SoCはCPUをも含みます。

詳しく解説いたします。

① SoCの誕生

集積回路の歴史は1952年に始まります。

あらゆる電子機器は、集積回路とともに発展していきました。

戦後、大量生産時代の幕開けとともに、よりスピーディーに・より利便性の高い機器へのニーズが高まっていましたが、機器をイチから製造するのには時間もコストもかかります。

製造工程では共通するものも少なくないため、基本的な素子を実装した集積回路の利用が促進されました。

その後、さらに集積度を高めたLSI(Large Scale Integrated)が開発されていきます。

LSIはコアとしての機能は果たせていたものの、メモリやマザーボードなどといった機能は無く、別途用意して、組み合わせる必要があったため、利用範囲はそこまで高くありませんでした。

その後1980年代に入ると、集積回路は目覚ましい進歩を遂げます。

ワンチップマイコンが登場し、目的に応じたカスタムLSIが普及していきました。

とりわけカスタムLSIへの要望は高いものがありました。

カスタムLSIとは、ベンダーがある用途に向けて必要な回路(基本セル)を半導体ウェハー(多くの場合でシリコンウェハー)上に格子状に実装させたゲートアレイで、ユーザーが配線を行って任意の回路を実現することを目的としています。

「ある用途に向けて」作られたLSIのため、汎用性は低いです。

しかしながら目的に最適化した集積回路であるため、一度作ってしまえば大量生産にはもってこい。

性能も良く高速かつ低消費電力などのメリットがあったため、時代のニーズにマッチした結果、急速に発展していくこととなります。

この時代に誕生したカスタムLSIを、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向けLSI)と呼びます。

さらに時代が下ると技術進歩によって回路設計が高度化し、より集積度の高い製品が出回るようになります。

そして1990年代以降、いくつかの集積回路を組み合わせて一つのシステムを実現するのではなく、チップ上に各種回路を組み込んで配線し、システムとして動作させようという試みが生まれ、それはSoCの誕生に繋がりました。

② SoCの概要

SoCは集積度が向上した結果、従来のLSIやASICでは実現していなかった、ワンチップでのシステム動作が可能となりました。

具体的に実装するものは用途によって異なりますが、「コア」と呼ばれる組み込みCPU、マイコン(マイクロコントローラ)、メモリなどが挙げられます。

スマートフォンを例に見てみましょう。

スマートフォンのSoCには、一般的に以下のものが実装されます。

まず、ブレーンとなるCPU。液晶ディスプレイのタッチからカメラの撮影、音声などといった周辺機器からデータを受け取り、制御・演算を行います。

近年では複数コアを搭載した高性能SoCが存在し、処理速度の向上に貢献しています。

次に、画像処理を行うGPU(Graphics Processing Unit)。3Dグラフィックスを用いたゲームをスムーズに表示してくれる機能となります。

そして、DSP(Digital Signal Processor)。

これは、LSIの一種であり、アナログ信号をデジタル信号へと処理する機能で、画像や音声データの処理に特化したものです。

これら以外にはAIの処理を行うNPU(Neural Network Unit)やメモリ、Bluetoothなど通信モデムが挙げられます。

こういった機能をオンチップしたものがSoCです。

なお、ひとくちにスマートフォンといっても、やはりメーカーによってSoCに実装するものは異なります。

SoCに「何を実装するか」「何を実装できるか」は他社との競争で肝になる点ですので、さらなる進化が求められています。

ただ、SoCはカスタムICのみならず、標準ICもまたラインナップされています。

標準ICはASSP(Application Specific Standard Produce:特定用途向け汎用品)と呼ばれており、基本仕様が搭載されていることが特徴です。

前述したスマートフォンでも、コアとなる部分はカスタムSoCが用いられますが、液晶や通信モデムなどといった基本的な装備は標準SoCで実現されることがほとんどです。

2. SoCのメリット·デメリット

次に、SoCのメリット・デメリットをご紹介いたします。

① メリット

SoCのメリットは、何よりも電子機器を小型・軽量化できることです。

電子機器の多機能化は、時代が進むにつれてますます要望されており、それに伴い集積回路も大規模になってきました。

初期の汎用ICをそのまま使うと、いくら多彩な機能があったとしても尋常ではない大きさになってしまい、可搬性に優れません。

SoCであれば、一つのチップ上で基本システムを動作させられるとあって、「多機能」「小さくて軽い」を両立することが可能となりました。

また、チップを組み合わせて実装させる作業は配線を伴いますが、SoCでは既にチップ上で組み込みが行われているので、その必要がありません。

その分もまた小型化に一役買っていますね。

配線等の機械的な構造が少ないということは、衝撃や振動に対する耐性がついていることはもちろん、消費電力が少なくなり、エコに繋がります。

さらに言うと高速化にも有効です。

基板上の配線はリードなどを用いているためインピーダンスなどが発生しやすく、信号の妨げとなる可能性があり、結果として信号伝送が遅延してしまいます。

配線をSoCに依存することで、インピーダンスを気にせず高速処理を行うことができますね。

加えて、必要な用途に応じたシステムが既に出来上がっているので、イチから製品開発を行う際の設計や実装作業を省略でき、一度作ってしまえば大量生産が可能であるため開発・製造コストが大きく低減されることとなりました。

② デメリット

次にデメリットをご紹介いたしますが、前述の通り、近年ではSoC開発に、各社が意欲的に取り組んでいます。

そのため、克服されつつあるものも少なくありません。

大きなデメリットとしては、SoCを製造するのに時間とコストがかかってしまうこと。

一度作ってしまえば簡単なのですが、多くのシステムを実装する回路の設計・製造は決して容易ではありません。

そのためある製品をこれから作ろうと思った時に、市場投入までに時間がかかったり、SoC購入で莫大な費用を求められたりするケースもあります。

これは、受注生産品や少量生産品などには不向きということを表します。

また、多くのLSIに言えることなのですが、ベンダーに製造を依存しているため仕様変更が容易にできません。

ちょっと変えたい、といった場合でもベンダーに再度依頼をする必要があるため、またコストや時間がかかってしまいます。

既に出来上がったシステムを使うことになるので、製品化した後にちょっと機能を変えるなどといったバリエーションをつけることも難しくなります。

これは、デジタル回路以外のものを実装させようとする時、より顕著なデメリットとなります。

と言うのも、最近では大容量メモリやアナログ回路も一緒に実装させ、より利便性を高めたSoCがラインナップされてきているのですが、製造工程がより煩雑になり、大きなコストが生まれています。

こういった製造コストの増加はそのまま製品の高価格化に繋がってしまうため、価格競争も欠かせない各メーカーにとっては、コストパフォーマンスの追求が大きな課題となっています。

3. SiPとは?

SoCの上記デメリットを補うと言った意味で注目されているのがSiPです。

SiPはSystem in Packageの略で、複数チップをまとめて一つにパッケージングした半導体製品となります。

さらなる小型化の要請を受け、SoCと同様に存在感を放ちます。

と言うのも、SoCは複数素子や回路を実装したICでしたが、それぞれの素子・回路は製造工程やメーカーが異なる場合があります。

前述の通り、SoCを製造するのに時間・コストがかかるのは、これが要因のことも少なくありません。

中には標準ICには組み込みづらい特殊回路もあり、そういったものを無理にまとめようとすると、ウェハーが必要以上に大きくなってしまったり、設計に無理があったりするケースが出てくるようになりました。

そこで、無理に一枚のウェハー上にオンチップするのではなく、必要な素子・回路をそれぞれで実装したICをパッケージングする、というのがSiPの考え方です。

このパッケージングもミソで、オンチップはどうしても格子状(アレイ型)になるため横に広がるのですが、SiPでは縦に重ねるスタック型、横に並べる平置き型、パッケージ同士を重ねるPoP(Package on Package)など、積層方法も工夫することで、専有面積を削減することに成功しました。

ちなみに「無理なく」「それぞれの素子・回路」を実装すればいいので、「デメリット」でご紹介したような、デジタル回路と大きく製造工程が異なるアナログ回路や大容量メモリを搭載することも可能です。

ただ、「SoCのデメリットを補う」といった意味で用いられることが多く、SiPの登場でSoCが廃れたわけではありません。

例えばやはり量産品に対しては、より安価で高効率なSoCが有効です。

そのためケースバイケースでSoCとSiPを使い分けたり、組み合わせて使ったりすることが一般的です。

4. まとめ

電子機器の小型・軽量化時代をけん引する半導体製品「SoC(システム オン チップ)について解説いたしました。

SoCは従来から用いられてきた集積回路とは異なり、一つのウェハー上で統合されたシステムを実装し、単体での動作が可能であること。

電子機器の小型・軽量化はもちろん、機械的な構造が少なくなるため高速化や低消費電力にも一役買っていること。

一方でコストや製造期間の面でデメリットが発生していること。それを補うSiPもまた注目を浴びていることをお伝えできたでしょうか。

さらなる多機能や小型化、高性能を求める市場の立役者として、SoC技術から目が離せません。

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