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バイポーラトランジスタとは?MOS FETやCMOSとは何が違うの?

「トランジスタ」は、今や様々な種類に分類でき、それぞれで機能や構造が異なります。

例えばFETやMOS FET、CMOSなども広義にはトランジスタとなりますね。

しかしながら長い歴史を持ち、かつて「トランジスタと言えばコレ!」だったのがバイポーラトランジスタです。

もちろん今でも活躍中で、主に電圧・信号増幅やスイッチング制御に用いられてきました。

この記事では、そんなバイポーラトランジスタとはどのようなものか、原理や仕組み、特徴などを解説いたします。

バイポーラトランジスタ

1. バイポーラトランジスタとは?

トランジスタは小さな電圧や信号を増幅したり、電子回路内でスイッチングを行い信号のオンオフ制御を行ったりするための半導体素子です。

従来真空管を用いて増幅が行われていましたが、物理的に大きく、また消費電力が大きいことが特徴でした。

しかしながら1947年、アメリカのベル研究所でトランジスタが開発されたことにより、電子デバイスは劇的に進化していくこととなります。

最初のトランジスタは点接触型と呼ばれるものですが、翌年に接合型トランジスタ―現在のバイポーラトランジスタが発明され、機器の小型化、高精度化、高効率化、そして低消費電力化に大きく貢献してきました。

1968年、後にユニポーラトランジスタとして区分されるCMOS技術が登場して以降、集積化が容易なこちらが徐々に主流となってはいきますが、冒頭でもご紹介しているように、バイポーラトランジスタもまた健在です。

ではこのバイポーラトランジスタとユニポーラトランジスタの何が異なるかと言うと、前者は半導体中において、正孔と自由電子がともに動作に関与します。

後者は正孔または自由電子どちらか一方が動作に関与することとなります。

つまり、動作にプラス・マイナス両極のキャリアが関与するがゆえに、バイポーラと呼ばれているのです。

また、バイポーラトランジスタは電流駆動であることに対し、ユニポーラトランジスタは電圧駆動となります。

原理・仕組みを次項で詳しく解説いたします。

2. バイポーラトランジスタの原理・仕組み

半導体はp型とn型に分類することができ、簡単に言うとp型半導体は電子が足りない空席のような正孔を持ちます。

そしてn型半導体は逆に自由電子が余っている状態です。

ダイオードやトランジスタはp型・n型半導体を組み合わせて使用するのですが、バイポーラトランジスタにおいてはpnpまたはnpnといった模式図を採ることとなります。

これをそのままPNP半導体、NPN半導体と呼びます。

そしてそれぞれから端子が出ており、一方をエミッタ、もう一方をコレクタ、間に挟まれた半導体に付随するも中央の端子をベースと呼びます。

なお、エミッタは自由電子を放出し、コレクタ側の正孔に収まることを目的とします。

PNPにせよNPNにせよ、ただエミッタまたはコレクタから電圧印加しただけでは電流は流れません。

PNPトランジスタの場合、エミッタ側からプラスの電圧を印加するとP型半導体とN型半導体の間に空乏層ができるためです。

しかしながらベースにプラス電圧を印加することでベース側から自由電子が供給されることとなり、N型半導体につかまらずに正孔がコレクタ側へと移動し、結果として電流を流すことが可能となります。

NPNトランジスタの場合、コレクタ側から+電圧を印加するとエミッタ側のn型半導体の自由電子とp型半導体の正孔が結合してしまい、やはり空乏層ができます。

しかしながらベースからプラス電圧を印加すると自由電子がベース側へ流れていき、かつp型半導体が持つ正孔では収まりきらずに残りの自由電子がコレクタ側へと流れていきます。

なぜなら、中央の半導体はきわめて薄い膜であるためです。

そして、電流が流れます。

こういった仕組みから、ベースに電圧印加することを「バイアスをかける」、などと呼ぶことがあります。

ちなみにNPNトランジスタの方が主流です。

この時、ベースから流れた自由電子によって電流の通り道ができるため「ベース電流」と呼ぶ場合もあるのですが、ベース電流はきわめて微弱な信号であっても上述の機能を果たします。

さらに、ただ電流が流れるわけではありません。エミッタ側・コレクタ側にあったキャリアが一緒になって放出されることとなるため、結果として信号は増幅されます。

これが、トランジスタの主な原理・仕組みです。

なお、ベースとエミッタ間はPN接合となり、これはダイオードと同様の構造です。

そのためベースからバイアスをかけてベース電流を流すにはベース電圧をエミッタ電圧と比較して0.6~0.7Vほど高く維持する必要があります(ダイオードは一方向にしか電流を流さないため)。

ここで生じさせた電位差を接合部飽和電圧と呼び、オンオフのスイッチング動作の原理となります。

★NPNとPNPの違いについて詳しくはこちら

3. バイポーラトランジスタの特徴と用途

バイポーラトランジスタの特徴を知るには、MOS FETやCMOSなどのユニポーラトランジスタと比較するとわかりやすいでしょう。

まず、利得(ゲイン。入出力電圧の比のこと)を得やすいことが挙げられます。

トランジスタは電流や信号を増幅するための素子であることは前述の通りですが、高い増幅率を求める回路では、バイポーラトランジスタを使った方が高効率であることを示します。

ただし、微小信号を増幅できるとは言え、最低限トランジスタを動作させられる程度の電流は必須です。

なお、ユニポーラトランジスタにも言えることですが、コレクタ電流はコレクタ電圧が変化したとしても一定に保たれる特性も持ちます。

これを、定電流特性と呼びます。

また、高周波数下での動作も、バイポーラトランジスタの方が優れています。

現在デジタル回路はますます主流となるばかりですが、高い周波数で動作させるものも少なくありません。

そうなると電磁ノイズが発生しやすくなりますが、バイポーラトランジスタはノイズ特性も高くこういった回路に有効です。

一方で電流駆動であるため、電圧駆動のユニポーラトランジスタと比べるとどうしても消費電力が大きくなってしまう特徴もあります。

さらにスイッチング速度および小型軽量化はユニポーラトランジスタの方が優れていると言えます。

前述の通り、今ではCMOSを始めとしたユニポーラトランジスタの方が使用されるケースは多いものの、上記のような特徴からバイポーラトランジスタもまたよく用いられます。

例えばアンプなどの増幅器を始め、クォーツ時計やRTC(リアル・タイム・クロック)などの発振回路、温度センサや静電気放電処理等が挙げられます。

★RTC(リアルタイムクロック)とは?

4. バイポーラトランジスタの選び方

恐らく「バイポーラトランジスタを購入しよう!」といった方は少ないかと思います。

しかしながら前項で挙げたアンプやセンサなどを選別する際、どういったバイポーラトランジスタが使われているかでスペックが変わってまいります。

最低限、以下の項目はデータシートで確認しておきましょう。

① 型番(型名)

かつてJIS規格によってトランジスタなどの半導体素子は型番が振られており、見方を知っておけば一目でどんな素子であるか判断することができました。

例えば2SA11~は高周波用のPNPバイポーラトランジスタで、2SB11~は低周波用のPNPバイポーラトランジスタとなります(ただし周波帯域はメーカーの独自判断による)。

1993年に廃止されたものの、その後を継いだJEITA(社団法人 電子情報技術産業協会)の規格「個別半導体デバイスの形名」でも採用されており、トランジスタを探しやすくするためにもぜひ覚えておきましょう。

まず、最初の二文字はバイポーラトランジスタの場合「2S」となります。

そして2SAがPNP型高周波用バイポーラトランジスタ、2SCがNPN高周波用バイポーラトランジスタです。

次の四桁の数字は11から始まる登録番号(ハウスナンバー)で、特に意味はありません。

同規格に登録された順となります。すぐ後に( )がある場合は改良番号となります。

最後のアルファベットの二つは増幅率や精度などを示します。

ちなみに一つの型番につき現在は一つのメーカーとなるため、同スペックであっても型番が同一とは限りません。

なお、半導体メーカーが独自基準のもと振り分けた型番もあります。

JEITA規格もメーカー独自型番もそれだけでスペックがすぐにわかるものではありませんが、欲しい製品のものは知っておけばよりスムーズにお買い物ができるでしょう。

② 最大定格

最大定格とは「絶対に超えてはいけない数値」です。どの半導体製品のデータシートにも必ず記載があるものです。

これを一瞬でも超えてしまうと、素子が劣化したり破壊されたりする可能性があります。

トランジスタの場合、コレクタ-ベース間電圧、コレクタ-エミッタ間電圧、エミッタ-ベース間電圧、最大許容コレクタ電流、最大許容ベース電流、最大許容コレクタ損失の定格を知っておきましょう。ちなみにコレクタ損失とは、許容できる電力損失のことです。

損失した電子は接合部で熱となってしまうため、最大許容コレクタ損失を超えてしまうと、温度変化に敏感なトランジスタは性能を著しく変えてしまう場合があります。

なお、定格いっぱいで使うのではなく、80%以下程度の、余裕をもった電圧印加を行いましょう。

③ 電気的特性

バイポーラトランジスタの特筆すべき電気的特性としては、まず直流電流増幅率が挙げられます。

これはエミッタ接地回路に使用した時、ベース電流に対してコレクタ電流はどれくらい増幅されるかを表した数値となります。

ちなみにこちらも周囲温度によって影響を受け、温度が上がると上昇する傾向にあります。

直流電流増幅率が高いほど、当然ながら微小な信号でも大きく増幅することが可能です。

また、トランジション周波数もチェックしましょう。トランジションは「遷移」という意味ですが、これは増幅率が1となる数値を示します。

一般的にトランジション数値よりも低い周波数域においては利得が高く、高い周波数域では利得が低くなっていきます。

その他では、コレクタまたはエミッタの遮断電流、コレクタ出力容量、雑音指数などを確認します。

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