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アナログ時計にもデジタル回路にも!水晶振動子ってどんな素子?

水晶振動子をご存知でしょうか。

パワーストーンなどでも有名な水晶(クォーツ)の特性を利用した電子部品となり、アナログ時計からコンピューター機器、あるいは通信機器などといった幅広い分野で活躍しています。

この記事では、水晶振動子についてご紹介いたします。

水晶振動子とは

1. 水晶振動子とは?

水晶振動子とは、その名の通り水晶の「ぶるぶると振動する」性質を利用し、一定の周波数を発振させるための素子です。

薄い膜状の水晶と電極で構成されることが一般的で、この電極から水晶に電圧印加することで発振を引き出します。

「ぶるぶると振動する」と申し上げましたが、正確には圧電効果と呼ばれるものです。

石英系のクォーツやトルマリンといった鉱物の中には、圧力をかけると電気信号を発するものが存在します。

鉱物内に規則正しく並んだ結晶構造が圧力によってズレを生じさせ、これによってズレの一方がプラスを帯びた電荷に、さらに一方がマイナスを帯びた電荷になることで電流の通り道ができるためです。

最もイメージしやすいのはライターではないでしょうか。

ライターは着火の際に強く備え付けのパーツを回転させますが、圧電素子に強い圧力を加えることで電気信号を出し、発火させるという仕組みです。

こういった圧電効果を持つ素子は電圧印加することで結晶を変形させますが、これを逆圧電効果と呼んでいます。

この時の変形は応答がとても速いため、一定の周波数を発振させるのに適しています。

ちなみに圧電効果を持った物体を圧電素子またはピエゾ素子と称しますが、水晶だけは「水晶振動子」の名称となることが一般的です。

水晶の圧電効果を発見したのはピエール・キュリー氏です。

かの有名なキュリー夫人の夫であり、放射能の研究でも知られていますね。

1880年という早い段階にこれが発見されたため、その後の産業史 ―とりわけ通信史― において高い注目を浴びていくこととなりました。

ちなみに現在水晶振動子に用いられる水晶は人工です。

前述の通り古くから着目されていた水晶の人工組成のニーズは、やはり古くから高まっていたためです。

1905年にイタリアのジョージ・スペチア氏が人工育成をスタートさせ、その後ドイツやイギリス,アメリカでも意欲的に開発・研究が行われました。

わが国で本格的な研究が進んだのは第二次世界大戦後ですが、1970年代に入ると大規模な量産に成功しています。

なお、水晶振動子はそれ単体で使われるのではなく、発振回路とともに搭載されます。

発振回路とは回路内で電気信号の振動を維持・継続するための回路です。

発振回路では特定の周波数を有した交流を継続的に発振させるため、任意の信号を出力することが可能となります。

後述しますが、水晶振動子はきわめて高精度デバイスとして扱われます。

そのため温度変化や電圧変化によって発振周波数を変動させてしまうのは望ましくありません。

そのため水晶振動子には専用の発振回路が用いられ、これをまとめて水晶発振器と称しています。

また、水晶振動数の発振周波数は水晶の厚みによって決定づけられます。

2. 水晶振動子の用途

水晶振動子はアナログからデジタルまで、本当に幅広い分野で用いられています。

最も有名どころでは「時計」です。

時計はゼンマイで動く・・・といったイメージが強いかもしれませんが、これは昔ながらの機械式時計。

現在市場に出回る多くの時計は電池式となっており、そしてこれの精度を取っているのが水晶振動子です。

前述の通り、水晶振動子は電圧印加することで一定の周波数を発します。

この振動を回路によって一秒間に一回のパルス信号に変換し、一秒一秒を運針させているのがクォーツ式です。

機械式時計では「テンプ」と呼ばれるパールの往復運動によって高振動を出し精度を取りますが、ハイビートと呼ばれる高精度機であっても1秒間に28,800振動ほど、つまり4Hzとなっています。

対して時計に使われる水晶振動子の発振周波数は32,768Hz!高速振動すればするほど正確な運針が可能となっているため、かつ電気回路を用いた時計は低コストでの大量生産が可能であるため、現在の時計市場の多くが電池式となっているのです。

この水晶振動子を用いた時計機構をクォーツ式と呼んでいます。

ちなみにクォーツ式時計の開発に先鞭をつけたのは1927年のアメリカですが、世界で初めて腕時計サイズの市販化に成功したのは1969年、セイコー社です。

この水晶振動子を用いた腕時計は従来品と比べて精度面でも、製造面でも画期的すぎて、その後機械式時計のシェアを大きく奪うこととなりました。

この傾向が顕著であった1970年代~1980年代にかけてを、時計業界ではクォーツショックなどと称しています。

また、近年ではデジタル回路のクロック発振源としてもポピュラーです。

よくパソコンなどのスペックで「クロック周波数」を目にしたことがあるかもしれません。

このクロックというのは簡単に言うと歩調のタイミングを合わせるための信号です。

例えばデータを転送する時、今では単一回路だけで済むと言うことはほとんどありません。

複数の電子回路や通信を用いて行われますが、この時にそれぞれのタイミングが合わないと正確なデータが送れなかったり、再読み込みの必要が頻発してしまいます。

そこで水晶振動子による発振をタイミング信号として、それぞれの回路がこの信号に合わせて足並みを揃える、というわけです。

クロック周波数は1秒間にクロックが何回発生するかを示した値となり、これが高ければ高いほど処理速度もまた高くなります。

近年ではIoT化に伴い、センサーを始めとしたデジタルデバイスでも水晶振動子はその存在感を高めています。

ちなみに「においセンサー」において水晶振動子式は非常に注目されています。なんでも半導体式よりも、生体の嗅覚に近いセンシングができるのだとか。

ピエール・キュリー氏の発見から140年以上が経つ今なお、水晶振動子の重要性は健在です。

3. 水晶振動子の種類と選び方

ひとくちに水晶振動子と言っても、様々な種類や製品がラインナップされています。

「種類」としては以下の二つに分類することができます。

一つ目はAT振動子

これは非常にポピュラーな水晶振動子で、温度変化や経年の中においても発振が安定的で、かつ加工の容易さも大きな魅力です。

もう一つは音叉型水晶振動子です。

その名の通り音叉(おんさ)の形となった水晶振動子で、低消費電力であることが大きな特徴です。

前述したクォーツ式時計ではこの音叉型水晶振動子が用いられますが、近年より高精度を求めるシチズンなどでは、AT振動子の利用がスタートしています。

こういった種類の他、周波数や温度特性、振動モード(振動形態),あるいは負荷容量に周波数可変幅といったスペックによっても水晶振動子は様々です。

さらに米粒よりも小さい超小型デバイスから大型タイプまでも存在します。

どういった用途で使うのか、ご予算はいくらくらいなのかによって、適切な水晶振動子は変わってくることを覚えておきましょう。

4. まとめ

水晶振動子についてご紹介いたしました。

水晶振動子とは圧電効果を持つ水晶で、電圧印加によって高周波を発振させること。

1880年にピエール・キュリー氏によって発見されて以降、アナログ時計やデジタル回路といった、幅広い分野で扱われてきたこと。

近年ではIoTの促進によって、ますますの存在感を高めていることなどをお伝えできたでしょうか。

身近な水晶振動子について、理解が深まったら幸いです。