スマートフォンやタブレット等の電子デバイスが溢れ、あらゆる家電はIoT化し、街を歩けばそこかしこにセンサーが備わる。
このような時代において、半導体需要はますますの高まりを見せています。
そんな半導体を生み出す製造装置もまた、市場を拡大し続けています。
より高性能に、より高効率に半導体を生み出さんとする製造装置とは、いったいどのようなもので、どのような種類があるのでしょうか。
この記事では、半導体の製造装置について解説いたします。
1.半導体の製造装置とは?どんな性能が求められるの?
文字通り半導体製造装置とは、半導体を製造する装置です。ただし、一つの機器を指しているわけではありません。
むしろ半導体はすぐにぽんっと生み出されるわけではなく、様々な過程を経て完成されていきます。
この半導体製造装置で求められる性能。それは「どれだけ微細かつ精密な半導体を作れるか」です。
年々私たちの身の回りのデバイスは、小型軽量化しています。これに伴い半導体は集積化が進み、より小さく、しかしながらより高性能(高精度であり高感度であること)を求められています。
こういった精度を高めた半導体製造には、緻密な加工技術が求められます。
半導体は材料としてシリコン、そして絶縁体が用いられますが、これを㎛(マイクロメートル)や㎚(ナノメートル)単位で緻密に形成していく必要があるのです。
ちなみにこの単位は、肉眼では到底見えません。
そのため、精密・精緻な加工ができる半導体製造装置が求められているのです。
なお、こういった半導体製造装置で作られた半導体は、産業用途のみならず研究用途でも重宝されています。
2.半導体の製造装置はどんなものがあるの?
半導体の製造装置の種類は多岐に渡りますが、基本的に製造工程を追いながら解説することが可能です。
その過程の中で用いられる、代表的な装置をご紹介いたします。
※あくまで「代表的」であり、必ずしも全ての工場で同一機械が用いられているとは限りません。
まず半導体を作るためには、主にシリコン等で構成されるウェハーを用意します。
これは、集積回路チップのベース材料とも言うべき円盤状の素材で、集積化には欠かせません。
通常、シリコンは「インゴット」と呼ばれる単結晶棒となっているのですが、ここからきわめて薄い円状板を取り出すためにダイヤモンドプレードを用いて切断します。
この作業をダイシングと呼び、装置としてはダイシング装置と言うこともあります。
ただしこれだけでは半導体に必要な回路を描いたり形成したりすることができないため、表面上に酸化膜を作る(成膜する)必要があります。
酸化膜が絶縁体の役割を果たし、トランジスタとして機能するためです。
このプロセスで代表的な半導体製造装置は、CVD装置です。
CVDとはChemical Vapor Depositionの頭文字をとった略語で、日本語だと化学気相成長または化学気相蒸着です。
ちなみに医療分野や貴金属への加工等にも用いられる技法です。
ウェハーとなった半導体上にきわめて薄い酸化膜―10nmから1000nm程度―を乗せていきますが、この時利用されるのが「熱」「光」「プラズマ」です。
熱や光はきわめて高音で、その温度は800度~1100度。
対してプラズマであれば低温で精密な酸化膜を形成することができるため、近年では注目度を高めています。
また、スパッタリング装置もよく用いられます。これはPVD(Physical Vapor Deposition)、物理蒸着または真空めっきです。
真空容器の中で蒸着する物質に高電圧を印加し、イオン化させることでウェハーに衝突させ、そのまま蒸着させる手法です。
CVDにしろPVDにしろ、酸化膜が形成されると、その上に感光剤をやはり薄く塗布します。
この感光剤はフォトレジストと呼ばれ、後の行程で必要となってくる要素です。
ここで用いられる半導体製造装置は、レジスト塗布現象装置が挙げられます。
ウェハーを高速回転させつつ均一に塗布することがこの装置の目的です。
こうしてできたフォトレジストは、紫外線を当てると反応し、その部分だけ溶けて除去される性質を持ちます。
この性質を利用して、必要な回路を焼き付けるための装置がステッパー(縮小投影型露光装置)です。
これは1978年に登場した歴史ある製造装置で、半導体の集積化には欠かせません。
ちなみにこの装置でレジスト塗布を一緒に行うこともあります。
仕組みとしては、投影レンズを用います。
前述の通りフォトレジストは光に反応して溶ける性質があるため、回路パターンが描かれたフォトマスクをウェハー表面に設置し、露光によって回路パターンをウェハーに投影します。
するとウェハー上のフォトレジストが必要な部分だけ溶けてなくなると同時に、回路パターンが描かれることとなるのです。
次の行程では、回路パターンが描かれたウェハーをエッチングします。エッチングとは、最初の段階でシリコン表面に成膜した酸化膜や薄膜を取り除く作業です。
この時に用いられる代表的な半導体製造装置は、ドライエッチング装置です。プラズマエッチング装置とも呼ばれます。
ガスに高周波をかけることでプラズマ化し、化学反応を起こすことで膜を除去していきます。
なお、薬液を用いたウェットエッチングも用いられることがありますが、ドライエッチングの方が精密・精緻な加工に適していると言われています。
この時、フォトレジストも不要となるので、レジスト剥離洗浄装置などで洗浄が行われ、より純度の高いシリコンが残されることとなります。
しかしながらここまでの行程では、シリコンは電気的特性を持ちません。
つまり、伝導性がないということ。これでは半導体とは言えませんね。
そこでイオンを注入することで電極を作り出し、電気的特性を付加します。
ここで用いられるのがイオン注入装置です。
不純物を注入することになるため、ドーパント注入と呼ばれることもあります。
イオンが注入されたシリコンは電子または正孔を作り出し、一定の条件下での伝導性を持ちうることとなり、ようやく半導体として完成します。
ちなみにこの時に酸化膜が残っている箇所はイオンが注入されません。
もっとも、これだけでは電子機器には使えないため、さらに研磨によって表面を仕上げたり、回路をしっかりと作り込むため前述したレジスト塗布や露光,エッチングを繰り返し行ったりします。
さらにPVDやCVDによって電極を埋め込むことも必要です。
こうして完成された半導体は、最後にプローブ検査を通します。
この時用いられる装置をウェハープローバやウェハーテスターと呼びます。
プローブと呼ばれる針を一つひとつのチップに接触し、電気的に問題がないか,不良がないかの確認を行います。
ウェハー上には数百にも及ぶ回路が形成されているため、これを人為的に行うのはかなり大変。
そのためこの検査装置が重宝されるというわけです。
3.まとめ
半導体の製造装置について解説いたしました。
半導体製造装置は、電子機器が小型軽量化する昨今において、ますます重要性を高めていること。
半導体製造装置の種類はは非常に多岐に渡っていますが、半導体製造プロセスの中で用いられる代表的な装置がいくつかあること。
その例としてはCVD装置やスパッタリング装置,イオン注入装置があることなどをお伝えできたでしょうか。
現在、私たちの身の回りに溢れている半導体製品を見た時、色々な装置を経て緻密に開発されていることを知っておきましょう。
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