Core Contents

ますます進化する半導体レーザー。その仕組みや特徴とは?

半導体レーザーをご存知でしょうか。

光通信やセンサー,CDやDVDといった読み込み。

そして近年ではなんと視力が弱い方向けに、網膜に直接画像を投影させる眼鏡型端末の研究開発にも用いられる素子です。

とは言え半導体もレーザーも、どんな仕組みでどんな特徴があるのかわからない、といった方もいらっしゃるでしょう。

そこでこの記事では、半導体レーザーについてご紹介いたします。

半導体レーザーとは

1.半導体レーザーとは?

半導体レーザーとは、その名の通り半導体の仕組みを利用したレーザーです。

semicoNductor laserの他、laser diodeのイニシャルを取ったLDなどと表されることもあります。

簡単に言うと電圧印加することでレーザー光を発する素子です。

そんな半導体レーザーについて、詳しく解説いたします。

① レーザーとは?LEDの光とは異なる?

LEDが「普通の光」を出すことに対し、半導体レーザーは「レーザー光」

ではこのレーザーとはどういったものなのかと言うと、通常の光が振幅や波長にばらつきがあることに対して、レーザーであれば位相・周波数が揃っており(こういった光の状態をコヒーレントと呼ぶ)、広がったり分散したりすることなく、まっすぐに進む性質の光線となります。

また、可視光や紫外線などとは異なり単色性を有していることも特徴です。

この性質を利用し、微細信号を読み取ったり、正確に照射を行ったり、効率良い投射によって消費電力を抑えられたりするのが半導体レーザーなのです。

② 仕組み

半導体レーザーの仕組みはダイオードそのものです。

ダイオードはP型半導体とN型半導体を組み合わせたPN接合によって構成されています。

このP・N型半導体の接合面は空乏層ができており、何もしていない状態ではそこの電子は存在しません。

しかしながらP型半導体から電圧印加を行うと、P型半導体の正孔が空乏層へ、N型半導体の自由電子がやはり空乏層へ移動し、この空乏層にも電流が流れ、結果として半導体自身が導通することとなります。

この電子の移動を励起(れいき)と呼びます。

この励起が行われる時、空乏層の中では正孔と自由電子が再結合し、エネルギーによって発光します(電流注入発光)。

この一連の流れはLEDの発光する仕組みですが、半導体レーザーでは発光を増幅すること。さらにレーザー発振を行ってレーザー光とすることになります。

まず発光増幅のために、自身の光を利用してさらに発光を促進させます。これを誘導放出と呼びます(ちなみにレーザーはLight AmPlificatioN by Stimulated EmissioN of RadiatioNの頭文字を取った用語で、直訳すると誘導放出による光の増幅となります)。

誘導放出によって自身で発光したエネルギーをさらに強い発光へと変換することができ、LEDや蛍光灯にはない力強さを獲得することとなります。

誘導放出には様々な手法がありますが、一般的にはダブルヘテロ構造が採られます。

そもそもPN接合自体がヘテロ構造なのですが、P型半導体・N型半導体の間に別の半導体を挟み込むダブルヘテロ構造により、光の増幅が実現します。

仕組みとしては、活性層(挟み込まれた「別の半導体」のこと)の表面を切断された結晶によって劈開(へきかい)とする、というもの。

この劈開表面は屈折率が高いため、ダイオードの発光が反射し、さらにもう一方の断面で反射…合わせ鏡のようなイメージで往復しながら反射を繰り返し、どんどんと光を増幅させるのです。

これは光の発振とも称されます。

なお、上記はあくまで一例であり、FP(Fabry-Perot)型半導体レーザーと呼ばれることがあります。

一方でより高精度なレーザー光を実現するため、活性層とそれを挟み込むP・N型半導体との境界に回折格子(かいせつごうし。グレーティング)を施すことで単一の波長選択をした製品も存在します。

これは、DFB(Distributed FeedBack Laser)型半導体レーザーと呼ばれています。

半導体レーザーはデジタル化や高速通信が急速に普及している現代において非常に重要な素子であり、多岐に渡る仕組みを持った製品が多数展開されていることを覚えておきましょう。

★P型半導体とN型半導体について知りたい方はこちら

★ダイオードについて知りたい方はこちら

2.半導体レーザーの特徴と用途

何度か言及しているように、半導体レーザーは様々なシーンで活躍しています。

なぜなら半導体レーザーが持つ特徴が、非常に現代のニーズにマッチしているためです。

まず小型・軽量化が容易であること。

また、自身の電力から発光することによって増幅する仕組みのため、高効率かつ低消費電力であること。

そして半導体の構造を変えることで波長を選択したり、近年では構成元素によって色を変化させたりすることができることから、身近なものから医療,あるいは各種産業で用いられているのです。

代表例としては、DVDやCDといったディスクの読み込みです。

ここで用いられる半導体レーザーは一般的なダブルヘテロ構造で実現でき、製造コストも低いことから広く普及しています。

また、光通信にも半導体レーザーは欠かせません。

主に通信の光源として半導体レーザーが用いられますが、ますます長距離高速伝送が求められる昨今では高精度化が進みます。

さらには医療用途でも重宝されています。

患部に半導体レーザーを照射する治療は痛みが少なく、また切開・縫合の必要性も低減されます。

その他ではプロジェクションマッピングや小型プロジェクター開発にも貢献しており、今後もますます私たちの身近で活躍していくことでしょう。

▶ダイオードの購入はこちらから

▶ディスクリート半導体の一覧はこちらから

3.まとめ

半導体レーザーについて解説いたしました。

半導体レーザーとはLEDに代表されるダイオードであり、仕組み自体はPN接合によって発光していること。

しかしながらLEDとは異なりダブルヘテロ構造を用いることで、より強力な発光を実現していること。

半導体レーザーはCDやDVDといったディスクの読み込み,光通信,医療等、様々なシーンで利用されていることをお伝えできたでしょうか。

なお、文中でも述べているように、近年では様々な半導体レーザーがラインナップされています。

ご利用用途によって適切な製品選択をするためにも、ぜひこの機会に半導体レーザーへの理解を深めていきましょう!


半導体・電子部品・モジュール製品の購入はコアスタッフオンライン