現代社会に欠かせないネットワーク。
広義の意味では「繋がり」を指しますが、ITだと機器同士の接続や通信を指しますね。
SNSを使って画像をアップするのも、メールのやり取りをするのも、家電をIoT化するのも、全てネットワークに拠るところが大きいです。
とは言えこれだけ身近にあるにもかかわらず、実はネットワークについてよくわからない、という方もいらっしゃるでしょう。
そこでこの記事では、ネットワークに欠かせない機器と、機器それぞれの役割から見えるネットワークの仕組みについて解説いたします。
目次
1. ネットワーク機器を理解するために抑えておきたい用語
「LAN」「ルータ」「ハブ」「ファイアウォール」・・・
ネットワークの話題には、いつも様々な用語が飛び交いますね。それが機器の名称なのか、何かのシステム全体を指しているのかわからない、ということもあるでしょう。
そこで、ネットワーク機器およびネットワークの仕組みを理解するために、最低限抑えておきたい基本用語を解説いたします。
① LANとWAN
LANとはLocal Area Networkの略称で、ローカル(地域的な)、つまり企業内や家庭内等、限られたエリアでの機器同士のネットワークを指します。
一方のWANはWide Area Networkの略称で、高域なエリアのネットワークを意味します。
LANはケーブルで繋ぐ有線タイプと、無線用周波数帯を用いて相互接続を行う無線LANとが存在します。
よく聞くWi-Fiも無線LANの一種です。
なお、イーサネットとは最も一般的な有線LANの規格を指します。
市販のコンピュータの多くにイーサネット対応のインターフェースが搭載されています。
WANはLANでは届かない距離の機器同士の接続に用います。
「広域」の名前の通り、国内のみならず世界中でのネットワーク構築が可能となります。
イメージとしては、LANとLANを繋げたものです。インターネットが最も代表的な例でしょう。
LANもWANも、どちらもネットワーク機器を語るうえで欠かせない用語となっております。
② スイッチ
私たちに身近なオンオフを行うスイッチですが、ネットワーク機器においてはデータや信号の中継を担い、かつ適切な方向へと転送を行う装置を指します。
例えば機器同士を接続する時、必ずしも一本線で結ばれているとは限りません。
そのため、通すべき信号・無視すべき信号を判断するためにスイッチが用いられています。
後述しますがルーターもまた中継の役割を果たしていますが、こちらがソフトウェアで処理を行うことに対しスイッチはハードウェア処理。
そのため高速でルーターの低速処理を補ってくれます。
ちなみにやはり似た用語でハブというものも存在しますね。
こちらもデータ中継を行いますが、基本的に受信した信号全てを送信する機器を指します。
③ レイヤー
ネットワークの随所での役割は、しばしばレイヤー(階層)で説明されます。
全部で第7階層となります。
これは、OSI参照モデルと呼ばれる考え方です。
ちなみにOSIとは、Open System Interconnection Reference Modelの略称で、日本語訳は開放型システム間相互接続。
ネットワークの国際標準の一つです。
第7階層でどのような機器が用いられどのような役割を果たすのか、次の階層ではどういった目的があるのか・・・といったように、各レイヤーそれぞれに意味があります。
なお、番号が若くなっていくほどに、情報が付与された時点より具体的なデータとなっていきます。
④ MacアドレスとIPアドレス
文字通りネットワークの場所(住所)を示すアドレス。
Macアドレスは機器のための物理的な場所を指し、対してIPアドレスはネットワーク上の場所を指します。
データを受け取るためにはどちらも欠かせない概念ですね。
Macアドレスは製品によって既に決定されていますが、IPアドレスは手動または自動で設定することとなります。
2. 各種ネットワーク機器とそれぞれの役割・仕組みを解説!
それでは、各種ネットワーク機器と、それぞれの役割、そこから見えてくる仕組みについて解説いたします。
OSI参照モデルに則って、階層ごとに見出しをつけました!
【第1層(レイヤー1)】:物理層
文字通り、ケーブルやコネクタと言った、物理的な機器を有する階層です。
◆リピーター・リピーターハブ
ケーブルで機器同士を接続する手法は広く用いられてきましたが、距離が長くなるとその分信号が微弱になってしまったり、正しく伝わらなかったりすることがあります。
そこでリピーターを用います。
リピーターは中継器のような役割を持ち、さらに信号を増幅・整形(場合によって)して次の機器に信号を伝送することが特徴です。
リピーターハブは、基本的にはリピーターと同様の役割を果たしますが、複数のポート(端子)を有することを特徴とします。
一つのポートが信号を受信すると、全てのポートにその情報を伝え、そこから伝送する、という動作を行います。
ケーブルの延長には欠かせない機器の一つでしたが、リピーターハブは近年ではあまり用いられていません。
と言うのも、前項でもご説明したように信号の選別をハブ自身では行えないため、不要な経路にまで信号を送ってしまい、低効率であるためです。
そこで最近では、信号の送り先の制御を行えるスイッチングハブが広く普及しています。
【第2層(レイヤー2)】:データリンク層
隣接されている通信機器同士のネットワーク接続・信号伝送を行う階層です。
◆LANスイッチ
LANスイッチはレイヤー2スイッチとも呼ばれ、この階層の主役級です。
機器同士を接続する「通信」の役割を果たしますが、ただ繋いだだけではケーブルで十分ですね。
LANスイッチの便利なところは、複数の機器それぞれに対して、正しいポートへ正しい信号を送り込むというところです。
前項で「Macアドレス」と「IPアドレス」について言及しました。
これは機器やネットワーク上のアドレスとなりますが、このアドレス群を読み取って保持し、適切な場所へとお届するのがLANスイッチです。
なお、MacアドレスやIPアドレス、そしてポート番号がセットになった情報をフレームと呼びます。
LANスイッチは、このフレームを読み取ることとなります。
ちなみに第2階層に分類されていますが、後述する第3階層・第4階層のデータを基に伝送する製品もラインナップされています。
◆ブリッジ
ブリッジもまた中継器の一つですが、こちらはMacアドレスを基に「この信号は中継できるかどうか」を判断する役割を持ちます。
正しい信号は通過させ、壊れたものは破棄するといった、フィルタリングの機能を果たしています。
これはスイッチも行っている作業の一つです。
そのためスイッチ等、第2層でのネットワークの中継機器を指してブリッジと呼ぶこともあります。
【第3層(レイヤー3)】:ネットワーク層
アドレスを管理し、経路を指し示す司令塔のような階層です。
前述した第1層・第2層は、この階層で決定したルートに従って適切な信号伝送を行います。
◆ルータ
ネットワーク機器を調べた時、絶対に耳にしたことがある用語がルータですね。
ネットワークにおいて、正しいアドレスへとデータ伝送を行うためのルートを決めることをルーティングと呼ぶため、「ルーティングするための機器」といった意味合いとなります。
基本的に参照するのはIPアドレスで、このIPアドレスを基にルーティングを行います。
ネットワークを拡張するためには複数台のルータを設置し、それぞれの機器に対する道しるべを作ってくれるのがルータとなります。
ただし、企業内でのLANやより大規模なWANで使用する際には、セキュリティ対策が欠かせません。
そのため、VPN(Virtual Private Network)やNAT(Network Address Translation)といった、セキュリティ強化が一つの課題ともなっています。
◆L3スイッチ
L3スイッチは、簡単に言うとLANスイッチとルータを足したようなネットワーク機器です。
「ネットワーク機器を理解するために抑えておきたい用語」の項でスイッチとルータの違いをご説明した通り、L3スイッチもルータも適切な場所へと信号を送るための中継器ですが、スイッチはルータよりも高速であることが特徴です。
特に大規模ネットワークにおいては、経路が増えれば増えるほど速度低下が起きてしまいます。
また、どのデータをどこに送っているかが把握しづらくなってしまいますね。
そこでルータとは別にL3スイッチをセッティングすることで、ネットワークを効率的に分割し、高速化および管理をしやすくする役割を果たします。
【第4~第7層】
第4層はトランスポート層と呼ばれます。
上位階層と下位階層の仲人的な立ち位置で、上位から受けたデータを下位に伝えたり、データを整列させたり、フロー制御(調速)を行ったりします。
ルータはトランスポート層で参照したデータを基に、その後の信号経路を制御することとなります。
第5層はセッション層です。
セッションは「一続き」などと訳されるように、始まりから終わりまでの一連の行動を指す用語です。
ネットワーク業界では、エンドユーザーが通信をスタートしてから終了するまでの行動そのものを指しています。
第5層ではこのセッションを管理しています。
第6層はプレゼンテーション層です。
第7層からデータを受信し、そのデータを整合する役割を果たします。
例えば文字コードや画像・動画といったデータの適切な形式を割り出し、変換する階層となっております。
第7層はアプリケーション層です。ここが最上位の階層となります。
ソフトウェアの仕様や処理手順,データ形式といった具体的な機能を決定する階層で、アプリケーション・コンピュータネットワーク間を繋ぐ重要な立場です。
これら第4~第7層では、それぞれで独立したネットワーク機器を有するわけではなく、どの階層にも活躍している機器(マルチレイヤ―)がそれぞれで活躍しています。
その代表格がファイアウォールでしょう。
第3層より上位階層をカバーし、データの内容によって通信管理を行う機器です。
とりわけ「通してはいけないデータ」を検出する、つまり不正アクセス対策として用いられており、ネットワークを保護するためには欠かせません。
また、ロードバランサ―と呼ばれる、負荷分散のための機器もマルチレイヤ―の一つです。
通信状態を監視し、特定のサーバーにだけ負荷がかからないよう、接続先サーバーを制御する役割を果たします。
サーバー障害への対策であることはもちろん、速度向上にも貢献してくれる機器となっております。
3. まとめ
ネットワーク機器について解説いたしました。
ネットワーク機器とひとくちに言っても、OSI参照モデルで言うところの「階層」によって様々な機器が用いられていること。
ルータやスイッチ等、ネットワーク規模が拡大しても適切な場所に素早くデータを送信できる機器が欠かせないこと。
同時にVPNやNATと言った、セキュリティ強化についても考慮しなくてはいけないことをご理解いただけたでしょうか。
なお、本稿でご紹介したネットワーク機器は、基本のキです。
まだまだたくさんの機器類がネットワーク上では活躍しており、私たちの便利な社会を下支えしてくれていることを覚えておきましょう。
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