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ゼロからわかる「コイル」。
コイルとは何か、仕組みや種類を知っておこう

コンデンサ・抵抗と並んで、電子回路に欠かせない素子と言えばコイルです。

抵抗・コイル・コンデンサを搭載させた電子回路を、RLC回路などと称したりします。

それほど重要なパーツとなります。

とは言えコイルについて調べていると、様々な用語が出てきます。

そのためコイルがどのようなものかわからない・どんな目的で使われているのか見えないといったお声を頂くことがありますそこでこの記事では、コイルの性質や用途、種類について徹底解説致します。

コイルとは

1.コイルとは?どんな仕組みなの?

コイルは細い金属(導線)をグルグルとらせん状に巻いた電子部品です。

なお、この導線の両端には端子が付けられます。

そして導線に電流を流すと周囲に磁界が発生することからまるで磁石のようにふるまい、起電力を発生させます。

もっとも、最初はすぐには電流を流そうとはしません。

しかしながら電流を止めると、電流を通し始めます。

と言うのも、導体に電流が流れると、ネジをゆるめる回転方向(右回り)へと磁界が発生しますが(アンペールの右ねじの法則)、導線の周囲の磁界がこの電流の影響を受けて束ねられ、磁束の変化に繋がります。

コイル自身は磁束の変化を打ち消そうと働き、打ち消す方向へ起電力を発生させるのです(電圧が生じる)。

このような起電力を誘導起電力または電磁誘導現象と呼びます。

なお、誘導起電力の大きさ(V)は1秒あたりの磁束の増加に等しいという法則をファラデーが確立しました。

コイルの勉強をしていると、このファラデーの名前はよく見かけるのではないでしょうか。

磁束の変化は、コイルに磁石を近づけたり遠ざけたりすることでも発生させることができます。

またファラデーはコイルの導線は巻き数が多ければ多いほど、そして直径が小さいほど磁力は高まり、これに伴い電流も高くなることを発見しました。

これらコイルの性質はインダクタンスと呼ばれるため、コイルもまたインダクタなどと称されることがあります。

インダクタンスの単位はH(ヘンリー)で表され、1Aの電流変化が生じた時に1Vの起電力が発生するコイルのインダクタンスは1Hとなります。

近年のコイルは中心にコアを持つものが多くなっています。

コアはとも呼ばれ、帯磁しやすい強磁性体を用います。

コアを用いることでいっそう高いインダクタンスを得られることができます。

内部にコアを持つコイルをコアコイル、持たないコイルを空芯コイルと呼んでいます。

さらにコイルを知るうえで欠かせないのが、レンツの法則です。

コイルは回路記号を「L」と表記しますが、これはレンツから由来するのでは、などと言われることもあります(ただし定説ではありません)。

レンツの法則は、誘導電流の向きに関わる法則です。

前述の通り、コイルは磁束の変化を打ち消そうと働く性質があります。

そのためコイルにN極の磁石を近づけると、N極から出る磁力線を妨げる向きに磁束を変化させ、左回りに電流が流れます。

磁石を離して磁力線が弱まると、今度はN極から出る磁力線を増加させるように磁束を変化させ、先ほどとは逆方向に電流が流れます。

S極の磁石を近づけると、その磁力線を打ち消そうと、今度は右方向に電流を流します。

S極の磁石を離すと、今度はそれを妨げようと左回りに電流が流れます。

導線の巻き数が多いとインダクタンスも高まることを前述しましたが、磁石そのものの力を強めたり、磁石を動かす速度を高めたりすることでもこれを得られます。

2.コイルの役割

コイルは、いったい電子回路でどのような役割を果たしているのでしょうか。

もちろん基本の電子部品ですので扱われ方によって用途は異なりますが、その代表例をご紹介致します。

①電流を安定させるコイルが磁束の変化に対して妨げようと動く特性を活かし、電流の変化を抑えて安定させたり、ノイズを除去したりする役割がコイルにはあります。

②変圧する変圧器(トランス)もまた身近な電子デバイスですが、これはコイルが大きい役割を果たしています。

と言うのも、トランスは一つのコアに複数個のコイルを巻き付けた構造となっており(入力側を一次コイル、出力側を二次コイルと呼ぶ)、交流電圧を一次コイルに印加すると二次側に電流が流れます。

交流は常に電流の向きが入れ替わるため(直流はトランスでは変換できない)コイルの磁界もまた変化しており、起電力が発生し続けています。

そして一次コイル・二次コイルはコアが共有のため、二次コイル側にも誘導起電力が発生し、電流を出力することとなります。

なお、入力電圧と出力電圧の日は、一次コイル・二次コイルの巻き数の比で決定します。

③特定の信号を受け取るコイルは磁束の変化の少ない直流電流は、流し始めは打ち消そうとするものの、その後は電流を流していきます。

しかしながら磁束が変化する交流や高い周波数電流は、妨げる動きを続けます。

まるで抵抗のようなこのコイルの作用を、リアクタンスと呼んでいます。

このリアクタンスを利用して、ラジオやアンテナ,無線通信などに利用されています。

3.コイルの種類

グルグルとらせん状の巻線で構成されるコイルですが、様々な種類が各社からラインナップされています。

種類によって性能はもちろん用途も左右するため、代表的なものは知っておきたいところです。

まず、巻き線の構造から以下の三種に分類することができます。

「巻き線コイル」「積層コイル」「薄膜コイル」です。

巻き線コイル・・・巻き線コイルはコイルの最もベーシックなスタイルで、これまでご紹介してきたように導線をらせん状にグルグルと巻いていることが特徴です。

積層コイル・・・積層コイルは導体金属をシートや基板の上に印刷したうえで、積層させています。

小型であり、高周波回路での使用に適しています。

薄膜コイル・・・薄膜コイルは積層コイルと構造は似ていますが、こちらは印刷ではなくスパッタリングや蒸着によっていっそう薄い導体金属で構成するものです。

小型化が容易なことはもちろん、高精度となることも大きな魅力です。

形状によってもいくつかの種類を挙げることができます。

例えばドーナツのような形をしたトロイダル・コイル

リングコイルと呼ばれることもあります。

トロイダルはそのままドーナツ状という意味を持ちます。

トロイダル・コイルはコアが円環状になっているため、このような形をしています。

コアが円環状だと磁場が漏れづらく(アンペールの法則)、一緒に搭載している他パーツへ干渉しづらいといった利点を有します。

その他用途によっても種類分けができます。

例えば電源回路に用いられるチョークコイル

電源回路用途であるため、パワーインダクタと呼ばれることもあります。

交流や高い周波数を通さないコイルの特性を利用したもので、整流が得意です。

ちなみに変圧器になっているチョークコイルはチョークトランスなどと呼ぶこともあります。

またコンデンサと組み合わせて、所望の周波数のみを通す同調コイルや、この同調コイルのコアを長くしたバーアンテナなどは、無線通信やラジオの受信機等でそれぞれ用いられています。

4.まとめ

コイルについてご紹介致しました。

コイルとは細い金属(導線)をグルグルとらせん状に巻いた電子部品となり、磁束の変化を打ち消そうとする働きがあること。

そのため電磁誘導現象レンツの法則により電流を流したりノイズを除去したりする役割があること。

巻き線数や形状によって性能は様々で、また用途によっても製品が多岐に渡ることをお伝えできたでしょうか。

電子回路では基本中の基本・コイルについて、ぜひ理解を深めて下さいね。