マルチプレクサとデマルチプレクサは、どちらも論理回路で使用される素子で、年々デジタル化が進むコンピュータやデバイスを用いるうえで、しばしば耳にするようになってきた用語です。
しかしながら論理回路自体がとても基本的な回路であることに加え、当たり前のように実装されている素子ということもあり、どのようなもので、どのような役割を果たしているのかわからない、という方もいらっしゃるでしょう。
そこでこの記事では、論理回路とデマルチプレクサについてご紹介いたします。
1. デマルチプレクサを学ぶ前に多重化について知っておこう
デマルチプレクサとはどのような用語かを知るためには、それが用いられる「組み合わせ回路」と、そこで行われる「多重化」について理解しておかなくてはなりません。
では、組み合わせ回路とは、いったいどのような回路なのでしょうか。
ひとくちに「アナログ」「デジタル」と言っても、現代では様々な意味を持つことがあります。
しかしながら電子回路においてデジタルとは0と1の世界を指し、この二つの数字を組み合わせてデータ処理を行います。
このデータ処理を行うために、デジタル回路は論理回路(ロジックIC)と記憶回路(メモリIC)を有します。
論理回路は主にデータの計算や加工を行い、記憶回路はその名の通りデータの保持を担います。
ちなみにマイコンは、論理回路に当たります。
論理回路はさらにいくつかの役割に分かれるのですが、中でも組み合わせ回路と呼ばれる基本的な概念があります。
組み合わせ回路とは入力信号によって出力信号が決まる、というシンプルな回路。
AND回路,OR回路,NOT回路で構成されており、論理演算を行います。
この組み合わせ回路の代表的な機能が、多重化です。
多重化は「分散したモノ・コトを一つにまとめること」を指しますが、IT分野でこの用語を使った時はもっと具体的です。
ITの世界での多重化とは、簡単に言うとアナログ・デジタル問わず、複数の信号を合成し、一本の共通した伝送路へ送り込むことを指します。
多くの電子機器は、複数信号を発しています。その一つ一つの信号に対して伝送路を設け、一つ一つ送り込んでいるとなると、とても時間がかかるうえに機器が大型化してしまいますね。
そこで多重化によって一つの信号にすることで、高い速度と効率、そして機器の小径小型化を実現しています。
最も代表的な例が、通信システムでしょう。
今や一億総通信時代と言って過言ではないほど、各家庭や企業で何らかの通信を行っていますが、そのデータ量は膨大です。
携帯電話のような無線通信も、複数の信号が必要になってきますね。また、全てが必要な信号とも限りません。
その一つ一つに回線を用意し、それぞれで伝送する形式をパラレル伝送と呼びますが、現在では現実的ではありません。
前述の通りデータが「膨大」すぎて、恐ろしく時間がかかってしまうためです。
そこで多重化によってデータを一つにまとめて、効率よく高速で大容量のデータ通信を行います。
また、複数信号が送られてくるよりも、データは一本化した方がより安定的な通信が可能となります。
このデータ伝送方式をシリアル伝送と呼びます。
しかしながら、この一本化されたデータをそのままデバイスで使うわけではありません。
携帯電話には、電話で話す,メールを読む,画像を見る,動画サイトで音楽を聴くといった、様々なアナログ信号が必要となってきます。
そこで、多重化されたデータを今度は逆多重化し、複数信号に再変換します。
この逆多重化を行うのが、デマルチプレクサです。
2. デマルチプレクサとは?
前述した、多重化を行うための装置をマルチプレクサと呼びます。
もっとも、英語のMultiplexingが「多重化」という意味を持ちます。
MUXと表記されることがあります。
そして逆多重化を行うための装置がデマルチプレクサです。
DEMUXと表記されることがあります。
さらにこの逆多重化には、分解したデータを寄り分け、適切な出力チャネルへと伝送する役割もあります。
そのため、セレクタと呼ばれることもあります。
なお、マルチプレクサは信号の送信側に搭載されますが、デマルチプレクサはマルチプレクサから受け取った信号を、それぞれのデバイスごとに適切な信号に分解し、送り込む必要があります。
そのため、マルチプレクサから見ると信号の受信側に設置されることとなります。
ただし、デマルチプレクサとセットで使われることが大半で、ひっくるめてマルチプレクサと呼ぶことが一般的です。
デマルチプレクサの動作方式はいくつかに分かれます。
シンプルなものは、スイッチングによる逆多重化です。
デマルチプレクサにスイッチング素子が搭載されており、分割された信号に対して適切な送り先であればスイッチをオンにして伝送させ、必要のない信号であればスイッチをオフにして伝送を妨げるといったものです。
この形式のデマルチプレクサには伝送信号の選り分けにOE(Output Enable。出力を有効とするためのピン)を搭載させています。
なお、基本的に組み合わせ回路は入力値によって出力値が決定されますが、データに何らかの書き換えが行われた時でも出力チャネルを保持するためのラッチを持つ製品もあります。
別の方式としては、インバーターとAND回路を用いたものが挙げられます。
AND回路は組み合わせ回路の中でも「論理積演算」を行います。
これは、入力値が全て「1」であった時だけ出力値を真(true)とする回路です。
もし入力値が1以外であった時、例えば「1・0」「0」等が入力されたとしても、出力は全て0となる特性を持ちます。
この特性を活かし、送られてきたデータが「1」となるもののみ、出力側に伝送するという仕組みです。
なお、デマルチプレクサとよく混同されるデバイスとしてデコーダーが挙げられます。
デコーダーもまた信号の逆方向変換装置となりますが、こちらは符号化された信号を復元する目的で用いられます。
具体的にはデジタルデータをアナログデータに変換する、というもの。
圧縮されたファイルを展開したことがあるかと思いますが、デコーダーはこの「展開を行うため」のデバイスであり、デマルチプレクサとは搭載される回路が異なります。
★デコーダーについて詳しく知りたい方はこちら
3. まとめ
デマルチプレクサについて、ご紹介いたしました!
デマルチプレクサとは組み合わせ回路で代表的な「多重化」に必須の素子であること。
多重化とは複数信号を一つにまとめることであり、厳密にはそれを行うのがマルチプレクサ、逆に一つの信号を複数のデータに分割するものがデマルチプレクサであること。
デマルチプレクサによって分割されたデータは、適切な回路へと伝送されること。
この際、スイッチングまたはAND回路を用いて制御を行うことなどをお伝えできたでしょうか。
なお、文中でも述べたように、マルチプレクサとデマルチプレクサはセットで使われることがほとんどです。
そのため、これらの概念は一緒に覚えておくことをお勧めいたします。
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