我々に身近なスイッチ。
その種類も膨大で、プッシュスイッチやロッカスイッチ、トグルスイッチなど挙げていけばキリがありません。
今回取り上げるサムロータリスイッチはサムホイールスイッチ、デジタルスイッチ等と呼ばれることもありますが、任意の数値を設定することで出力コードを決定したり、切替を容易に行えるタイプの機器となります。
その構造は至ってシンプル。かつ、知っておいて損のないスイッチと言えます。
この記事では、そんなサムロータリスイッチについて解説いたします。
1.サムロータリスイッチとは?
サムロータリスイッチはサムホイールスイッチ、マルチポジションロータリスイッチなどと呼ばれることもあるように、ホイール状のダイヤルおよび摺動子を回転させることで任意の数値に切り替えを行うスイッチのことです。
複数接点のオンオフが可能なため、様々な設定用途で使われてきました。
なお、ロータリスイッチと呼ばれるものも、回転によって複数回路の切り替えを行うことができます。
しかしながらあえてサムロータリと言った時は、2進数・10進数・16進数のコード変換および出力を簡単に行うための機器を指します。
サムロータリスイッチを扱う時、この数値表示に慣れておくことは重要です。
なぜなら、どの数値のコードを用いるかによって、ダイヤルメーターの表示範囲や出力端子が異なってくるためです。
① サムロータリスイッチに用いられる数値表示
10進数とは、私たちに身近な0~10を使う数値の表示形式ですね。
ダイヤルは0~10の数値が記されており、出力コードもそれに倣います。
ちなみにdecimal codeと言った呼び方もなされます。
では、2進数はどのようなものかと言うと、0と1のみを使った世界です。
普段私たちが使っている10進数(0~10の世界)とは数値の表し方が異なり、例えば0は0、1は1ですが、2を表したい時は10、3を表したい時は11、4を表したい時は100・・・といった表記が使われます。
コンピュータの世界であればこのままで問題ありませんが、サムロータリスイッチに0と1だけを使ったダイヤルメーターが付いていたら、ちょっと読みづらいですよね。
そこで、10進数(0~9)における数字を、2進数の4桁で表示・コード出力する形式が用いられます。
この数値表示形式を2進化10進法、またはBinary Coded Decimal(BCD)と呼びます。
ダイヤルメーター上は10進数を表しますが、出力コードは2進数とすることができ、後述しますが2進数しか用いられないデジタル回路への返還が、容易に行えるのです。
この特性から、サムロータリスイッチをデジタルスイッチと呼ぶこともあります。
なお、16進数は16種の英数字を使います。0~9までの数値に則ることは同一ですので、10以降はアルファベットのA~Fが用いられます。15個目のFを過ぎると桁が繰り上がります。
ダイヤルメーターにも、0~Fまでの数値が表示されており、各桁が4桁の2進数でコード表示・出力されます。
こちらは2進化16進法と呼ばれ、binary-coded hexadecimal codeと表記します。
このように、サムロータリスイッチは任意の数値に合わせることで、様々なコード出力を行うことが可能です。
さらに複数のサムロータリスイッチを連結することで、単一では難しい桁のコード設定も行えるでしょう。
② サムロータリスイッチの構造
サムロータリスイッチは非常にシンプルです。
構造はそう難しくはなく、回転して任意の数値を選ぶダイヤル、+-プッシュボタン(またはロータリボタン)、プリント基板等がスクエア型のケースに内蔵されています。
これに気密性を高めるパッキンやシール板が取り付けられており、異物混入を防ぎます。
ちなみに+-ボタンはダイヤルと連動しているため、それぞれを押すことで任意の数値を選択できます。
シンプルとは言え、信頼性を高めるための工夫がこらされています。
例えばプリント基板と接点の接触性を高めるために、基板の導体や摺動子の先端には金合金を用いるメーカーもあります。
金は他の金属に比べて酸化しづらく、そのため経年劣化に強い,腐食しづらいという特性を持ちます。
金合金によって、末永く精度の高いサムロータリスイッチを作り上げることができるのです。
さらにこの基本的な構造にロック機能が搭載され、ダイヤルの数値の切り替えがロック中は行われないもの、あるいは操作には専用工具が必要なものなどが存在します。
③ サムロータリスイッチの魅力
サムロータリスイッチの魅力は、そのシンプルさにあります。
前述の通り2進、10進、16進へのコード変換・出力を行いますが、基本的にはダイヤルメーターを読み取るだけでどのコードを出力しようとしているかが一目瞭然でしょう。
また、数値はケースの窓からいつでも確認できるため、最初に設定した数値を見失うことがないでしょう。
さらに接点は物理的な構成を取っているため設定値からズレることもありません。
ちなみにこのダイヤルメーターの数値、誤操作を防ぐために大きく見やすくなっているものがほとんどなのも、嬉しいところですね。
さらに言うとダイヤルメーターの操作だけで容易にコード変換できます。そのためアナログ信号をデジタル信号に変換・出力することに適しており、前述の通りデジタルスイッチと呼ばれる所以です。
回路への実装も簡単ですので、電子工作を始めたばかりの方でも使いやすい機器の一つであると言えるでしょう。
2.サムロータリスイッチの種類
多少の構造や機能の違いはありますが、基本的にサムロータリスイッチは種類はそう多くはありません。
そのため、外形サイズで選ぶことがほとんどでしょう。
外形サイズには幅5.08mm×高さ16mm、幅8mm×高さ18mm、幅8mm×高さ24mm、幅10mm×高さ33mmの4種が存在します。
小型であるほど民生用途や法人が業務上用いる機器に使われており、大型になるほど産業や設備用途が高まります。
まずはお使いの機器によって適切なサイズをお選び下さい。
なお、ダイヤルを回転させるための操作はプッシュ式またはロータリ式に分かれます。
さらに機器への搭載方法で表面から取り付けるワンタッチ式と裏面から取り付けるネジ締め式が存在します。
また、端子形状に違いがある場合も。
用途や利便性に合わせて、最適なサムロータリスイッチをお選びください。
3.まとめ
サムロータリスイッチについて解説いたしました。
サムロータリスイッチとはサムホイールスイッチやマルチポジションロータリスイッチ等と呼ばれるように、ホイール状のダイヤルを使って任意の数値に切り替えができるスイッチであること。
ただしこの数値は2進数・10進数・16進数が用いられ、それぞれを理解することで所望するコード変換が行えること。
サムロータリスイッチは非常にシンプルゆえに誤操作が起きづらく、またデジタル変換が容易なこと。
このためデジタルスイッチと言った呼び名があることをご理解いただけたでしょうか。
あらゆるスイッチの中でも覚えやすいと思いますので、ぜひ電子工作に携わる方は知っておいてくださいね。
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