光信号を媒体に、回路と回路を結びつけるフォトカプラ。
耐久面や絶縁度と言った汎用性・信頼性の高さから、音響、医療、工業など、高精度が不可欠な分野で活躍している素子ですね。
とは言えフォトカプラは、いつどのような場面で使われるのか、どういった原理で動作するのか。
あるいは実際にご自身の電子工作でフォトカプラを用いる際、どのように選んで使えばよいかイマイチわからない、という方もいらっしゃるでしょう。
「フォト」が付いていることから、「フォトトランジスタ」「フォトダイオード」などと混同してしまう、といった声も耳にします。
そこでこの記事では、フォトカプラについて解説いたします。
目次
1.フォトカプラとは?
フォトカプラは、Photo Coupler「光でカップリングする」という意味の英語を語源とした電子素子です。
フォトアイソレータ、オプティカル(光結合)絶縁などとも呼ばれることがあります。
発光素子と受光素子で構成されており、光信号を通して入力側回路と出力側回路を結合します。
なお、この回路間には電気的な繋がりはありません。つまり、絶縁した状態となっています。
そのため入出力間の回路的接続を分離し、信号のみを伝えること。
入出力で電圧レベルが大きく異なる回路同士を安全に接続すること。
また、入出力間を高耐圧で絶縁することに長けています。
さらにこの光信号を通したり遮断したりすることで、スイッチングの役割を果たすこともできます。
詳しい原理・仕組みは後述しますが、フォトカプラの発光素子を担うのはLED(発光ダイオード)です。
LEDが発明され、その技術進歩が目覚ましかった1960年代~1970年代にかけて、オプトエレクトロニクスが一つのブームとなりました。
その波に乗って様々な光デバイスが発明されましたが、フォトカプラもまたそのうちの一つです。
物理的な接触なしに光を介して動作できるオプトエレクトロニクスはたちまち私たちの生活に浸透していきました。
そんなフォトカプラについて詳しく解説いたします。
① 原理・仕組み
フォトカプラの原理は、発光素子が入力された電気信号を光に変換し、受光素子がその光を再び電気信号へと戻して出力側回路に伝達する、というものです。
この発光素子と受光素子は外界の光を遮断したパッケージ内に、両者が向かい合わせで取り付けられています。
発光素子に使われる半導体はLED(発光ダイオード)です。
一方受光素子に使われる半導体には、いくつかの種類があり、使用環境や外形寸法、価格面などを考慮して決定されますが、一般的にはフォトトランジスタが最もよく用いられます。
次いで、主にリレーなど大出力で活躍するフォトICまたはフォトサイリスタの使用場面が見られます。
フォトトランジスタは、何もしない状態では通常の半導体同様にほとんど電流の移動は起きていません。
そこで光を入射するとp型半導体とn型半導体が接合している面で光起電力が生じ、n型半導体内の正孔がp領域へ、p型半導体内の自由電子がn領域へと流れ込み、電流が流れることとなります。
フォトトランジスタはフォトダイオードに比べると応答性は鈍いですが、入力された信号の数百~1000倍の出力に増幅させる効果もあるため(内部電界による)、微弱な信号もキャッチしてくれるという感度の高さが利点です。
なお、同じ原理・仕組みを持つ電子素子にフォトインタラプタがあります。
ただしフォトインタラプタはセンサとして活用されることが多く、発光素子・受光素子の間に遮光物体を通すことで性能を発揮します。
例えば自動販売機やATMなどの硬貨・紙幣検知などが用途として挙げられます。
② 特性
繰り返しになりますが、フォトカプラは光を介して信号伝達を行うため、入力側と出力側の絶縁性を高めることが大きな特徴です。
絶縁性が高いということは、ノイズの影響を受けづらいことに加え、隣り合う回路間で予期せぬ電流が流れ込むことを防ぎ、安全面で非常に有効な作用を発揮します。
また、構造自体がシンプルなため比較的リーズナブルなこと。
長い歴史を持つため各メーカーからラインナップが豊富なこともフォトカプラの特性ならではのメリットとなります。
物理的な接点がないので、パーツ同士の摩耗が少なく、比較的長寿命なところも嬉しいですね。
一方でLEDが経時や温度変化によって劣化してしまい、発光効率が変動しやすいという特性もあります。
特に素子のプラスティックなどが曇ってしまうと、上手に発光することができません。
とは言えスイッチングで考えた場合、機械的接触を持つ有接点に比べれば長寿命と言えるでしょう。
また、フォトトランジスタはフォトダイオードなどと比べると速度が遅いことも多く、高速通信などでは用いられません。
しかしながらこれも、出力側に増幅回路を設けて高速化を行った素子もあること、全ての電子回路に高速化が必要なわけではないことから、一概にデメリットとは言えません。
③ 用途
フォトカプラは主にスイッチング動作で用いられます。
スイッチを入れることで回路が通電されることとなりますが、前述の特性、特に絶縁性や長寿命という観点から、高い信頼性が求められるシーンにうってつけです。
例えば医療用電子機器やノイズが大敵の音響機器・通信機器。
また、モーターの駆動システムでも利用されています。なぜモーターかと言うと、駆動の際にインバータで回転速度を制御しているのですが、高出力なためノイズが発生します。
このノイズはモーター自体の誤作動のみならず、大地を流れて周辺機器に影響を及ぼす場合があります。
とりわけ配線の長い機器類はこの高出力ノイズを拾いやすいため、工場などで発生すると大きな損失となったり、時には重大な事故を引き起こしたりしてしまいます。
絶縁性の高いフォトカプラをスイッチングに使用することで他回路・機器への影響を最小限に抑えることが可能となります。
2.フォトカプラの選び方・使い方
フォトカプラは何を選んでどう使ってもいいわけではありません。
ご自身の用途や回路の条件に合った、適切な一つを使いましょう。
フォトカプラの選び方・使い方を解説いたします。
① ノーマリーオンとノーマリーオフ
フォトカプラには電圧印加しない時にスイッチがオフ(オープン)、電圧印加するとオン(クローズド)になるタイプと、電圧印加しない時にオン、電圧印加した時にオフになるタイプがあります。
前者をノーマリーオン、後者をノーマリーオフと呼びます。
ご自身の回路に必要な方を選びましょう。
② 出力電流と印加する電圧を調べる
フォトカプラは信号を増幅させる特性がありますが、好きに電圧・電流を流していいわけではありません。
定格がある、ということはもちろんですが、必要とする出力電流に応じた電圧を入力側から印加することが求められるためです。
製品のデータシートを見ると、縦軸が出力電流(コレクタ電流)、横軸が入力電圧(コレクタ・エミッタ間電圧)になっているグラフを確認できます。
LEDの光の強さに応じてコレクタ電流は変わってくるので、必要な出力電流に応じた電圧を印加しましょう。
ただし、ここで算出した出力電流が、意外と小さいと思うことがあるかもしれません。
これはLEDの経年劣化を考慮したうえで確実に出力できる電流の数値となるため、最大定格などと比べると小さくなります。
逆に出力電流がそう大きく必要なわけではない、という場合もありますね。
そのため、フォトカプラを購入する際には、しっかりと「どれくらいの電流を出力するか」を確認し、それに見合った製品を選ぶことが求められます。
③ 最大オン電流
フォトカプラがオンの時、どれくらいの電流まで耐えられるかの最大値を示したものが最大オン電流です。
こちらもまた、どれくらいの出力が必要で、入力する電圧は何Vかをしっかりと確認してから購入する必要があります。
最大値と使用下の電流がギリギリではなく、ある程度の余裕を持たせるようにしましょう。
④ フォトカプラを正しくセットする
適切なフォトカプラを選べたら、次は実際の電子工作で使ってみましょう。
とは言え設置自体は簡単です。入力側の回路と出力側の回路それぞれに付属の端子を接続するだけです。
ただし、この入力側・出力側の向きを間違えないよう注意が必要です。データシートに表記がありますので、ご確認ください。
なお、両方向接続が可能なフォトカプラ製品も存在します。
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