私たちの日常生活の、何百・何千の電子機器にセンサは使用されています。
血圧を正確に数値化して健康管理をする。
スマートフォンを横向きにすると画面も傾く。
デジタルカメラで美しい風景を高画質で写真に収める。
快適な空間のために、任意の温度・湿度を保つ。
こういった、普段何気なく活用している機能は全てセンサの恩恵によるものです。
私たちの生活に欠かせない、そしてこれからもより利便性を高めてくれるセンサについて、理解を深めましょう。
この記事では、圧力センサ、加速度センサ、光センサ、湿度センサ、温度センサの5種類を解説いたします。
1. センサとは
センサの語源は英語の「センス(sense)」で、「感覚、知覚」という意味です。
人が五感で感じ取るように、センサは外的信号を感知して再現し、電気信号へ変換できる電子素子のことを指します。
その電気信号を他の電子デバイスに受け渡すことで適切な動作を行うことができます。
例えば、センサが周囲の温度を検出してその情報を電気信号でエアコン送信することで、エアコンは適切な温度に調節することができます。
また最近のセンサ技術は人の感覚を超え、微細な感覚まで検知して高精度で測定し、数値化できます。
センサの測定範囲は入力信号と出力信号の関係から決まり、検出できる最小量を検出限界、入力信号に対する出力信号の割合を感度、有効に測定できる範囲をダイナミックレンジと呼びます。
センサの材料として半導体は不可欠であり、シリコン製半導体センサが一般的です。しかし、最近は熱伝導率が高いダイヤモンドが注目されています。
2. 圧力センサとは
参考:ALPSALPINEの圧力センサ HSFPAR007A
① 圧力センサの原理・仕組み
圧力センサは、弾性体でたわみの量を検出します。
この弾性体を極めて薄く設計し、より感度を高めた変換器をダイヤフラム(隔膜)、検出機器としてダイヤフラムゲージと呼びます。
身近な例では聴診器で使用されています。
加工技術の進歩により、ダイヤフラムをシリコンウェハー上に作成することでチップ化が進み、小型機器にもますます活用されています。
また、耐腐食性の材料を使用することで液体や気体の計測も可能になりました。
このダイヤフラム上に、さらにp型半導体で形成したひずみセンサ(検知されたたわみ量を再現し、電気信号に変換するための半導体素子)を設けます。
このひずみセンサは、半導体の特性であるピエゾ抵抗(半導体の特性・「ピエゾ」はギリシャ語で「押す」という意味)によって電気信号を発生します。
ひずみを与えると半導体の電気抵抗が変化し、その変化量によって圧力を検知します。その後、増幅回路によって信号が増幅され、圧力として測定される仕組みです。
従来の金属線を用いたひずみセンサに比べて、半導体を用いたひずみセンサはゲージ率が高く、高精度に圧力を検知することができます。
また、シリコン製半導体であるため小型・軽量化にも適しています。
とはいえピエゾ抵抗による電気抵抗変化だけでは検出結果に十分とは言えません。
そこで、4つのひずみセンサをブリッジ回路(ホイートストンブリッジ回路と呼ばれる)で構成することで、微小なたわみ量をより正確に検知しています。
圧力センサは単体で使われる他、ダイヤフラム基板上に他のセンサや回路を組み込んでインテリジェントセンサ(集積回路タイプのセンサのこと)としても利用されます。
この技術をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems )と呼びます。
センサのインテリジェンス化が進んでおり、圧力センサのみならず各種センサで、あらゆる産業の飛躍へと貢献しています。
② 圧力センサの用途
圧力センサは、自動車のエンジン制御や血圧計、エアコン、掃除機の風圧制御など、身近な用途からロボット産業まで幅広く使用されています。
特にロボット産業では、ロボットハンドの握力制御や、やわらかい物体を傷つけずにつかむ技術に応用されています。
2016年には、圧力センサを用いて人の異なる重心を検知し、最適な靴を提供できる足型測定機器が開発され、注目を集めました。
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3. 加速度センサとは
加速度センサは、ゲームのコントローラーや自動車のエアバックなどで注目を集めています。
加速度センサは、傾きや動き、振動、衝撃などの変位量を検知し、その変化を示すセンサです。
例えば、ゲームのコントローラーを傾けて操作する際や、車が衝撃を受けた際にエアバックが展開するのも、加速度センサの働きです。
① 加速度センサの原理・仕組み
加速度センサは検出方式によって種類がありますが、現在ではMEMS技術が主流です。
MEMSは小型で高感度・高精度なセンサを実現する技術であり、加速度センサにも採用されています。
MEMS式加速度センサの原理・仕組みについて解説します。
加速度センサはニュートンの運動方程式を利用していて、バネの伸び具合から加速度を算出します。
重りにかかる力をF、伸びたバネの変位量をα、重りの質量をmとした場合、F=mαという関係があります。
また、フックの法則により、バネにかかる力Fとバネの変位量xの関係はF=kxです。
この原理を利用して、加速度センサは加速度を測定します。
MEMS型加速度センサは、変位量を測定し加速度を算出するセンサチップと、信号を増幅・調整して電気信号に出力する回路で構成されます。
センサチップの素子には、ピエゾ抵抗式と静電容量式の2つの主要なタイプがあります。
■ピエゾ抵抗効果を利用した加速度センサ
ピエゾ抵抗は圧力センサにも使用されており、ひずみが加わると電気抵抗が変化し、変位を検出します。
センサチップの可動部と固定部をバネで繋ぎ、ひずみによって電気抵抗が発生して、その変化値で加速度センサの役割を果たす仕組みです。
多くのMEMS製品はシンプルな構造で、大量生産が可能なため比較的安価です。
携帯電話やゲーム機器などで使用されており、静電容量式に比べると感度・精度はやや低いですが、広く普及しています。
圧力センサと同様に、ホイートストンブリッジ回路が組まれ、四つの素子が使用されます。
■静電容量変化を利用した加速度センサ
静電容量を利用した加速度センサも広く使われています。
このセンサチップは、可動部とバネ、そして歯状の電極から構成され、力が加わると電極板間の距離が変わり、静電容量が変化します。
この静電容量の変化から加速度を検出して信号処理する仕組みです。
このセンサチップはシリコンやガラスといった安定した物質を使用し、温度特性に優れていて、かつ繊細な加工がしやすいため、多くのメーカーで採用されています。
このように、加速度センサはいくつか種類がありますが、MEMS技術によって小型・軽量で、手に入れやすい価格帯で売り出されています。
また、多軸タイプの加速度センサもラインナップされており、より精密・精緻な加速度に対する検出が実現しています。
② 加速度センサの用途
加速度センサは、ゲームコントローラーの傾きによる操作やスマートフォンの画面切り替え、カメラの手ブレ感知モードなどに使われます。
歩数計でも利用され、移動を検知して歩数を計測します。また、自動車のエアバッグやロボットが倒れた際の自動起立機能にも加速度センサが使用されています。
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4. 光センサとは?
参考:ROHMの光センサのフォトダイオード RPMD-0132
光センサは光を感知して電気信号に変換するセンサで、受光素子とも呼ばれます。
様々な場面で利用され、自動ドアの開閉や玄関ライトの点灯、トイレの自動水流の制御などに活躍しています。
光センサは接触せずに検出が可能で、可視光だけでなく赤外線や紫外線など、さまざまな光を感知し、電気信号に変換することができます。
① 光センサの原理・仕組み
光センサはさまざまありますが、多くは半導体の光電効果を利用しています。
光電効果とは、光の照射によって励起した(エネルギーを持った)電子が飛び出したり、光起電力が発生したりする現象です。
光電効果には外部と内部の2種類があり、金属では前者、半導体や絶縁体では後者が見られます。
外部光電効果を使った光センサには光電管や光電子増倍管があり、内部光電効果を使った光センサは光導電セルやフォトダイオードなどが挙げられます。
現在のセンサ技術は半導体を利用した方式が一般的です。これらの仕組みについて解説します。
■光導電セル
光導電セルは、半導体内部の光電効果によりエネルギーを得た電子が移動することで電気抵抗が低下する仕組みを利用したセンサで、フォトレジスタやフォトセルとも呼ばれます。
主に硫化カドミウム(CdS)を使用し、可視光に対して感度が高くて大電流にも対応でき、また安価であるため広く利用されています。
ただし、反応速度はやや遅く、EU圏内では有害物質指定のため使用されていません。
■フォトダイオード
フォトダイオードは、光の強度に応じて電流が変化する半導体で、光の増加で光起電力が生じます。
p型半導体とn型半導体で構成されることとなり、PN接合タイプ、p型半導体とn型半導体の間に真性半導体(抵抗が大きい)i層を形成したpinタイプがあります。
フォトダイオードは光導電セルに比べて応答速度が速く、紫外線から近赤外線まで広範な波長帯域に対応し、低ノイズで長寿命なので、さまざまなシーンで使われてきました。
抵抗が大きくキャリアの少ないi層を挟んだpinタイプの方がp型半導体-n型半導体の接合容量が減るため、応答速度は高くなります。
ちなみに今回は光の強度(量)を検出する光量センサを中心に解説いたしましたが、光には強度の他、波長(色)・位相・偏光という情報があります。
特に波長の検出は非常に難易度が高いのですが、簡易型分光器などで精密な検出・検知が可能となってきました。
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② 光センサの用途・使い方
自動ドアや自動点灯ライト、リモコンの信号伝送など、身近な機器には光センサが使われています。
医療分野でも光センサは重要で、X線撮影にもイメージセンサが利用されています。
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5. 湿度センサとは?
参考:ALPSALPINEの湿度センサ HSHCAA114A
「今日、ムシムシしない?」という会話から湿度を感じることがありますが、それを検知して電気信号に変換するのが湿度センサです。
湿度は空気中の水蒸気の量を表し、通常は温度と一緒に測定されます。
① 湿度センサの原理・仕組み
以前は伸縮式湿度計が一般的でしたが、その後、半導体湿度センサが登場しました。
これは、毛や糸の代わりに半導体を使用し、より正確で迅速な湿度の測定が可能になりました。
このセンサは電気信号に変換されるため、電気式湿度計とも呼ばれます。
この湿度センサは、静電容量方式と抵抗変化方式が一般的です。
■静電容量方式
加速度センサでは、静電容量の変化を利用して測定が行われます。
湿度センサも同様の仕組みで、二つの電極間に感湿材料を配置し、湿度の変化でその感湿材料の吸湿、脱湿が起こり、電極間の距離が変化することで静電容量が変化します。
この変化を電気信号として検知します。
静電容量式は高精度で応答速度がきわめて早く、結果も安定しています。
また、感度が高いため低湿度の計測にも対応できる便利なセンサです。
一方でノイズ対策が必須で構造も複雑化しやすく、コストがかかってしまうという点もあります。
■抵抗変化方式
抵抗変化方式の湿度センサでは、櫛型の電極に感湿材料を塗布して感湿膜を形成します。
湿度が上がると感湿膜が吸湿し、導電性が高まり抵抗が小さくなります。
逆に、脱湿すると抵抗が大きくなります。
この抵抗の変化を電気信号に変換し、回路に送る方法です。
抵抗変化方式は静電容量方式に比べると感度や精度は悪くなりますが、構造がシンプルなため大量生産可能で、お手頃価格です。
ノイズに強いという特性もあります。また、小型・軽量化が容易なことも大きなメリットでしょう。
② 湿度センサの用途
湿度センサは、温度センサと一緒に使われることが多く、家電製品では冷蔵庫やエアコン、空気清浄機などで湿度の制御を担います。
また、OA機器では湿度が大敵となるため、湿度センサは機器内部の湿度を一定に保ち、紙詰まりやインクのにじみを防ぐために必要不可欠です。
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6. 温度センサとは?
参考:ABLICの温度センサ S-5844A75AB-M5T1U3
温度センサは、気温や体温の測定だけでなく、火災警報器や家電など幅広い用途で使われます。
研究開発が進んでおり、さまざまな測定原理を活用したセンサがあります。
ただし、使用する場面に応じて、測定範囲や精度などが異なります。
ここでは温度センサとして非常によく用いられる熱電対を用いたもの、サーミスタを用いたものを紹介します。
① 温度センサの原理・仕組み
温度センサは、基本的には被計測体に感温部を接触させることで熱を移動させ、それぞれが熱平衡になる原理を利用しています。
まず、熱電対の仕組みについて解説します。
熱電対は、異なる金属を接合して温度差で発生する熱起電力を利用して温度を測定します。
高い精度を求める場合はプラチナを使用しますがコストがかかるため、通常は一部に使用し、他の部分には別の合金を使い、他の導線は別途合金で代替する補償導線を用いることが一般的です。
金属線を細くすることで高い精度の温度測定が可能となります。
もう一つのサーミスタは、金属線と金属酸化物半導体を組み合わせ、熱によって変化する電気抵抗を利用して温度を測定します。
温度上昇に伴い電気抵抗が減少するNTC(negative temperature coefficient)、ある温度で急減するCTR(critical temperature resistor)、急増するPTC(positive temperature coefficient)の3種類がありますが、温度測定ではNTCが広く使用されています。
どちらも被測定体と温度センサを接触させて用いるため、熱容量の小さいものの測定にはあまり向いていません。
なぜなら、熱平衡に達する前に被測定体の温度が変わってしまう可能性があり、これは誤差に繋がります。
そこで最近では、熱放射を利用した非接触式温度センサも主流となりつつあります。
② 温度センサの用途
温度センサは家電製品や人感センサとして広く利用されています。
火災予防の観点からも需要が高く、一般住宅には火災警報器の設置が義務付けられています。
これらの警報器にはさまざまな種類がありますが、温度センサは主に熱を検知するために使用されます。
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7. その他のセンサについて
ここまで解説してきたセンサ以外にも、まだまだたくさんの種類のセンサが存在します。
①人感センサ
人感センサは、人間の接近や所在を検知するための重要なセンサです。
このセンサは、体表面から発せられる赤外線を感知したり、超音波やマイクロ波を発して、人間からの反射波を捉えることで感知したりします。
人感センサはこのような特徴を活かして、さまざまな用途に利用されています。
例えば、照明の点灯制御やトイレの便器の洗浄機能の作動などに活用されています。
また、防犯設備としても重宝されている、重要な技術の1つです。
②タッチセンサ
タッチセンサは、人が触れたり近づいたりすることでその動作を感知するセンサです。
例えば、スマートフォンやタブレットの画面が典型的なタッチセンサの例です。
これらのデバイスでは、指を画面に触れることでアプリの起動や操作が可能となります。
また、工場の機械や身近な家電製品にもタッチセンサが使用されています。
工場では、タッチセンサが搭載された制御パネルを通じて、機械の操作や設定を行うことができます。
家電製品では、タッチセンサが電子レンジや洗濯機などの操作パネルに組み込まれています。
さらに、レストランや店舗のオーダーシステムでは、タッチセンサを利用して顧客がメニューを選択し、オーダーを行うことができます。
これにより、店舗側での注文受付や料理の調理が効率化され、顧客の待ち時間が短縮されます。
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③音声センサ
音声センサは、音の存在や強度を検出するセンサです。
主にセキュリティシステムや音声認識システムなどで使用されています。
さらに、会議の内容を聞き取りしたり、コールセンターで顧客とのやりとりを記録したりと、さまざまなシーンで活用されています。
音声センサは、その高い検出精度と使いやすさから、様々な分野で重宝されています。
特にセキュリティや音声認識の分野では、その信頼性と効率性が求められ、音声センサの活用が広がっています。
④地磁気センサ
地磁気センサは、地球の磁力を検出して方向を示すセンサです。
XとYの2軸タイプや、Z軸を加えた3軸タイプがあり、磁場の値を計測します。
一般的には「電子コンパス」としても知られています。
このセンサは、主に方位を知るために使用されますがその応用範囲は広く、屋内測位や拡張現実(AR)技術にも利用されています。
例えば、スマートフォンやタブレットに搭載された地磁気センサは、ARゲームやナビゲーションアプリでの方向指示に活用されています。
また、地磁気センサはその感度を活かして、金属異物の検出にも利用されます。例えば、金属部品の検査や金属探知機として利用されます。
⑤距離センサ
距離センサは、対象物までの距離を測定するセンサであり、超音波やレーザー光を使用したものが一般的で、タイムオブフライト(TOF)方式が広く採用されています。
TOF方式では、センサから送られた光や音が、対象物までの距離を測定するためにかかる時間を計測し、それによって距離を推定します。
このセンサは、幅や長さの測定、衝突防止、位置制御など多岐にわたる制御に利用されます。
例えば、荷物の搬送やタンク内の液量管理、ロボットの衝突防止、製品の仕分けなどに活用されています。
▶センサに関するCoreStaffONLINE取扱いカテゴリ一覧はこちらから
8. 重要用語まとめCheck It!
センサ素子に半導体を用いることが主流であること。
各種センサは、私たちの利便性だけでなく、安全性をも守ってくれていることをお伝えできたでしょうか。
各種センサの復習を兼ねて、以下のクイズにチャレンジしてみましょう!答えは一番下に掲載しております。
問題
- 1.圧力センサでたわみの量を感知する弾性体とは?
- 2.加速度センサの原理として使われる方程式とは?
- 3.外部光電効果を使った光センサとは?
- 4.湿度センサの用途を二つ以上挙げてください
- 5.金属酸化物半導体が熱によって電気抵抗を変化させる、という仕組みを用いた温度センサを何と言う?
答えはこちら!
- 1.ダイヤフラム(隔膜)
- 2.ニュートンの運動方程式
- 3.光導電セル、フォトダイオードなど
- 4.エアコン、冷蔵庫、加湿器などの家電やプリンターなどのOA機器
- 5.サーミスタ
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