はじめに
半導体製品ではスタンダードとカスタム、ハードとソフトの良いとこ取りしたFPGA製品、 その誕生から今なぜFPGAなのか背景を含めマーケット視点で解説します。
目次
1) 人口増とコンピューティング マーケットの拡大
皆さんはご存じですか?いま世界の人口は80億人を超えようとしています。
別表(1)のとおり1950年からの100年間で4倍増する見込みで、単純に人口数では新興国の多いアジアと発展途上国の多いアフリカが大半エリアを占めています。
今後このエリアは、時間差があるものの間違いなくコンピューティング市場の莫大な潜在需要を含んでいることに間違いありません。
インターネットユーザ総数も下記のとおり、2018 年に 39 億人(世界人口の 51%)でしたが、2023 年 までに 53 億人(世界人口の 66%)に達すると予測されています。( 別表(2)参照 )
地域人口に占めるインターネットユーザの割合
地域 | 2018年 | 2023年 |
---|---|---|
世界全体 | 51% | 66% |
アジア太平洋地域 | 52% | 72% |
中央及び東ヨーロッパ | 65% | 78% |
中南米 | 60% | 70% |
中東およびアフリカ | 24% | 35% |
北米 | 90% | 92% |
西ヨーロッパ | 82% | 87% |
またコンピュータの世界ではクライアント・サーバーから現在のクラウドコンピューティングとなり一定のモデルができましたが、更に高速・高精度・省力化の要求と相反しコンピューティングを意識しないでも使える世代の需要増に、エッジコンピューティングが指向されています。
2)エッジコンピューティングとは
これまでのクラウドコンピューティングは、端末から収集したデータをそのままクラウドにアップロードしてクラウド上で(分散)処理します。
皆さんが欲しいタイミングでレポートやビジュアル情報としてダウンロードして確認できるサービスのことです。
別表(3)の通り2000年頃のインフラには制御用マイコンとアクセラレータ(コプロセッサなど)により構成され、通信速度1Mbps程度で画像も静止画中心でクオリティの低いものでしたが、最新の通信速度は1Gbps超となり高精細な動画再生が可能となり、短い期間に目覚ましい改善が進んでいます。
近年は新型コロナの感染が広がった2020年から自宅で過ごす時間が増え動画視聴やオンラインショピングに加えテレワークなどビジネスシーンでのインターネット利用(クラウドコピューティングの代表例)が世界的に拡大しました。
クラウド自体は世界中に設置されたデータセンターと世界中にバラまかれた端末が経路未確定で複雑に通信するため、2021年世界の越境データ流通量は785.6Tbps*(テラ ビーピーエス)と言う膨大なデータ通信量となり、2017年と比較すると2.7倍も大幅拡大とJETRO(日本貿易振興機構)でレポートされています。
※bpsはbits per secondビットパーセカンド(毎秒何ビット送れるかデータ通信単位)
*補助単位
- 10垓(1021)倍…Z(ゼタ)
- 100京(1018)倍…E(エクサ)
- 1,000兆(1015)倍…P(ペタ)
- 1兆(1012)倍…T(テラ)
- 10億(109)倍…G(ギガ)
- 100万(106)倍…M(メガ)
- 1,000(103)倍…K(キロ)
今後、北米・EUや日本での利用拡大に加え新興国でもスマートフォンの普及や端末増加に加え5Gネットワークが設置されれば、5G特性のアプリケーション利用でデータ通信量は更に膨大になります。
自動車の自動運転が象徴的なアプリケーションとなりそうです。
しかし世界のデータ通信量が飛躍的に増加してもインフラ側の帯域不足とクラウド処理能力不足は直近及び将来においても大きな課題です。
新しいアプリケーションの開発や人口増加(潜在ニーズ増加)に追い付けないと予想されています。
この課題解決を期待されているのが「エッジコンピューティング」です。
各種センサーからデータを受けゲートウェイとなるエッジ側(監視カメラやスマホなど端末)で相応の一次二次データ処理を行い、必要なデータのみ(最小限)をアップロードしてクラウド側では複雑で高速な処理や過去データを参照し現状分析・未来予測の上で処理結果を保存、また結果をダウンロードしエッジ側で分かり易く確認できる仕組みです。
エッジ側で一次以上の処理を行うので即時に暫定確認でき、全てのデータをクラウド側に送信しないことで帯域も確保されネットワーク全体に負荷軽減が図れます。
これまでのクラウドコンピューティングでは端末側は取得したデータをクラウド側へ単に送り出すだけで高い処理能力は必要ありませんでした。
そのため選別整理など単純な処理だけでなく膨大なデータの高度な計算や即応性にはFPGAによるハード処理性能や並列性がグラウド側で大きな効果を生んでいます。
しかし扱うデータが飛躍的に増え当然設備も相応の増設や新設により更新し続けなくてはならず、このままでは投資回収ができません。
別に発熱対策もあり。
そこで課題解決となるエッジコンピューティングでは、端末のエッジ側で各種データ取得から様々な処理を行いクラウド側が効率的に処理できる整理済データの作成送信など、クラウド側の負荷を軽減するためエッジデバイスの処理能力向上がポイントとなりました。
しかもエッジデバイス処理性能向上はクラウド側の行き過ぎた設備投資の抑制にも繋がりシステム全体では測り知れない効果となります。
エッジデバイスの処理能力向上、クラウド側の処理能力不足解消、どちらにも大きく寄与出来るキーパーツが「FPGA」なのです。
3)FPGAとは
FPGA(Field Programmable Gate Array)の略、Field=顧客が内部構成を自由にプログラム可能な集積回路(IC)のことでPAL(Programmable Array Logic)/GAL(Gate Array Logic)、PLD(Programmable Logic Device)/CPLD(Complex Programmable Logic Device)と同系統の製品群となります。
ハードウェアとソフトウェアの良いとこ取りした顧客ニーズに柔軟に対応するICです。
FPGA誕生のきっかけは、1980年代は絶好調だった家電メーカーが軽薄短小・大量生産のニーズに応え肥大化する電子回路の規模縮小が大きな課題だった、その一つの解決方法であるフルカスタム半導体「ASIC」でした。
ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路、エーシック)は、顧客の要求回路を半導体メーカーが預かり顧客専用デバイスとして供給する特定用途・特定顧客向け専用ICです。
当時カスタマのニーズがASICへ集中した結果、各半導体メーカーの設計ルールに合わせ回路設計を落し込み、その回路評価から実デバイスでのアプリケーション評価(実機フイールドテスト)を経て完成するASICは1年半~2年もの長い開発期間が必要でした。
コンシューマー市場ではタイムリーに商品発売できないこと=シェア落とすことと直結となるため、その開発期間の大半を占めた実機評価期間の縮小にASIC代替目的でFPGAが使われ始めました。
当時1個数万~数十万円もする高いFPGAを買い込みASIC完成前にアプリケーション評価まで終わらせて市場投入を早めることに成功しました。
FPGAに回路移植し当初スケジュール通り進んでも結局はASICで量産するため、せっかく開発したFPGAは評価だけで終わり陽の目を見ることはありませんでした。
ただ市場投入最優先のアプリケーションや当時の短納期でモディファイが必要なアプリケーションにはFPGAを量産使用するケースも徐々に増え、この頃からFPGA単価の量産効果も出始めて徐々にですがASICとの併用やFPGAへ乗り換えるようになりました。
ハードウェア特性を生かしリアルタイムな並列処理が可能で量産後でも機能追加やVersionUPが柔軟に対応できるFPGAは正にエッジコンピューティングには必須な半導体となります。
FPGAは、その高い処理能力からCPUと組み合わせ複数のデバイスを並列・並行制御するケースも多いです。
4)FPGAとマイコンの使い分け
電子回路上で制御を司るマイコンは、マイクロコンピュータ(Microcomputer)やマイクロプロセッサ(Microprocessor)と呼ばれ、内部のCPU(Central Processing Unit)が実行可能な命令コード体系が決まっています。
ISA(Instruction Set Architecture:命令セットアーキテクチャ)と呼ばれるものでISAが同じなら同じプログラムを実行できます。
要は同じISAを持っていれば、どこのプロセッサでもプログラム互換です。
IntelとAMDプロセッサのようなものです。
従来のマイコン(プロセッサ)ではシステム全体の制御や演算(難しい計算)を担っていましたが、時代のニーズが高い演算能力を求めるためCPUを補助するコプロセッサ(co-processor)としてFPU(Floating Point Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)を開発搭載しました。
しかしそれでも足りずマイコンと別にDSP(Digital Signal Processing)等アクセラレータと組み合わせ対応も、やはり不足なのでマイコンに複数CPUや複数DSPを内蔵し厳しいユーザーニーズに応えてきました。
ただ複数Unitが超高速で処理するので異常な発熱問題も新たに発生しました。
よって演算やリアルタイム性の低いアプリケーションは、今後もマイコンの単品使用は継続され、よりパフォーマンス上げる縮小命令セットのRISC(Reduced Instruction Set Computer)がメインとなりつつあります。
ARM(Advanced RISC Machines)が象徴的ですが、融通が利かないことやロヤリティなどのコスト面で近年はRISC-V(使用料やロヤリティ不要のRISCオープンソース)が台頭してきています。
ただ冒頭の通り、最近のUI(User Interface)はプロセッシングを意識しない作り込みがされバックグランド(OSやアプリケーション機能として)で演算を含めた膨大な処理をリアルタイム実行しています。
プロセッサ類の高クロック化や微細化は限界に近く今以上のパフォーマンスは求められない、そもそもリアルタイム性を担保できないプロセッサではなく、ハードのパフォーマンスで限界ない並列化が可能なFPGAが時代にマッチしたコア部品となります。
これまではマイコンがCPU周辺を取り込んできましたが、これからはFPGAがマイコンを取り込む時代になりFPGAのIP(Intellectual Property:知的財産 インテレクチャル プロパティ)やSoC(System on a chip:システム・オン・チップ)として既に提供されています。
結論として、マイコン+FPGAもあるが、それぞれ単体での仕様も継続するが、エッジコンピュータ環境下ではFPGAもしくはマイコンを取込んだFPGAのニーズが圧倒的です。
よって多機能で複数Moduleの搭載により消費電力と発熱、大手メーカーによる微細化競争でのFabの取り合いで不安定な製造、長期供給の難しさは、今現在および将来に渡り大きな課題です。
この全ての課題を新アーキテクチャー開発提供にて解決可能なメーカーも出てきました。
時代は益々FPGAに対し注目度は増し、一方で開発・評価の環境も無償提供やパッケージ化が進みマイコンレベルの取り組み易さもFPGAニーズを更に高めています。
現状および将来に様々な課題を抱えておられる設計の方は、是非一度FPGAを試されてみてはいかがでしょうか?
皆さまの課題がひとつでも解決すること願って終わりにします。
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