今回は最初に立ち返って「半導体とは」について簡単に復習していきます。
半導体とは、から半導体の材料、仕組みについて5分程度で読めますので見ていきましょう。
➀ 半導体とは?
半導体はよく導体と絶縁体の中間、と言った呼び方がされます。
導体とは電気伝導体の略で、電気を通しやすい物質を指します。
逆に絶縁体は電気を通しづらい物質ですね。
では、半導体は「電気の通しやすさと通しづらさを併せ持つ」と言うと、ちょっと違います。
そこで、バンドギャップを考慮すると理解しやすいでしょう。
バンドギャップというのは禁止帯、禁制帯の意味を持つ英語で、電子が存在することのできない領域を主に指します。
導体はバンドギャップがない、絶縁体はバンドギャップが大きい物質と言えます。
半導体はバンドギャップのあるところ・ないところが半々かと言うとそうではありません。
半導体そのものは結晶の結合が強く、電圧を印加しても電流はほとんど流れません。
しかしながら不純物をごく少量添加することで電気抵抗を大きく変え、電流を流したり流さなかったりと言ったように、電子の流れを任意に制御することができるのです。
つまり、半導体とは、使い方によって導体にも絶縁体にもなる物質、と言えるでしょう。
この「使い方」は、電気抵抗だけではなく電場、地場、光、熱、放射線、圧力、ガスの吸着・・・様々な物理的性質をも変化させることができるため、あらゆる応用によって日常生活を豊かにしてくれています。
例えば後述しますが、精細な映像を再現できる半導体。
これはCCDやCMOSなどの半導体イメージセンサが用いられていますが、光エネルギーを吸収し、電気信号に変換。
さらに画素ごとにセンサをセッティングして送られてきた信号を増幅し、細かなイメージの細部までを映像に必要な分だけの信号として再現する、という仕組みになっています。
ちなみにここで言うCCDやCMOS、あるいは最も代表的なダイオードやトランジスタなどは、厳密には半導体素子となりますが、半導体と言えばこれら素子そのものを指すことが一般的です。
★バンドギャップについての詳しい解説はこちら
➁ 半導体の材料
半導体材料に最も一般的なのは、シリコンです。
元素記号はSiですね。シリコンは単体の原子で構成されている4価元素で、4つの価電子を持ちます。
この単体の半導体は真性半導体(intrinsic semiconductor)と呼ぶため、i型半導体などと表記することもあります。
しかしながらこの電子はシリコン原子と共有し合い、お互いの原子が固く結びついている状態です。
これを共有結合と呼び、強固な結晶を構成しています。
このシリコンに強いエネルギーを照射しても、電流はほとんど流れません。
なお、シリコンを使用する理由は様々ですが、一般的に豊富で手に入れやすいから。
不純物を取り除きやすく、容易に純度を高められるから。
LSIやICなど、集積化のために加工がしやすいから、などが挙げられますが、近年では新しい半導体材料として、ダイヤモンドも注目されています。
ではこの半導体を、どのようにして電流が流れ、電子回路などで使用できるように調整するのでしょうか。
それは、「価電子の異なる不純物」を少しだけ加えることです。
そして、この不純物こそが、半導体の仕組みを構成する要素となります。
➂ 半導体の仕組み
半導体の仕組みとはすなわちどのように半導体に電流が流れるか、です。
これには二通りの半導体が必要になります。
一つ目は、n型半導体。nはnegativeのイニシャルです。
これはリンやヒ素など、価電子が一つ多い5価元素を少量混ぜたものです。
共有結合のためにはシリコンと同等の4つの価電子が必要ですが、5価元素を混合すると電子が一個余ってしまっている状態ですね。
この余った電子も拘束されてはいるのですが非常に弱く、少しのエネルギーを与えてあげるだけで伝導電子になり、結晶中を動き回る自由電子となります。
この自由電子が電流の運び手(キャリア)になる半導体がn型半導体です。
電圧を印加すると(外部からエネルギーを与えると)余っている自由電子が移動し、n型半導体に電流が流れるようになる、という仕組みです。
もう一つは、p型半導体。pはpositiveのイニシャルです。
これはホウ素やガリウムなど、価電子が一つ少ない3価元素を少量混ぜたものです。
共有結合のためにはシリコンと同等の4つの価電子が必要ですが一個足りないため、電子分の孔がぽっかり空いた状態になります。
この状態を正孔(ホール)と呼びます。
p型半導体では、この正孔こそが電流の運び手(キャリア)です。
なぜなら孔ができたことによって、電圧が印加されると自由電子がその空席を埋めようと移動します。
すると、その移動した自由電子が元居たところに孔ができますね。この流れが続々と起こることで正孔が自由電子とは反対向きに移動する、つまり電圧が印加されている方向へと流れているように見え、結果として電流が流れている状態になるのです。
★n型半導体とp型半導体についての詳しい解説はこちら
➃ 半導体のpn接合
現在、半導体素子として広く用いられているダイオードやトランジスタのほとんどは、p型半導体とn型半導体を接続して用いています。
p型半導体とn型半導体を接合させると、それぞれがキャリアを担っていた正孔・自由電子が結合することで打ち消し合い、接合面で空乏層ができます。
p型半導体の方向から電圧印加すれば、接合していない部分のn型半導体の自由電子が空乏層側に移動し、かつp型半導体の方も空乏層側に移動しているように見えるため、電流が流れます。
しかしながらn型半導体側から電圧印加すると、p型半導体の正孔もn型半導体の自由電子もそれぞれが逆向きに移動してしまうため、電流は流れません。
電流が流れる方向を順方向、流れない方向を逆方向と呼び、それぞれの電圧のかけかたを順方向バイアス、逆方向バイアスと言います。
そして逆バイアスにするとむしろ空乏層の幅は広がってしまいます。
これを利用したのがダイオードです。
一定方向にしか電流を流さず、逆方向バイアスでは機能を発揮しないため、交流電圧を直流電圧にする整流などに用いられます。
また、pnpまたはnpnと三つに並べて接合させた半導体がトランジスタです。
真ん中に位置する半導体は、きわめて薄く設計されています。
どちらもp型半導体・n型半導体の接合面に空乏層ができているため、p型半導体の方向から電圧を印加しても電流は流れません。
しかしながらトランジスタには真ん中に設置された半導体から端子が出ています。
この端子(ゲート)に電圧を印加すると自由電子に勢いがつきます。
真ん中の半導体は薄いため、勢いのついた自由電子はここにつかまらずに通り抜けて移動します。
結果として、電流が流れるようになる、というわけです。
なお、勢いのついた電子の値はとても大きくなるため、出力電流もそれに比例して大きくなり、結果として入力信号よりも増幅させることが可能となります。
★ダイオードについての詳しい解説はこちら
★トランジスタについての詳しい解説はこちら
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