電気回路を学び始めた方は、いろいろな決まり事や記号を覚える必要があり、それを高い壁のように感じる場合があります。
複雑な回路図を理解したり書いたりできるのだろうかと不安になる方もいるでしょう。
ここでは、そもそも回路図とは何か、利用目的やメリットを解説します。
さらに、回路図の見方や書き方を説明した後、基本的な回路記号をピックアップして紹介します。
目次
1. 回路図とは何か?回路図の利用目的を解説
回路図とは、電気回路や空気圧機器、油圧機器などの回路を記載する図を指します。
例えば、電気回路図は、電源・スイッチ・電源接続・ワイヤー接続などで構成されます。
回路図の書き方は、日本産業規格として定められたJIS規格の他、国際規格であるIEC規格で決められています。
回路図を作成する目的は、他者とスムーズな情報共有を行えるようにすることです。
実際の現場では、ほとんどの場合、設計者と制作を行う作業者は分かれています。
にもかかわらず、特に、電気関係の仕事は、誤って作業すると感電や漏電の恐れがあるという危険なものです。
そのため、作業に携わるすべての人が、設計者が意図している情報を理解し、共有する必要があります。
言葉や文字だけではそれらの情報を正確に伝えるのが難しいため、回路図を作成します。
実際の製品や現場で使用される回路図は、電気回路図を習い始めた皆さんが扱っているものに比べてはるかに複雑ですが、決まり事や記号の意味さえ知っていれば誰でも理解できる「回路図」は、必須と言える存在なのです。
回路図があることで他者のチェックが可能になり、ヒューマンエラー防止にもつながります。
完璧な回路図を書くことはベテランの設計者であっても難しいため、実務では設計者以外の他者がチェックする体制が組まれています。
回路図を早めに作成し、他者がチェックする時間を十分確保すれば、それだけ完成度の高いものができあがるでしょう。
また、回路図があれば、作業工程の組み立てや、どの時点でどの作業をすべきかといった計画も立てやすくなるため、プロジェクトをスムーズに進めることができます。
回路図に基づいて作成される製品や構築物の中には、検査や顧客への発送など、作成以外のさまざまな工程が発生するものがあります。
回路図を作成しておけば、作業をスケジュール化して遅延なく進めることができ、納期厳守につながるでしょう。
保守やメンテナンスも、回路図があった方が格段に行ないやすくなります。
2. 回路図の見方や回路記号の意味
回路図は、誰が見てもわかりやすいよう最低限守るべきルールが決められています。
例えば、電気の流れは左から右に向けて書きます。また、電圧は高い方を上に書き、低い方を下に記載します。
同じ線でつながっている部分はすべて同じ電圧です。なお、線は直線で書くことがルールになっています。
線の曲がり角は直角とし、曲がり角の部分に部品などの記載はできません。
複雑な回路図になればなるほど線が入り組み交差することがありますが、線が接続されている部分には点を打ちます。
そして、同じラベルがつけられたものは回路図の上でどれほど離れていてもつながっています。
次に電子回路図に使用される回路記号を解説します。
文中では回路記号の意味や使い方をメインに記載します。
併せて回路記号の形状を確認し、用途・意味と記号をセットで覚えると回路図を書く助けになるでしょう。
回路記号(電気用図記号)は長らくJIS C 0301が使用されていましたがJIS C 0617【電気用図記号】として改定されました。 まだ旧記号で記載されている参考書もある場合もふまえ、旧JIS記号も参考にみていきましょう。
JISとは日本産業規格のことでJapanese Industrial Standardsの略称です。産業製品に関する規格などが定められた日本の国家規格です。
#コンデンサ
コンデンサは電気の蓄積や放出に使われる電子部品です。
コンデンサには電極のプラス・マイナスが決まっている有極性のものと、電極の極性がない無極性のものがあります。
#コイル
コイルは導線をらせん状に巻いたもので、回路記号も同様であるため、初心者にとってはわかりやすいかもしれません。
コイルは必要な信号と不必要な信号を分けるフィルタのような働きをしたり、電圧を安定させたりします。
#ダイオード
ダイオードは電気の流れを一方方向にする電子部品です。
逆流を防いだり電圧制御に有効です。
照明にも使われるLEDは発光ダイオードです。
一方方向に電流を流し、逆流させないための電子部品ですが、動作時に生じた余分なエネルギーが光に変換され発光します。
なお、ダイオードとLEDは素子の構造が同じであるため、回路記号も似通っています。
#トランジスタ
トランジスタは電気信号を増幅する作用や電気信号のON・OFFを切り替えるスイッチ的な役割を果たします。
トランジスタはNPNとPNPに分かれており、電荷の正負と電流の流れ方が異なります。
NPNとPNPの回路記号の形は似ているため、区別して覚えておくと良いでしょう。
トランジスタの一種にFETがあります。
トランジスタは電気信号の制御を電流で行なうのに対し、FETは電圧でコントロールします。
FETは通過する電極の違いにより、NチャンネルとPチャンネルに分かれています。
#電源
電源は、乾電池のように電圧と電流の向きが変化しない直流電源と、コンセントのように電圧と電流の向きや大きさが周期的に変化する交流電源があります。
直流電源と交流電源は同じ電源ですが、回路記号は大きく異なっているのが特徴です。
#配線
配線にはいろいろな種類があり、それに伴って回路記号も細分化されています。
例えば、電源への接続は結合部分に点を打ったり矢印で記載したりします。
回路動作の基準となる電位を示すグランドと大地に接するアースでは回路記号が異なるため、注意が必要です。
また、グランドにはいくつもの種類があり、回路記号も種類に応じて分かれています。
#信号線
電気回路で使われる配線には信号線もあります。
エネルギーを送る電源線とは異なり、信号線は情報を電気信号として送ります。
信号線には入力側と出力側があり、左から入力・右から出力となるよう記載するのが基本です。
なお、配線を書く際には注意と配慮が求められます。
配線は接続しているか未接続であるかを明確に記載する必要があります。
なお、接続と未接続の違いは中心に点があるかないかだけになるため、分かりにくいのが難点です。
接続の有無が明確になるよう、未接続部分は線をまたぐように丸みをつけて記載する方が親切です。
#ヒューズ
特殊な用途に用いる回路記号もあります。
例えば、外部からの力を受けて機械的に電気信号の切り替えを行うスイッチや、電気回路に過大な電流が流れた際、発生した熱で自らを溶かし回路全体の保護につなげるヒューズは有名です。
#その他
その他に、ツェナーダイオード・トランス・モータ・IC・オペアンプなどがありますが、必要に応じて覚えていくと良いでしょう。
3. 回路図の読み方の解説動画
回路図の読み方について、回路記号を含め、とてもわかりやすく解説されている動画をご紹介します。
回路記号は多く存在しますが、主要な回路図記号は限られているということも抑えておきたいポイントです。
【引用】:https://youtu.be/1uqHz_c5vfc?si=63PnIdrVxS22AFjx 「今日から始める電子工作」
4. 回路図と回路記号のまとめ
回路図はJIS規格あるいはIEC規格で決められた回路記号を使い、ルールに基づいて記載する必要があります。
そうすることで他者との共有が可能になり、設計通りに作成できるほか保守・メンテナンスを行うのに役立ちます。
電気回路に使用する回路記号は抵抗器や電極、スイッチなど一般的な生活をしている中では耳慣れないものが多くありますが、それぞれのパーツの意味や役割を理解しながら、図と記号をセットで覚えていくことをおすすめします。