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GaNデバイスの性能を最大限に引き出す超高速ゲートドライバIC「BD2311NVX-LB」を開発 -ROHM

ROHMのゲートドライバIC_BD2311NVX-LB

<要旨>

ROHMのBD2311NVX-LB

ローム株式会社は、超高速でGaNデバイスを駆動するゲートドライバIC「BD2311NVX-LB」を開発しました。

新製品は、ナノ秒(ns)オーダーのゲート駆動スピードを実現し、GaNデバイスを高速にスイッチングさせることが可能です。

この特性は、GaNデバイスを熟知し、ゲートドライバICの性能を追求できたからこそ実現できた特性であり、最小ゲート入力パルス幅1.25ナノ秒での高速スイッチングにより、アプリケーションの小型化、省エネ化、高性能化に貢献します。

また、独自の駆動方式を採用することで、これまで非常に難しいとされていたゲート入力波形のオーバーシュート*1を抑制する機能も搭載しており、過電圧入力によるGaNデバイスの故障を防ぎ、ロームのEcoGaN™と組み合わせて構成することで、セット設計の容易化を実現するとともに、アプリケーションの信頼性向上にも寄与します。

さらに、アプリケーションによるさまざまな要求に対しても、ゲート抵抗を調整することで、最適なGaNデバイスを選定することが可能です。

★新製品プレゼン”Featured Products”

ROHMのBD2311NVX-LB最小ゲート入力パルス幅特性
ROHMのゲート電圧波系比較

台湾国立中央大学 電気工学科 Yue-ming Hsin 教授

GaNデバイスは、シリコンよりも、高周波領域での性能が発揮できる素材として期待されています。パワースイッチングアプリケーション、特にDC-DCおよびAC-DCコンバータにおいては、GaNデバイスの持つ、高周波特性による電力密度の向上から、回路の小型化、省エネ化に貢献することが可能です。

一方、GaNデバイスの性能を発揮させるためには、GaN HEMT*2の低い駆動電圧を考慮しながら、高速スイッチングを実現するゲートドライバICが不可欠です。

そこで、ドライバ駆動技術の作りこみにより、GaNデバイスの性能最大化を目指しているロームに注目し、一緒に研究しているYu-Chen Liu教授(国立台北科技大学)とChin Hsia教授(長庚大学)が、ロームのゲートドライバIC、BD2311NVXをテストしました。

その結果、BD2311NVXは、他のドライバICと比較して、降圧および昇圧コンバータの1MHzスイッチング周波数での立ち上がり時間が短く、スイッチングノイズが小さいことを確認しました。

このドライバICの立ち上がり時間の短縮により、GaNの利点であるスイッチング損失の低減を最大限引き出すことに貢献するでしょう。また、電源やドライバなどにおけるアナログ技術にも強みを持つロームのGaNソリューションに期待しています。

<背景>

近年、IoT機器の増加で需要が拡大しているサーバーシステムなどにおいて、電源部の電力変換効率向上や装置の小型化が重要な社会課題となっており、パワーデバイスのさらなる進化が求められています。

また、自動運転のみならず産業機器や社会インフラ監視用途などに採用されているLiDAR*3では、さらなる認識精度向上のために高速パルスのレーザー光照射が必要となります。

このようなアプリケーションでは、高速スイッチングデバイスの使用が必須となるため、それを可能にするGaNデバイスのリリースに併せて、その性能を最大限に引き出す超高速駆動のゲートドライバICを開発しました。さらに、より小型のWLCSP*4商品も随時リリースし小型化に貢献します。

<LiDARでの採用イメージ>

ROHMのLiDARでの採用イメージ_ROHM

<製品ラインアップ>

品番 入力側
電源電圧
[V]
出力電流
(Typ.)
[A]
遅延時間(Typ.)[ns] 最小入力
パルス幅
(Typ.)
[ns]
動作温度
[℃]
パッケージ
[mm]
車載対応
AEC-Q100
ターンオン ターンオフ
NEW
BD2311NVX-LB
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データシート
4.5

5.5
+7/-5 0.65 0.70 1.25 -40

+125
ROHMのSSON06RX2020
SSON06RX2020
(2.0×2.0×Max. 0.6)
☆BD2311NVX-C YES

☆: 開発中

<アプリケーション例>

  • LiDAR(産業機器やインフラ監視用途など)駆動回路
  • データセンターや基地局など48V入力降圧コンバータ回路
  • ポータブル機器向けワイヤレス給電回路
  • D級オーディオアンプ など
ROHMのBD2311NVX-LBのアプリケーション例

<リファレンスデザイン情報>

新製品およびロームの150V GaN「EcoGaN™」、高出力レーザーダイオードを搭載したLiDAR向けリファレンスデザインをロームWebにて公開しています。
設計参照することで、開発工数削減が可能です。

リファレンスデザイン品番:
REFLD002-1(矩形波型回路)
REFLD002-2(共振型回路)
 ROHMのLiDAR向けリファレンスデザイン

<EcoGaN™とは>

EcoGaN™は、GaNの性能を最大限活かすことで、アプリケーションの低消費電力化と周辺部品の小型化、設計工数と部品点数の削減を同時に目指した省エネ・小型化に貢献するロームのGaNデバイスです。

EcoGanLOGO

・EcoGaN™は、ローム株式会社の商標または登録商標です。

<用語説明>

*1)オーバーシュート
スイッチングON/OFFする際に、規定を超える電圧値が一瞬発生すること。
*2)GaN HEMT
GaN(ガリウムナイトライド:窒化ガリウム)とは、次世代パワーデバイスに用いられる化合物半導体材料のこと。一般的な半導体材料であるSi(シリコン)に対して物性に優れており、高周波特性を活かし採用が始まっている。 HEMTとは、High Electron Mobility Transistor(高電子移動度トランジスタ)の単語の頭文字を取った略称。
*3)LiDAR
LiDARとは、Light Detection And Ranging(光による検知と測距)の略称で、近赤外光や可視光、紫外線を使って対象物に光を照射し、その反射光を光センサーでとらえ距離を測定するリモートセンシング(離れた位置からセンサーを使って感知する)方式。
*4)WLCSP(Wafer Level Chip Scale Package)
ウエハの状態で端子の形成や配線などを行い、その後個片化した超小型パッケージ。ウエハを個片化してから樹脂でモールドして端子などを形成する一般的なパッケージと異なり、パッケージを内部の半導体チップと同じ大きさにできるため、パッケージの小型化が可能となる。

<Yue-ming Hsin 教授 プロフィール>

1965年台湾台南生まれ。国立中央大学で理学士号、国立交通大学で修士号、カリフォルニア大学サンディエゴ校で博士号を取得(電気工学専攻)。
現在は台湾の国立中央大学(NCU)電気工学科教授、Applied Physics Express(APEX)及びJapanese Journal of Applied Physics(JJAP)の海外編集者を務める。
研究対象は、ヘテロ構造およびワイドバンドギャップ半導体に基づくデバイスと回路の開発。

経歴

  • 1997年 ニュージャージー州ウォーレンのアナディジクス社(現在のCoherent Corp. )に入社。無線および光ファイバー通信用のGaAs MESFETおよびpHEMTを開発。
  • 1998年 国立中央大学電気工学部に入省。
  • 2004年~2005年 イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校客員研究員。
  • 2016年~2017年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)客員教授。
  • 2019年~2022年 国立中央大学(NCU)光学研究センター所長。

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