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ダイオードの記号と基本回路

ダイオードの記号について

一般的に電流を一方向にのみ流すことができる素子はPN接合の有無にかかわらずダイオードと呼ばれ、似たような記号で表されます。
PN接合のP側をアノード、N側をカソードと呼びます。アノードはAと略記し、カソードはKと略記することが多いです。
回路記号は、P側を底辺として倒した二等辺三角形を描き、その頂点側をN側として縦線を1本引いたもので表現します。印刷物では三角形を塗りつぶしたものが多くありますが、三角形は塗りつぶさなくても同じものを表します。また、縦線も太線で印刷されることも多くありますが、細い線で描いても問題ありません。
半導体素子としてのダイオードには多くの種類があり、その構造も多岐にわたります。また、新たな素子も開発され続けています。これらの素子の記号も、規格化されたもの、習慣的に使われるようになったものなど多数あるため、全てを紹介することはできません。ここでは良く使用されるもののみを紹介します。なお、構造よりも機能に重点を置いて記号が決められているので、構造が全く異なっていても同じような機能や用途の素子は同じ記号で表されることがあります。
半導体を表す記号ではPN接合をPからNへの矢印で表すことが多いです。バイポーラトランジスタのように複数のPN接合がある場合は、そのうち1つを矢印で表して端子の識別に使用します。バイポーラトランジスタではエミッタを矢印で表します。
この矢印も印刷物では塗りつぶしたものが使用されることが多いですが、手書きでは塗りつぶさない矢印でも問題ありません。

 

図1 いろいろなダイオード(その1)

図1 いろいろなダイオード(その1)

図1(a)はツェナーダイオードに代表される定電圧ダイオードを表す記号です。電圧によりツェナー効果とアバランシュ効果を利用したものに分かれますが、いずれも同じ記号を使用します。カソードを右側として、カソードを表す線がZの形になるように描きます。印刷物ではこのZの上辺、下辺が外側に開いた記号(図2(a))も使用されます。
図1(b)はショットキーバリアダイオードを表します。このダイオードはショットキー障壁効果を利用したダイオードでPN接合はありません。カソードを右側としてカソードを表す線がSになるように描きます。Sであることを強調した図2(b)のような記号も使用されます
図1(c)はバリキャップなどの可変容量ダイオードを表す記号で、カソードを表す線を2本にします。バリキャップはバラクタと呼ばれることもあります。

 

図2 いろいろなダイオード(その2)

図2 いろいろなダイオード(その2)

図2(c)は江崎ダイオードまたはトンネルダイオードを表す記号です。量子トンネル効果を利用したダイオードで、順方向の「負性抵抗」が現れる電圧領域を利用します。1957年に江崎玲於奈さんが発明しました。江崎さんは1973年にトンネル効果の発見によりブライアン・ジョセフソンと共にノーベル物理学賞を受賞しています。

 

図3 いろいろなダイオード(その3)

図3 いろいろなダイオード(その3)

図3(a)はLEDに代表される光の出るダイオードを表します。レーザダイオードも同じ記号を使用しますが、LEDと区別するためにLDなどと別記されることが多いです。光の出る様子を2本の矢印で表しています。この矢印の数は1本であることもあります。
図3(b)はLEDやLEとは逆に、光が入ると電流が流れるフォトダイオードを表します。光の入る様子を2本の矢印で表します。光通信で受光素子として用いられるAPD(Avalanche Photodiode)は、アバランシェ増倍と呼ばれる現象を利用して受光感度を上昇させたダイオードです。普通のフォトダイオードとは異なる構造ですが、記号としては同じものが使用されています。LEDやLDの区別と同様にAPDと別記されることが多いです。
図3(c)は流れる電流が定電流となる定電流ダイオード(CRD)を表します。アノードからカソードに流れる電流が一定になるダイオードで、内部構造は接合型FETのゲートとソースを接続したもので、接合型FETのゲート・ソース間電圧が0の時のドレイン電流が、ドレイン・ソース間電圧が変わってもほぼ一定であるという性質を利用したものです。アノード側の電位が高い状態で使用するのが基本で、逆方向に電圧をかけると短絡状態(ショート)になることもあるので注意が必要です。三角形ではなく、塗りつぶさない丸で表します。