コンデンサは電子回路や電源の基本となる電子部品です。
冷蔵庫、洗濯機などの家電製品から始まりパソコンに携帯電話、カメラなどの精密機器・・・私たちの身の回りの、あらゆる電子機器に何十・何百個と搭載され、正常な動作を実現してくれています。
そんな重要なコンデンサとはいったいどのようなものなのでしょうか。
この記事では、コンデンサの性質や機能、役割などを解説いたします。
目次
1.コンデンサとは?
コンデンサはあらゆる電子部品の中でも、とりわけ回路の基本となる素子です。
回路内で電気を蓄えたりそれを放電したりすることが大きな特徴です。
英語でキャパシタと呼ばれますが、「容量」が語源となっています。ちなみにコンデンサはドイツ語で、日本では蓄電器と長らく呼ばれてきました。
電子回路や電源回路の他、電源そのものとしても用いられることがあります。
電気を蓄えたり放電したりする部品のことを「コンデンサ」や「キャパシタ」と呼びますが、その使われ方が微妙に異なる場合があります。
キャパシタは主に大容量のものを指し、電気二重層キャパシタ(EDLC)やリチウムイオンキャパシタ(LIC)などが該当します。
一方、コンデンサは小容量のものを指し、セラミックコンデンサや電解コンデンサなどがこれに該当します。
電子回路や電源回路で使われることが多く、静電容量はμF(マイクロファラド)、pF(ピコファラド)などの小さな単位で表されます。
2.コンデンサの構造
コンデンサは、二つの金属箔や金属板が絶縁体を挟み込んだ状態が基本構造となります。
絶縁体とは、電気を通さない物質。
電気が流れるということは+と-の電荷が移動することを指しますが、絶縁体があるため電荷が動くことができません。
そのため電荷は片方の電極板に貯まり、もう片方の電極板には反対の電荷が貯まります。このような仕組みでコンデンサは電荷を2枚の電極板の間に貯められるようになっています。
コンデンサはこの絶縁体の種類によって、性質や機能が異なってきます。
また、この種類や用途によって構造にも様々な工夫がなされており、絶縁体を挟んだ金属をくるくる巻いてケースに封入したり、絶縁体と金属を交互に多層積層し、折り重なるような形状にしたコンデンサなどがあります。
では、電気を通さない絶縁体が、回路で一体どのように機能するのでしょうか。
3.コンデンサの性質と機能
コンデンサの性質は、三つに分けられます。
「電荷を貯める」「直流電流は通さず交流電流を通す」「周波数が高い交流ほど通しやすい」です。
それぞれの性質と、機能を解説いたします。
① 電荷を貯める
電気の流れとは、電荷の移動です。
絶縁体は電気を通さないので移動させることはできませんが、向かい合った二枚の金属は導体。電気を通します。
金属に電圧を加えると、金属に電荷が流れ込みます。
このとき、プラスとマイナスの電荷は互いに引き合いますが、絶縁体があるため流れ出ることはありません。
すると、やがては金属板に電荷が流れ込めなくなります。
しかしながらプラスとマイナスで電荷が引き合っているため、金属板に残ります。
つまり、電荷を蓄えることを可能にしているのです。「充電」のような要領ですね。
この、金属板に電荷を蓄えることのできる容量を、静電容量と言い単位はF(ファラッド)で表します。
コンデンサが同じ物質の場合、金属板の面積が大きく、二枚間の距離が短いほど大きな容量を持つこととなります。
また、誘電率の高い絶縁体(絶縁体は静電界を通すため誘電体とも呼ばれます)を挟むことでも、静電容量を大きくすることが可能です。
では、蓄えられた電荷はいつ放電されるのでしょうか。
電荷は水と一緒で、高い方から低い方へとしか流れません。
電圧が高い方から低い方へ向かって移動する、ということになりますが、電荷が溜まると電圧が生じ、やがて最初に金属板に加えた電圧の高さと同一となります。
電圧を持たない電気回路に繋ぐと蓄積した電荷がそちらに流れ込み、再び電圧を加えられるまで放電するのです。
② 直流電流は通さず交流電流を通す
コンデンサは絶縁体を挟み込んでいるため、電気を通しません。
その性質ゆえ、直流電流を加えても金属板は電荷を蓄えることができますが、貯蓄のみ。
一方で、交流電流は通すという性質をも有します。
交流は、電流の向きが一定ではなく、周期的に変化する電流を指します。コンデンサに交流を流すと、電流の向きにならって充電と放電を繰り返します。
また、向きだけでなく流れる電荷のプラスとマイナスも常に変化するため、二枚の金属板の電界方向も切り替わり、絶縁体で電荷移動(電流)が起きているわけではないにもかかわらず、あたかも交流電流が流れているような働きを見せます。
この「絶縁体を交流電流が流れているように見える」ことを交流とみなし、変位電流という呼び方をします。
③ 周波数が高い交流ほど通しやすい
コンデンサに交流電流を流すと充電・放電を繰り返すとお話いたしました。
電源では交流が発生し続けているわけですが、コンデンサが流す電流と打ち消しあう作用を見せます。
つまり電流が流れづらくなる作用をも見せるという、一種の「抵抗」の働きをしますが、これを容量性リアクタンスと呼びます。
容量性リアクタンスは周波数が高ければ高いほどその働きを弱めるという性質があります。
そのため、容量性リアクタンスとみなされるコンデンサは、周波数を調整することによって通す交流を選択することができるのです。
ちなみに静電容量が大きいほど、電流は通しやすいという性質も持ち合わせています。
4.コンデンサの役割
コンデンサの性質・機能は、回路の中でどのような役割を果たしているのでしょうか。
① 貯めた電荷を必要な時に放出する
コンデンサの真髄は電荷を貯めたり放電したりできること。
必要な時に蓄えた電気を放出し高電圧化、発光することが可能となりました。
カメラのストロボや非常用電源などが良い例でしょう。
② 回路内の電圧を一定にする
電源部の平滑回路でも電荷を貯める役割がとても重宝されています。
平滑回路とは、電源から流された交流を安定した直流電流へと変換する回路のこと。
コンセントからは交流電流が流れてきますが、電子回路のほとんどの駆動力は直流電流であることをご存知でしょうか。
そのため、交流から直流へ変換しなくてはなりません。
交流電流から直流に変換する時は整流回路を通過させますが、それだけではまだ不定期な変動を伴った電流(脈流)です。
つまり、回路に一定の電圧が加えられていない状態なのです。
そこでコンデンサに電圧が高ければ充電、逆に低ければ放電を繰り返してもらうことで電圧を一定に保つことができるのです。
また、整流回路の出口にコンデンサを並列に接続しておくと、蓄えられた電荷が脈動の切れ目で放電・次のコンデンサにて充電と、電流が途切れることがありません。
ACアダプタなどで利用されています。
③ ノイズを取り除くカップリングとデカップリング
直流電流を通さず、かつ周波数によって交流電流の通しやすさが異なるということは、電子回路に送られてくる様々な信号を取捨選択できる、ということです。
「フィルタ」という言い方をしますが、それぞれの電子回路の信号に合わせた働きをしたり、信号の中のノイズを取り除く役割を果たしてくれるのです。
よく応用される電子機器がカップリングコンデンサです。
電子回路間の独立と接合で用いられ、直流は遮り、信号としての交流電流だけを流すことができるのです。
電子回路の信号は微弱な交流電流ですので、それを上手に導いてくれるのですね。
オーディオ機器のカップリングでよく用いられ、コンデンサの種類が音質を左右する、などと言われることもあります。
そして、ちょっとまぎらわしいのがデカップリングコンデンサです。
バイパスコンデンサとか、パスコンとも呼ばれますが、「周波数の高い交流電流をよく通す」性質を利用したもの。
電流から流れてくる不要なノイズをバイパス(回避)してくれる役割を果たします。
高周波数のノイズだけを選りすぐり、グラウンドに出してくれるのです。
電子回路に流れる電流にノイズがあると、電圧が変動し誤作動などの原因となります。
携帯電話やノートパソコンといったモバイル機器ではより顕著な影響が出てしまいます。
そこでノイズを除去し、安定した電圧を供給してくれるという仕組みです。
カップリングが連結、デカップリングが連結除去と言うわけです。
5.コンデンサの種類
前述のように、挟み込む絶縁体によってコンデンサは性質を変えることができます。また、金属の形状によっても性質が異なり、それぞれの用途へと広がっていきます。
代表的なコンデンサの種類をご紹介いたします。
種類 |
容量値 |
極性の |
特性 |
主な使用目的 |
---|---|---|---|---|
電解コンデンサ |
高い |
有り |
大 |
大容量、低周波のアプリケーション |
フィルムコンデンサ |
低い |
無し |
小 |
高周波や高精度アプリケーション |
セラミックコンデンサ |
低い |
無し |
大 |
高周波アプリケーションやデジタル回路 |
可変コンデンサ |
可変 |
無し |
小 |
チューニング回路や周波数調整回路 |
① 電解コンデンサ
二枚の金属表面に化学反応を起こすことで酸化させ絶縁体の膜を形成させたコンデンサを指し、静電容量が大きい特徴があります。
電解コンデンサは片方の金属にだけ表面加工されることが多く、その場合は絶縁体ではなく極性を持つため、過電圧や逆極性で使用すると破裂したり発熱する危険性があり注意が必要です。
静電容量が大きいことが特徴ですが、極性を有したものは電圧をかけすぎたりプラスマイナス逆向きに電気を流されると破裂したり発熱する危険性があるため、注意が必要です。
使用する金属によって特性が異なります。
例えばアルミ電解コンデンサは、金属箔としてアルミを用いたコンデンサですが、大容量コンデンサの長らく主流となっています。周波数や温度変化に弱く、漏れ電流や誘電体膜が破壊されてしまうなど注意すべきところもあります。
また、タンタル電解コンデンサはアルミの代わりにタンタルと呼ばれる稀少金属を用いたコンデンサです。小型化が容易で、周波数変化や温度変化への耐性に優れていますが、価格は高めになります。
② フィルムコンデンサ
絶縁体にポリエステルやスチロールなどのプラスティックフィルムを用いたコンデンサを指します。
用いるフィルムの種類によってコンデンサの性能に違いが現れますが、温度変化に容量を左右されず、また高精度であることが特徴です。
電解コンデンサと異なり、極性はありません。
絶縁性が高く成形が容易、さらに安価ではあるものの熱に弱いスチロールコンデンサ。
安価で扱いやすいけれども、絶縁性がやや弱いポリエステルコンデンサ。高精度で熱にも強いけれども、価格が高くなるポリプロピレンコンデンサなどに分類されます。
③ セラミックコンデンサ
絶縁体にセラミックを利用したコンデンサを指します。
セラミックとは陶磁器のことですが、酸化チタンなど金属酸化物を焼き固めた物が用いられます。
小型で熱に強く高精度という利点から、携帯電話の無線回路、デジタル回路などに用いられています。
セラミックコンデンサは形状と特性によってカテゴリが分かれ、円板型と積層型が存在します。
積層型はセラミックと金属を多層にしているため表面積が大きくなり、静電容量もあわせて高くなります。
そして特性においては、温度補償型コンデンサと高誘電率型コンデンサに分かれ、前者は静電容量の温度による変化が比較的少ないもの、後者は温度による変化は大きい一方、容量を大きく設定できるものをいいます。
上記の通り、セラミックの種類によって誘電率が異なり、温度変化による耐性や容量が異なってきます。
④ 可変コンデンサ
ここまでご紹介した電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、セラミックコンデンサは静電容量の値が一定である固定コンデンサです。
対して、用途に合わせて静電容量を変化させることのできるコンデンサを可変コンデンサと呼びます。
英語でバリアブルコンデンサと称すため、バリコンという言い方もします。
構造としては、絶縁体を二枚の金属が挟み込むところは変わりませんが、この金属がツマミなどでずらせるように設計されており、表面積が変化、つまり静電容量を変えることができる仕様となっているのです。
ちなみに可変コンデンサの中で、初期設定時にドライバなどを用いて調整し、後は固定コンデンサとして用いるものもあります。これを、トリマコンデンサや半固定コンデンサと言った呼び方をします。