※2025年4月15日現在 2.0mm×2.0mmのパッケージサイズでローム調べ

<要旨>

ローム株式会社(本社:京都市)は、2.0mm×2.0mmのパッケージサイズで業界トップとなるオン抵抗*1 2.0mΩ(Typ.)のNch 30V耐圧コモン・ソース構成のMOSFET*2「AW2K21」を開発しました。
新製品は、ロームの独自構造でセルの集積度を向上させており、チップ面積あたりのオン抵抗を低減。また、1つの素子に2つのMOSFETを内蔵する構造を作り込んでおり、受給電回路で求められる双方向保護用途などにも新製品1つで対応可能です。
また新製品はこの独自構造により、一般的な縦型トレンチMOS構造では裏面に配置されるドレイン端子をデバイス表面に配置することができ、WLCSP*3を採用しました。
WLCSPは、部品内部に占めるチップ面積の割合を大きくできるため、新製品は部品面積当たりのオン抵抗も低減しています。
これらのオン抵抗の低減は電力損失低減に加え、大電流化にも寄与するため、新製品は超小型ながら大電力の急速充電に対応できます。
例えば、小型機器の受給電回路において比較すると、一般品は3.3mm×3.3mmの製品が2つ必要となるのに対して、新製品は2.0mm×2.0mmの1つで対応でき、約81%の部品面積削減と約33%の低オン抵抗化が可能となります。
なお一般的にオン抵抗が低いとされるGaN HEMT*4の相当サイズ品と比較しても、新製品は約50%の低オン抵抗化を実現しています。
このように、低オン抵抗かつ超小型の「AW2K21」は、アプリケーションの低消費電力化と省スペース化に貢献します。
さらに新製品は、ロードスイッチ用途の単方向保護MOSFETとしても使用可能であり、この場合でも業界トップの低オン抵抗を実現しています。
ロームは、より小型な1.2mm×1.2mmの製品も開発を進めています。今後も省スペース化・高効率化を通じて、アプリケーションの小型化や省エネに貢献することで、持続可能な社会の実現を目指します。

<新製品プレゼン”Featured Products”>
<製品動画>
<背景>
近年、スマートフォンをはじめとする大容量バッテリーを搭載する小型機器において、充電時間の短縮を目的として、急速充電機能を搭載した機器が増加しています。
これらの機器においては、受給電が行われていないときに周辺ICなどへの逆流を防ぐための双方向の保護が必要です。
さらに急速充電では大電流で受給電するために、例えばスマートフォンメーカー各社ではMOSFETに対して、最大電流が20A、ブレークダウン電圧*5が28Vから30V、オン抵抗が5mΩ以下といった厳しいスペックを求めています。
しかし、この要求を一般品のMOSFETで満たすには、オン抵抗が低い大型のMOSFETが2つ必要であり、実装面積が大きくなるという課題がありました。
ロームは、この課題を解決するために、大電力の急速充電に対応できる超小型パッケージかつ低オン抵抗のMOSFET「AW2K21」を開発しました。
<製品主要特性>
<アプリケーション例>
・スマートフォン ・VR(Virtual Reality)ゴーグル ・小型プリンター
・タブレット ・ウェアラブル端末 ・液晶モニター
・ノートパソコン ・ポータブルゲーム機 ・ドローン
そのほか、急速充電機能を搭載する小型機器などに幅広く使用可能です。
<用語説明>
- *1) オン抵抗
-
MOSFETを動作(オン)している時のドレインとソース間の抵抗値のこと。
値が小さいほど、動作時のロス(電力の損失)が少なくなる。
- *2) MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistorの略)
-
金属-酸化物-半導体構造を持つ電界効果トランジスタ(FET)の一種で、最も一般的に使用されている。
基本的には「ゲート」「ドレイン」「ソース」と呼ばれる3つの端子で構成。制御用のゲートに電圧を印加することで、ドレインからソース間への電流が増える仕組みになっている。
Nch MOSFETは、ソースに対してプラスの電圧をゲートに印加することで導通状態になるタイプのMOSFET。
コモン・ソース構成のMOSFETは、2つのMOSFETの素子を内蔵し、それぞれのソース端子を共有している。
- *3) WLCSP(Wafer Level Chip Scale Package)
-
ウエハの状態で端子の形成や配線などを行い、その後チップ化した超小型パッケージ。
ウエハをチップ化してから樹脂でモールドして端子などを形成する一般的なパッケージと異なり、パッケージを内部の半導体チップと同じ大きさにできるため、パッケージの小型化が可能となる。
- *4) GaN HEMT
-
GaN(ガリウムナイトライド:窒化ガリウム)とは、次世代パワーデバイスに用いられる化合物半導体材料のこと。
一般的な半導体材料であるSi(シリコン)に対して物性に優れ、スイッチング速度が速く、高周波数で動作します。
HEMTとは、High Electron Mobility Transistor(高電子移動度トランジスタ)の単語の頭文字を取った略称。
- *5) ブレークダウン電圧
- MOSFETのドレインとソース間に印加できる最大電圧。この電圧を超えると絶縁破壊が発生し、デバイスの正常な動作が損なわれる。