時計やパソコン、スマートフォンなどといった、私たちにとって身近なデバイスに組み込まれる発振器(オシレーター)。
あまりにも身近ゆえ、いったい発振器とはどのようなもので、どんな種類があるのか実は知らない。
そんな方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、発振器について解説いたします。
1.発振器とは
発振器とは、ある定められた周波数で、電気的な振動を持続的に発生させるデバイスです。
この電気的振動は交流信号となります。
ある条件下で発振する受動素子等を用いた発振回路によって構成されており、一般的には直流電流を流すことで作動させることが可能です。
発振器はオシレーターなどと呼ばれることもあり、OSCと略されます。
発振器を用いることで周期的な信号を連続して得られるため、冒頭でも述べたようにパソコンやスマートフォンで重宝されます。
どういうことかと言うと、発振器によってクロック信号を得ることができます。
クロック信号というのは簡単に説明すると、複数の電子回路が信号を送受信する際の、タイミング合わせ的存在。
指揮者と言っても良いかもしれません。
近年デバイスが高性能化するにつれて様々な回路や信号を制御する必要が出てきました。
そこで信号の送受信をバラバラにせず、タイミングよく一斉に動作するためのタイミング合わせとして、クロック信号、ひいては発振器の存在が欠かせません。
このクロック信号が単位時間あたりに何回発振できるのかを表す数値をクロック周波数と呼び、単位はヘルツです。
クロック周波数が高ければ高いほど、1クロックに必要な時間は短くなり、性能が良いということを意味しています。
また発振器は、いわゆる電池式時計でも用いられます。
時計は一分・一秒をなるべく正確に制御するための機構を必要としています。
伝統的に時計には振り子の原理を応用した制御装置が備わってきましたが、発振器が時計に採用されるようになって以降、高周波の振動によって持続的に規則正しい信号を発信するため、より正確な一秒間に一回のパルス信号へと変換させる、という仕組みが採られてきました。
なお、ウォッチやクロックなどに用いられる発振器は高精度であるという点で水晶振動子が使われます。
そのため水晶振動子を用いた時計をクォーツ式時計などと称することがあります。
このように、様々なシーンで活躍する発振器の原理を簡単に解説すると、帰還型・弛張(しちょう)型とに分類されます。
帰還とはフィードバックのことで、文字通り出力を入力側に戻し、所望の出力を得る制御方式のことです。
帰還型発振器では出力を入力へとフィードバックすることで振動を発生させ、決まった周波数を発振させます。
マイクのハウリングなどが、帰還型発振器の例として挙げられるでしょう。
もう一つの弛張型とは、スイッチのオンオフによって制御し、断続的な電気信号を作り出す発振器です。
オンオフの様が弛む(ゆるむ)・張るといった意味でこのような名称が付けられています。
リレーなどを用いることで実現しています。
2.知っておきたい発振器~水晶発振器、MEMS発振器など~
これまで、様々な発振器が市場に流通してきました。
では、いったいどのような発振器が存在しているのでしょうか。
発振器は前述した帰還型・弛張型、あるいは発振される波形などでも分類することが可能ですが、ここでは代表的な発振器についてご紹介いたします。
最もよく流通している製品は、水晶発振器ではないでしょうか。
前項のクォーツ式時計でもご紹介したように、これは水晶振動子と発振回路によって構成されたデバイスです。
水晶は圧電体とも呼ばれております。
圧力を加えると電圧を発生させ、また電圧印加すると圧電体が変形し、振動を生じます。
前者を圧電効果、後者を逆圧電効果と呼び、1880年にピエール・キューリーとジャック・キュリー兄弟が発見しました。
この逆圧電効果において水晶は高速振動を得意とし、そのため精度が高く信頼性高い発振器として用いられます。
水晶は鉱物ですが、人工育成しやすいことも相まって、産業の塩などと称されることもあります。
水晶は温度変化に影響されやすいという特性を持ちますが、高性能機などでは温度補正回路を併載したものもラインナップされています。
なお、こういった受動素子を用いた発振回路は個体振動子発振回路と分類され、原理としては帰還型に当たります。
類似する素子にはセラミックが存在します。
セラミック発振器は水晶振動子に比べて安価で小型であるといった特徴を持ち、クロック信号源として様々なデバイスに搭載されています。
一方で水晶振動子にも課題はいくつかあります。
この水晶振動子の課題を補う振器として注目されているのが、MEMS発振器です。
MEMSはMicro Electro Mechanical Systemsのそれぞれの頭文字を採った略称で、微細加工技術などといった意味合いがあります。
ちなみに「メムス」と読み、マイクロマシンなどとも呼ばれます。
MEMSはセンサやモーター、アクチュエータ―、電子回路などといった要素を集積させた、超小型デバイスです。
「超小型」もそのはず、全長は数mm程度。
水晶は小型化が難しいと言われているため、MEMSの登場によってデバイスの小型軽量化は一気に進んだと言えるでしょう。
また衝撃や振動にも強く、消費電流の低減にも一役立つということで、今後さらなる市場でのシェア拡大が見込まれる発振器です。
これらの他ではコンデンサと抵抗で構成されるCR発振器やコイルとコンデンサで構成された自励発振器など多岐に渡って存在してきました。
3.まとめ
発振器についてご紹介いたしました。
発振器とはオシレーターとも呼ばれ、ある定められた周波数で、電気的な振動を持続的に発生させるデバイスであること。
こういった性質から、正確な時計やデジタルデバイスにおけるクロック信号などといった用途で重宝されていること。
代表的な発振器には水晶発振器やセラミック発振器、MEMS発振器などが挙げられることをお伝えできたでしょうか。
今後もまだまだ私たちの身近で活躍してくれる発振回路、覚えておきたい用語です。