EEPROMをご存知でしょうか。
車載機器等のデータ保持でとても主流なメモリとなっており、不揮発性であることに加えて、データの消去や書き込みが可能という特徴を持つデバイスです。
この記事では、EEPROMとはどのようなメモリなのかについて解説するとともに、その種類やよくあるお問合せ「フラッシュメモリとの違い」について解説致します。
1.EEPROMとは?
EEPROMとはElectrically Erasable Programmable Read-Only Memoryの略称で、直訳すると電気的に消去・プログラムが可能な不揮発性メモリです。
ちなみに不揮発性メモリとは、デバイスの電源を切ったとしてもデータを失わない記憶素子です。
写真や動画を保存したり、ソフトウェアのプログラミングを行ったりするうえで、絶対に欠かせない素子と言えますね。
ROMはRead Only Memory、すなわち読みだし専用メモリを指しますが、専用ライターを用いることでデータの書き込みが可能となったものをPROM(Programmable Read-Only Memory)と称します。
さらにこのPROMの中でも、Erasable―消去可能な―特性を持ったものをEPROMと呼んできました。
このEPROMも様々な種類が存在しますが、多くの場合でUV-EPROMを指し、紫外線を照射することでデータを消去し、改めてROMライターで書き込みを行えるものとなります。
しかしながらEEPROMは、紫外線を用いるような、そんな特別なデバイスなしにデータの消去が可能な素子。
Electricallyの名前通り、電圧印加を利用することでこの機能を実現しています。
E2PROMと表記されることもあり、読み方は「イーツーピーロム」だったり「ダブルイーピーロム」だったりと、様々です。
◆歴史
1970年代から本格的に開発が始まった半導体メモリ。
この時に製造されたEPROMですが、紫外線を使わなくては特性を発揮できない面の改善が早い段階から勧められ、わが国のT社を始めとした各国企業がこれに着手していきました。
この開発段階で既に電気的に消去・書き込み可能なROMは存在していましたが、データ保持時間や消去・書き込みサイクル,あるいは耐久性などで課題を有していたようです。
1978年にアメリカのI社に在籍していた、ジョージ・ペルロゴス氏率いるチームによって生み出されたIntel 2816が、市販化に成功したEEPROMと言われています。
◆原理
そんなEEPROMは、フローティングゲートMOSFETの性質を利用することで実現しています。
フローティングゲートMOSFETとはフラッシュメモリでも用いられる半導体で、酸化絶縁膜で挟まれたフローティングゲートを有します。
このフローティングゲート内に電荷を蓄えたり放出したりすることでデータの消去・書き込みを行います。
酸化絶縁膜で守られているためフローティングゲートの電位はおいそれとは変わりませんが、高い電圧を印加することでこれを実現しています。
なお、フラッシュメモリとはEEPROMをさらにアップデートさせた素子となります。
ちなみにフラッシュメモリの方は、1987年に日本のT社が開発に成功しました。
構造はEPROMに近いことからEEPROMに比べて安価に大量生産が可能とあり、現在ではフラッシュメモリの方がよく普及しております。
02.EEPROMのメリット・デメリット
フラッシュメモリが主流になりつつあるとは言え、もちろんEEPROMも現役です。
冒頭でもご紹介したように、車載デバイスを中心に用いられております。
EEPROMのメリットは、やはり特別なデバイスなしにデータの消去が行えるということです。
高電圧を印加することでこれを実現しているため、デバイスにオンチップしたままで消去・変更できるのは嬉しいですよね。
しかも、繰り返し・ユーザー自身で、です。なお、データ消去は一度に全部対応するというわけではなく、各セクションで1バイトごとの消去が可能となります。
近年では小型・大容量化によってますます活躍の場を広げており、今後も不揮発性メモリ市場の根幹を担っていくと考えられます。
一方でデメリットとしては、書き込み回数に上限がある、ということ。
これはフラッシュメモリにも言えることですが、書き込み回数が増えれば増えるほどデバイスとしての寿命は短くなり、EEPROMを搭載する機器そのものよりも早く劣化してしまったなんてことが起こりかねません。
また、データを保持できる期間にも限界があるとされており、これを超過するとデータそのものが消えてしまうといったことも。
もっともまだまだ市場の立役者であるEEPROMですから、書き込み回数を拡大した製品や、大容量製品が出回るようになってきており、今後の新開発にも期待ですね!
03.EEPROMの種類
EEPROMはメーカーによって様々な製品が出回りますが、大まかに分類するとシリアルバス型とパラレルバス型との二分にすることができます。
これはインターフェースのバス(bus)による分類方法です。
シリアルバス型はその名の通り、一つの信号を順番にデータ転送するタイプのバスです。
EEPROMだと1~4個程度の信号線が単一・直列となっており、パッケージは8ピン以下を利用します。
一方のパラレルバス型は28本以上の信号線を持ち、それらが並列されているタイプのEEPROMです。
一般的にはパラレルバス型のほうが構造がシンプルなうえにデータ転送がきわめて高速ですが、バスが少ないシリアルバス型の方が小型軽量化には好まれます。
また、パラレルバス型との比較だとフラッシュメモリをご購入される方が多くなるといった側面もあります。
どういった用途でEEPROMを活躍させるかによって、それぞれが一長一短となります。
04.まとめ
EEPROMについて解説致しました。
EEPROMとは不揮発性メモリの一種で、高電圧を印加することでデータの消去・書き込みを行えるメモリ素子であること。
電気的特性を利用しているため特別なデバイスなしに、オンチップのままこれらが行えること。
シリアルバス型とパラレルバス型に大きく二分することができ、後者の方が性能面での利点は多いものの、シリアルバス型EEPROMは小型掲揚かに優れていることから、様々なシーンで用いられていることをお伝えできたでしょうか。
メモリを知るうえで、ぜひ知っておきたい素子がEEPROMです。