電子機器を使うときは、変換された電源や信号が必要になります。
例えばコンセントから出てくる交流電源を直流電流にしたり、スピーカーがキャッチした私たちの声をデジタル信号に変換し、電話の相手の通話口で再びアナログ音声に変換したり。
これら変換の役割を担うのはコンバータと呼ばれる電子部品です。
そして、身の回りの電子機器には、何かしらのコンバータが搭載されています。
いったいどのようなコンバータが、どういった役割を果たしているのでしょうか。
この記事では、各種コンバータをまとめてご紹介いたします。
目次
1. コンバータとは?
コンバータはconvert「~を変える・変換する」を語源としており、変換装置を意味します。
コンセントから供給された電源を、使用する電子機器に適した直流電流へと変換することを目的とした装置となります。
AC/DCコンバータやDC-DCコンバータがよく使われるものとして有名です。
電子機器は、電源であろうと信号であろうと、供給されているものをそのまま使うことはできません。
何かしらに変換するために、必ずコンバータは搭載されています。
なお、次項で各種コンバータを解説しますが、それぞれが全く独立したものというわけではなく、組み合わせて使われることも少なくありません。
2. 様々なコンバータの種類とその用途
① DC-DCコンバータ
コンバータと聞いて、まず思いつくのがこちらではないでしょうか。
DCはDirect Currentの略語で「直流電流」を意味します。
デコデコとか、デデコンなどと呼ばれることもあります。
電子機器の多くは0.8~20V程度の直流電流で駆動します。
しかしながら、私たちが電源供給を受けるコンセントからは、交流電圧が送られます。
また、地域によってまちまちではあるもの、日本国内では100Vという高圧が採用されています。
そのため、コンセントから出てきた商用電源はそのまま使うことができません。
そこでDC-DCコンバータでは、供給された直流電流を、所望の電圧を採った直流電流へと変換する役目を果たします。
また、電源供給のみならず、微弱な電流を駆動に足りる直流電流へと昇圧する場合もあります。
DC-DCコンバータは、構造によっていくつかの種類がありますが、大きく分けるとリニアレギュレータ型とスイッチング型に二分されます。
リニアレギュレータは、調整器という三本端子の電子部品が用いられています。
このレギュレータはトランジスタや抵抗で作られており、これら半導体素子の抵抗値によって流れる電流が変化し電圧降下を起こす仕組みを利用しています。
リニアレギュレータ型はシンプルで低価格なことが魅力ですが、負荷が大きいと放熱してしまい、その分の電力を損失するという無駄が発生します。
また、放熱するため大きな電流を出力することはできません。
スイッチング型にはMOS FETが用いられています。
スイッチを高速でオンオフさせることにより、入力された直流電圧をパルス状に区切り、それをならして所望の直流電流を採るコンバータです。
リニアレギュレータ型と異なり昇圧も可能なこと。
また、放熱がないので高効率かつ大電流下でも使えること。
加えて小型・軽量化が容易なことから、現在ではスイッチング型DC-DCコンバータが主流となっています。
なお、DC-DCコンバータには、入力側と出力側が絶縁されている絶縁型と、絶縁されていない非絶縁型があります。
絶縁型はフライバック式、フォワード式、プッシュプル式の三つのスタイルを有しますが、トランスを用いることが特徴です。
トランスが入出力間に入ることで完全に絶縁することができ、電気的に分離されます。
これはノイズを遮断するだけでなく、過電流の突入などを防ぐのにも有効です。
非絶縁型はチョッパ方式とも呼ばれ、MOS FETにインダクタンスを高めるためにチョークコイルが直列され、パルスのオンオフによって昇圧・降圧を行います。
◆更に詳しくDC-DCコンバータについて知りたい方はこちらから
② AC/DCコンバータ
AC/DCコンバータは、Alternating Current(交流電流)をDirect Current(直流電流)に変換するための装置です。
最も代表的なものはアダプターでしょう。
前述の通り、商用電源は交流ですが、電子機器は直流電流で駆動します。
そこでAC/DCコンバータを使って交流を直流にならし、変換させなくてはなりません。
AC/DCコンバータも構造によっていくつかの種類がありますが、よく用いられるのはトランス式かスイッチング式です。
トランス式は、変圧器を使った変換装置です。一つのコアを共通で持つコイルによって実現されます。
印加された交流電圧がコイルに流れることで一次側・二次側の磁場が変化しますが、それぞれのコイルの巻き数を変えることで出力電圧を上げたり下げたりすることができます。
ここで降圧された交流電流をダイオードなどで整流し、さらに完全な直流にするためコンデンサやチョークコイルで構成した平滑回路を設け、変換を行います。
トランス分、どうしても大きく重くなってしまうことが難点です。
スイッチング式はDC-DCコンバータ同様に、MOS FETを用いて高速スイッチングを行い、入力された交流電流をパルス状に区切ってならす仕組みのAC/DCコンバータです。
トランスがいらないので小型・軽量化が容易ですが、スイッチングノイズが出てしまうという弱点があります。
なお、AC/DCコンバータの内部でDC-DCコンバータを用いるケースは多いです。
なぜなら商用電源の電圧は高すぎてそのまま使うことができず、結局のところDC-DCコンバータで降圧しなくてはならないためです。
そのためAC/DCコンバータには、DC-DCの意味合いも含まれているというケースは少なくありません。
また、絶縁型DC-DCコンバータを用いることで、感電の危険性を低減したり、ノイズの影響を遮断したりすることができます。
ちなみに交流電圧から直流を作り出すことを整流あるいは順変換と呼びます。
直流から交流を作り出す装置もありますが、こちらは逆変換と呼び、インバータという名称が一般的です。
③ ADコンバータ
ADコンバータとは、Analog-to-digital converterを意味しており、アナログ信号をデジタル信号に変換する装置です。
ADCと呼ぶこともあります。
そもそもアナログ・デジタルとは、どういった意味なのでしょうか。
アナログとは連続的に変化するデータという意味で使われます。
私たちが話したり聞いたり直視したりすること、あるいは風が吹いたりリンゴが落ちたりすることなど、自然界の信号は全てアナログに分類されます。
例えば、音は空気の振動によって伝わりますが、この一連の振動は連続しており、どこかで止まることはありません。
止まった時はその信号が消えた時となります。
一方のデジタルは、不連続的に変化するデータであり、現代社会では「0」「1」のように、ワンステップずつ区切られた信号を指します。
連続していないので、今この瞬間、データはどこにあるのかが一目瞭然ですが、移動中は確認することができません。
アナログ時計とデジタル時計が良い例となります。
針の運針によって時刻を表示するアナログ時計は、止まらない限り連続的にデータを表し続けており、1秒と2秒の間であってもどこに針があるのかが目視できますね。
しかしながらデジタル時計は数字が一つずつ変わっていき、1秒と2秒の間は数値が切り替わるまでわかりません。
このように、アナログ・デジタルはデータの表し方の違いとなりますが、あらゆる電子機器はアナログ信号をデジタル信号に変換させることが求められます。
なぜなら「0」と「1」だけで表せるデジタル回路に比べてアナログ回路は複雑で、電子機器を作ろうと思った時、アナログ回路だけで構成すると非常に大型な装置になってしまうためです。
そこで、アナログ信号をデジタル信号に変換して処理し、電子機器として用いることを目的としたのがADコンバータです。
例えば音をミュージックプレイヤーに、温度をデジタル体温計に、音声入力をAIに伝える、など、ほとんど全ての電子機器はADコンバータが必要と言っていいでしょう。
このADコンバータは用途によって様々な製品がラインナップされていますが、分解能、誤差変換時間、サンプリングレート(サンプリングレート)などの性能表示は、どの製品にも共通しています。
特に分解能とサンプリングレートは、性能の見極めに重要です。
分解能とは、ある装置がどの程度測定・識別できるか、どれだけ高精度に測定できるか、という能力を表した数値です。
例えば体重を測った時、0.01gまで測定可能な装置は、分解能が高いと言えます。単位は2進法の桁数であるbitを用います。
bit数が高ければ高いほど高精度となります。
ただし、アナログ信号とデジタル信号の間には、どうしても誤差が生じてしまいます。
これを量子化誤差と呼びます。
サンプリングレートとは、アナログ信号をデジタル信号に変換するスピードを指し、Hzで表されます。
録音であろうと録画であろうと、サンプリングレートが速ければ速いほどアナログ信号を細かくデータ処理することができ、結果として精度が上がります。
ADコンバータにも構造によっていくつかの種類がありますが、基本的な仕組みとしてはサンプリング(標本化)⇒量子化⇒符号化(コーディング)の一連の流れを採ります。
この流れは、簡単に言うとキャッチしたアナログ信号をいくつかの分割したステップで区切り、デジタル量に変換し、「0」「1」の2進数の桁数へと符号化する作業です。
パルスコード変調とも呼ばれます。
代表的な構造の種類は、フラッシュ型、パイプライン型、比較的新しいデルタシグマ型などが挙げられます。
それぞれでスピードや規模に違いがあり、用途によって使い分けられています。
④ DAコンバータ
DAコンバータはADコンバータの逆で、デジタル信号をアナログ信号に変換する装置です。
DAC(ダック)とも呼ばれます。
自然界のアナログ信号をデジタル信号に変換する必要性は前項でお話しした通りですが、それをまたアナログ信号に変換させ、出力する装置も広く用いられています。
例としてはデジタルオーディオやデジタルビデオ、マイク、通信機器類が挙げられます。
そのため、ADコンバータとDAコンバータも、一緒に組み合わせて使われることが一般的です。
入ってきたアナログ信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を再びアナログ信号である「音」「映像」として出力することで、上記の電子機器は機能を果たしています。マイクを例にとってみるとわかりやすいでしょう。
スピーカーに入力された声はデジタル信号に変換され、さらにアナログ信号として音が大きくなって出力される、という仕組みになっています。
DAコンバータもまた分解能とサンプリングレートが性能として重要になってきます。
特にデジタル信号からアナログ信号になる際は、「どこまでアナログにするか」が重要です。
当然ながら細かくアナログ信号として表現できる機器の方が精度は高いことを意味します。
また、分解能は「デジタル信号を何分割にしてアナログ変換するか」を表しており、細かな分割ほど滑らかに出力することが可能です。
DAコンバータにも構造によっていくつかの種類があり、抵抗素子を用いた抵抗ラダー型や抵抗ストリング型、電流出力型、デルタシグマ型などが挙げられます。
速度や分解能が異なるので、用途に合ったコンバータを選びましょう。
⑤ F/VコンバータおよびV/Fコンバータ
F/Vコンバータとは、周波数(Frequency)を電圧(Voltage)に変換する装置です。
V/Fはその逆変換装置となります。
周波数は、自然界にある波を数値化した単位です。
波とは音であったり、光であったり、あるいは電磁波であったりします。
これらの波が、一秒間あたりに繰り返す波の数を指して周波数と呼びます。
単位はHzを用い、1秒間に60回繰り返される波があったら、それは60Hzであることを示します。
この周波数は目に見えるものではありませんが、電圧に変換し、さらにADコンバータを一緒に用いることでデジタル数値として認識することが可能です。
そのため産業において、回転角度の変化や移動時の変化によって現れた周波数を計測し、製造時のスピードや立ち上がり時間などを可視化・解析することに一役買ってきました。
また、さらに身近なところだと、液晶モニタのリフレッシュレートが挙げられます。
これは一秒間にどれだけリフレッシュするかの回数を可視化したものとなり、高ければ高いほど美しく滑らかな映像を楽しむことができますね。
V/Fコンバータもまた、ADコンバータとともに用いられます。
信号伝送の際、ノイズに弱いアナログ信号は長距離の移動に向かないことがあります。
そのためいったん周波数に変換し、デジタル信号として伝送するための装置です。
3. まとめ
各種コンバータをご紹介いたしました。
以下の点をご確認ください。
- コンバータとは変換装置であり、あらゆる電子機器にはコンバータが内蔵されていること
- DC-DCコンバータとは、直流電流を電子機器に必要な直流電流に降圧または昇圧する変換装置であること
- AC-DCコンバータは、商用電源を直流電流に変換する装置であること。また、DC-DCコンバータと一緒に用いられるのが一般的であること
- ADコンバータとは、アナログ信号をデジタル信号に変換する装置であること。分解能とサンプリングレートで製品の性能が判別できること
- DAコンバータとはデジタル信号をアナログ信号に変換する装置であり、ADコンバータとともに用いられること
- F/VコンバータまたはV/Fコンバータは、周波数を電圧に、あるいはその逆に変換する装置であること。周波数を解析し、製造工程をスムーズにすることに一役買っていること