SSRとは、ソリッドステート・リレーの頭文字をとったもので、半導体を用いたリレーを指します。
テレビや電子レンジ、エアコンなどの家電やロボット、自動車など幅広い分野で活用されており、従来のアナログな有接点リレーから切り替わりが見られるようになってきました。
それは、SSRがアナログにはなかった様々な魅力を持つためです。とは言えSSRに適した回路と適さない回路が存在します。
どちらを選べばいいかは用途や必要とするスペックによって変わってまいります。
この記事ではSSRとはどういったものか。原理や仕組み、特性から見るメリット・デメリット、SSRに適した回路などを解説いたします
目次
1. SSRとは?
SSRは冒頭で述べたようにSolid State Relay(ソリッドステート・リレー)の略称です。
Solid Stateは固体状態のことで、固体自体の電子現象を利用した回路や装置・機器に使用されます。
SSRとなるとこの固体は半導体を指し、半導体リレーとも呼ばれます。
まずリレーについてご説明いたします。
①リレーとは?
日本語では継電器といった呼び方もされるリレーとは、電気信号や電流を電子回路に伝送するのに用いられる素子です。
運動会の種目のリレーのように、バトン(信号・電流)を受け継いでいく役目を持ちます。
例えばテレビを点けようとリモコンの電源ボタンを押します。直接テレビには触っていません。
しかし、リモコンの電源ボタンが押されたことはテレビ本体の電子回路に伝わり、テレビの電源を司る部分がその信号を受け取ることで「テレビを点ける」というアクションが起こります。
この時リレーがないと、リモコンの回路とテレビ本体の回路、そして電源回路は繋がることができません。
リレーはこのような経由の役割を持ち、スイッチをオンオフさせることで経由を行います。
このスイッチが接点を持つものを有接点リレー、持たないものを無接点リレーと言い、SSRは後者の無接点リレーに分類されます。
それぞれの違いをご説明いたします。
②有接点リレーと無接点リレー
スイッチ機能とは、ある二つの導体にそれぞれ接点を持たせ、接点がくっつくとONに、離れるとOFFになる、というものです。
従来から使われてきたアナログ式の有接点リレーはこの原理で、可動する接点をオンオフさせることからメカニカルリレーとも呼ばれます。
単純な構造のため安価で、大電力・電流への耐性が強いこと。
また、接点構成にバリエーションがあり用途に合わせやすいことなどのメリットを持ちます。
一方で接点の接触があるためパーツの摩耗などによって劣化してしまうこと。また、アナログ式なため動作速度に限界があることといったデメリットもあります。
そこで近年、有接点リレーに代わりシェアを伸ばしているのが無接点リレーです。
無接点リレーは有接点の逆で、スイッチに接点を持ちません。
しかしながら原理としては変わらず、スイッチング素子に半導体を使うことによって実現しています。
仕組みは後述しますが、半導体の特性を利用し、信号や電流を伝えることで役割を果たします。
有接点リレーと違って機械的な構造を持たないためパーツの摩耗などによる劣化がなく、高頻度で使ったとしても有接点リレーに比べ長寿命を誇ります。
また、高速なオンオフ切り替えが可能なこと、接点を閉じる時に生じるアーク(電気火花)、およびそれに伴うノイズがないことなどから、高精度の電子回路を作成するのに適しており、現在主流となりつつあります。
無接点リレーにはいくつか種類がありますが、今回ご紹介したいのがそのうちの一つであるSSRです。
2. SSRの原理と仕組み
無接点リレーの原理はスイッチング素子に半導体を用いる、とお話しました。
SSRは、この素子にサイリスタ、ダイオード、トランジスタ、そしてフォトカプラなどを使うことで信号・電流のオンオフを行います。
仕組みを解説いたします。
回路の構造としては、
入力端子・入力回路(リモコンの電源ボタンなど)=スイッチング素子=駆動回路=出力回路=半導体素子=出力端子
このようなものをイメージしてください。
回路内のスイッチング素子で、入力端子から出力端子までを経由させます。
「なぜ接点がないのに信号や電流をリレーすることができるの?」と思うかもしれません。
その秘密は、スイッチング素子にフォトカプラを利用していることにあります。
フォトカプラとは発光ダイオードとフォトトランジスタ(またはダイオード)で構成された電子部品で、入力された信号・電流を、光を通して出力側に伝えることができる、という特性をもっています。
入力端子に電圧を印加して発光ダイオードが光ると、それはフォトトランジスタを通じてもう一方の回路に流し込まれます。
印加していない時はそれぞれ独立した回路として絶縁されています。
電気の一切を絶縁することができるため、ノイズも絶つことができるのも大きなポイントです。さらに、光速を使うので動作が速いことも大きなメリットとなります。
なお、出力回路にも半導体素子が備わります。
使われる半導体はサイリスタで、これは、オンオフ制御に用いられることの多い素子です。
「ゲート端子」という開閉に特化した端子を持ち、回路に流れてきた信号・電流をキャッチするとオンになります。
オンになることによって出力回路に信号・電流が流れ、目的のアクションを起こすことができるのです。
以上がSSRの原理と仕組みになります。
3. 必ずSSRを選べばいい?メリット・デメリットを知ろう
SSRが主流になったとは言え、アナログの有接点リレーはまだまだ健在。
それは、SSRには付き合わなくてはならないデメリットもいくつかあるためです。
SSRの特性が生み出すメリット・デメリットをご紹介いたします。
①SSRのメリット
- 高速
- 接点がないので高頻度の動作に適している
- 接点がないのでパーツの消耗がない
- 金属摩耗もないため、寿命が長い
- 動作音がしない
- 小型化が容易
- 絶縁性が良く、オンオフ時にアークが発生しないためノイズ対策が不要
- コイルと可動接点で形成される有接点リレーと異なり誘導起電力(インダクタンス*1)がない
- 有接点リレーに比べると高額
- 定格を超えた電圧・電流を加えるとすぐに破壊される
- 半導体は熱に弱く、50A、100Aなどといった大電流下ではヒートシンク*2などの放熱器が必要。
- 有接点リレーにはないリーク電流*3があり、誤作動や発熱量の増加による劣化に繋がる
- スイッチの接点はa接点*4の製品しかない
※1 インダクタンスとは、流れる電流が大きくなるほど電流増加を妨げる向きに起電力が発生する現象のこと。コイルを使うと起こる。
※2 このヒートシンクが大型になってしまいSSRのメリットが打ち消されてしまうことも多い。
現在はSSRと電磁接触器を並列することで、加わる負荷電流を制御するなど解決策が取られています。
※3 リーク電流とは絶縁されていて、本来なら流れるはずのない経路に電流が漏れてしまうこと。ただし電気回路以外に漏れる漏電ではない。
※4 a接点とはスイッチを入れていない状態でオフ(接点が離れている)、スイッチを入れた状態でオン(接点がくっついている)になるタイプの接点のこと。
③結局SSRと有接点リレー、どちらを選ぶべきか?
前述のように、SSRには無接点リレーに比べてメリットもデメリットも存在します。
どちらを選ぶべきか。それは、工作する電子機械の用途や特性によって決めなくてはなりません。
例えばSSRは高電圧・高電力下においては、使いづらい場合があります。
一方で現在は放熱器と一体型になったスリムなSSRなども開発されています。
また、速度が求められる回路や、日に何百回とオンオフが繰り返される回路には有効となります。
高精度の電子機器にノイズはご法度なため、やはりSSRを選択することが望ましいと言えるでしょう。
このように、「どちらがいいか」ではなく、目的によって使い分けていきたいですね。
なお、SSRの実装方法は様々ですが、プリント基板に実装する小型タイプ、プラグインタイプなどが販売されています。
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