「NPN型トランジスタ」と「PNP型トランジスタ」の違いや使い分けについて詳しく解説していきます。
「NPN型トランジスタ」と「PNP型トランジスタ」は、電流が流れる方向によって使い分けます。
「トランジスタ」を単純な増幅回路やスイッチング回路に使う場合、エミッタ、コレクタ、ベースのうち一本の電位を固定して使います。
そうしないと、基準となる電圧が無いことになるので、入力信号を決めるのが難しくなります。
電位を固定する場所によって、「エミッタ接地」「コレクタ接地」「ベース接地」などと言います。
入力信号でスイッチングしたいなら、「エミッタ接地」が一般的です。
「トランジスタ」のON/OFFの状態は、ベースとエミッタ間に流れる電流で決まるので、入力をベースに入れる場合、エミッタの電位が決まっていると楽だからです。
つまり、エミッタが電源か接地に繋がっている必要があるので、回路の電源側で制御したいなら「PNP型トランジスタ」を使用し、回路の接地側で制御したいなら「NPN型トランジスタ」を使用すると考えるといいです。
たとえば何かを検出した時に電気を発生させるセンサーがあるとします。
そのセンサーが検出した時にLEDを光らせたいとすると、「NPNトランジスタ」を使ったLED点灯回路を作ればいいことになります。 反対に、何かを検出した時に電気を0Vにするセンサーがあったとします。
そのセンサーが検出した時にLEDを光らせたいとすると、「PNPトランジスタ」を使ったLED点灯回路を作ればいいということになります。
また、「PNP型トランジスタ」であれば、配線のどこかが仮に短絡していても負荷は動作しないため、安全上の観点からヨーロッパで多く用いられています。
接続する機器の入力仕様や回路の安全に対する要件に合わせて使い分けるのがいいでしょう。
NPNとPNPとの違いについて
「NPN型トランジスタ」も「PNP型トランジスタ」も接続先の回路においてスイッチとして機能しますが、電荷の正負が逆になっている点と設置面側で制御ならNPN型、電源側ならPNP型という点が大きな違いです。
①NPN型トランジスタ
エミッタがN型半導体、ベースがP型半導体、コレクタがN型半導体で構成されているトランジスタを「NPN型トランジスタ」と言います。
例えば、ベースとエミッタの間に、ベースが正電圧、エミッタが負電圧か接地電位となるように電圧を加えます。
すると、N型半導体のエミッタにあった自由電子が、ベースに流れ込みます。
エミッタから流れた電流を「エミッタ電流」、ベースに流れた電流を「ベース電流」と言います。
電子の一部はP型半導体であるベースの電荷の穴に捉えられて「ベース電流」となりますが、残りの大半はコレクタへと進みます。
これを「コレクタ電流」と言います。
ベースは非常に薄く、エミッタからベースに流れ込む電子のほとんどは、「コレクタ電流」になります。
電子の移動ではなく電流で考えると、エミッタを流れる電流は、「ベース電流」と「コレクタ電流」の合計値となります。
電子の進む方向と電流の方向は逆であるということに注意しましょう。
ここで、PN接合の半導体の性質として、ベースとエミッタの間の電圧を増やすと「エミッタ電流」が指数関数で増加するという関係があります。
さて、「ベース電流」は無視できるほど小さいので、「エミッタ電流」と「コレクタ電流」はほぼ同じ電流となります。
そのため、ベースとエミッタの間の電圧を増やすと、「コレクタ電流」が指数関数で増加します。
これにより、「ベース電流」を入力電流、「コレクタ電流」を出力電流と考えれば、入力電流の変化が出力電流の大きな変化に増幅されていることになります。
②PNP型トランジスタ
エミッタがP型半導体、ベースがN型半導体、コレクタがP型半導体で構成されているトランジスタを「PNP型トランジスタ」と言います。
「NPN型トランジスタ」とは電荷の正負が逆になっていることがわかります。
ベースが負電圧、エミッタが正電圧となるように電圧を加えます。
すると、P型半導体のエミッタから正の電荷がベースに流れ込みます。
正の電荷の一部はN型半導体であるベースの電子に捉えられて「ベース電流」となり、残りの大半は「コレクタ電流」となってP型半導体のコレクタになります。
「NPN型トランジスタ」と「PNP型トランジスタ」の基本的な動作に違いはありません。
「NPNトランジスタ」は電荷が自由電子であり、「PNPトランジスタ」は電荷が正であることくらいです。
ただし、実際に作製したトランジスタの性能は「PNP型トランジスタ」よりも「NPN型トランジスタ」のほうが良くなります。
したがって、高周波性能では一般的には「NPN型トランジスタ」のほうが優れています。