製造業や鉄鋼業に携わっていなくとも、ドリルを使用する機会というのは結構多いのではないでしょうか。
とは言え、初めてドリルを購入しようと思った時、その種類の多さに驚かされると思います。
そこでこの記事では、ドリルの種類について解説いたします。
1.ドリルはどうやって種類分けできる?
冒頭でも言及しているように、非常に多岐に渡って商品展開されているドリル。
用途やメーカーによって種類分けもできますが、よく分類に使われるのが先端工具の部分です。
この部分で、ドリルの特性や用途も変わってきます。
業務用として販売されているドリルは、この先端工具はご自身で購入するケースも多いでしょう。
そもそものドリルとは、先端工具の切刃を回転させながら材料に穴あけを行うデバイスです。
先端工具には切刃の他、ボディ、そして機械に先端工具を搭載させるためのシャンクで構成されています。
なお、ボディ部分は切込みが入れられ、溝が付けられていることが一般的です。
この溝は穴あけ時に発生した切りくずを排出する用途を持っております。
さらに構造によってもドリルは種類分けすることができ、代表的なものを知っておくと、ドリル選びの手助けになることでしょう。
2.ドリルを先端工具から種類分け!
それではドリルを先端工具から種類分けしていきます!
①切刃の素材
材料を接し、穴あけの要を担う切刃。
切刃は剛性や硬度が求められることは言わずもがなですね。
安価でよく出回っている切刃の素材は、まず「ハイス」が挙げられます。
ハイスとはHSS(ハイ・スピード・スチール)のことで、高速度鋼を指します。
この名の通り、スピーディーに材料の切削を行える素材として親しまれております。
鋼にクロムやタングステン、バナジウムなどを混合することで製造されます。
安価ゆえにボール盤での加工でよく用いられます。
靭性に富んでいるため、刃がかけづらいというメリットもありますね。
一方で後述する超硬合金に比べると加工速度や精度、耐熱性の面では後塵を拝します。
ハイスドリルはチタンコーティング等によって耐摩耗性・耐食性を向上させる表面処理がしばしば行われます。
ハイスドリルとともによくドリル素材として語られるのが、「超硬合金」です。
超硬合金を用いたドリルは超硬ドリルなどと称されることもあります。
超硬合金は硬質の金属炭化物にコバルトやニッケルを混合させて製造された素材で、その名の通りきわめて硬度の高い素材として知られています。
硬いということは耐摩耗性に優れることはもちろん、切削中にドリルが変形することが少なくなり、高速かつ優れた加工精度を実現するということを意味しますね。
また耐熱性が高いため、高温下であっても高速かつ高精度な加工が可能です。
一方で価格が高く、また硬度が高い分靭性破壊が起こりやすい傾向にあり、折れや欠けには注意が必要です。
ハイス・超硬どちらが優れているということはなく、予算や用途によって使い分けたいですね。
なお、ハイス・超硬ドリルで使い分けを行う方が多いです。
ハイス・超硬合金以外では多結晶ダイヤモンドやサーメット、CBN焼結体などがドリルの切刃素材として用いられます。
②構造
ドリルの構造は大まかに分けて三種類です。
一つ目が「ソリッドドリル」です。
「ムクドリル」と称されることもあります。
ソリッドドリルは切刃・ボディ・シャンクが一体型となっており、同一素材で形成された構造のドリルです。
ムクとは無垢を指します。
非常によく流通しており、前述したハイスドリルや超硬ドリルもソリッド式が多いです。
製品によって極小径の穴から大径の穴までを加工できるなど、選択肢も豊富です。
二つ目が「チップ交換式ドリル」です。
チップは切刃のことで、ここをボディと何らかの方法で接合させることで、容易に交換できるタイプのドリルです。
切刃は摩耗するので消耗品となりますが、チップ交換式はここを交換できるので、先端工具自体は繰り返し使用できることがミソ。
効果な素材を使ったドリルだと、全部取り替えるのはそれだけで出費になるものです。
そのためチップだけの交換で済むドリルは嬉しいですね。
用途や開けたい穴の大きさによってチップを交換しながら使うといった方もいらっしゃいます。
様々なチップがラインナップされており、互換性を持たせた製品もあるため、多彩な用途でドリルをご利用になる方にお勧めできる代物です。
チップ交換式には先端の刃先に超硬合金をロウ付けしたタイプ(先ムクドリル)、ボディとシャンクで別素材になった付刃ドリル、切刃をインサート式に交換できるスローアウェイドリルがあります。
スローアウェイドリルは複数のチップを組み合わせることで、ドリル先端を再現する手法もありますが、こちらだと小径の穴加工にはあまり用いられません。
三つ目が「ヘッド交換式ドリル」です。
基本はソリッドドリルですが、先端部分が交換できるタイプで、チップ交換式同様に先端を経年劣化した際や別の用途に使いたい際にここを交換することで繰り返し利用できることが特徴です。
ちなみに、ヘッド部分に超硬合金、ボディ部分にハイスを用いることで、耐摩耗性と靭性を両立したタイプが広く普及しています。
ただし、チップ交換式ドリルにも言えることですが、構造上、小径の穴加工には対応しづらい面があります。
③シャンクの形状の種類
前述の通り、シャンクはドリルの柄にあたる部分になります。
このシャンクを電動工具等に搭載させることで、切削加工作業を行います。
シャンクの種類も様々ですが、代表的なものは「ストレートシャンク」と「テーパーシャンク」です。
ストレートシャンクはシャンク部分が円筒型になったタイプです。
シャンク・ボディの直径は同じになるので、まっすぐな円筒型になっていることが特徴です。
テーパーシャンクはモールステーパードリルなどとも呼ばれており、テーパー、つまり先細りした形状のシャンクです。
ホールド性に優れること。
また一般的なドリルが垂直に穴あけ加工を行うことに対し、テーパーシャンクドリルであれば水平状態で切削ができ、加工の自由度が増すことが大きな魅力です。
テーパーシャンクドリルに限らず、シャンクはサイズや接合部の構造によって合う・合わないがありますので、必ずお使いの機器の規格を確認するようにしましょう。
なお、テーパーシャンクのサイズはMT1、MT2、MT3で表します。
④ドリルのねじれ
切りくずを排出するためにドリルには溝が付けられていることは前述の通りですが、この溝のねじれにも種類があることをご存知でしょうか。
まず、ツイストドリルと呼ばれるねじれ。
非常に一般的なドリル形状ですが、このねじれには右ねじれと左ねじれが存在します。
右ねじれが一般的なドリルとなり、正回転によって穴開けを行います。
この反対が左ねじれとなり、右ねじれとは逆回転向きに穴あけを行います。
もっとも、このねじれの左右でドリルの性能が大きく変わることはそうありません。
ただし「ねじれ角」によって、様相が異なってきます。
一般的にねじれ角が小さい(弱ねじれ)ほど、切れ味は低下するものの剛性は増し、ねじれ角が大きい(強ねじれ)ほど切れ味が向上する一方で強度は低下するといった特徴があります。
なお、溝のないストレートドリル(直刃ドリル)や平溝ドリルなどといった種類も存在します。
⑤刃長
先端工具による種類分けとしては、「長さ(刃長)」も知っておきたいところです。
実は、ドリルはこの長さによっても名称が異なることがあるのです。
もっとも定まった基準はまだありませんが、一般的に長さ(L)/直径(D)で種類分けされており、L/Dの値が2〜3の個体をスタブドリルと呼んでいます。
浅い穴あけ加工に適した製品と言えます。
L/Dの値が4〜5だと、レギュラードリルとなります。
レギュラーの名の通り、最も一般的なサイズ感です。
L/Dの値が5以上となると、ロングドリルに分類され、さらに10を超えるとスーパーロングドリルなどといった名称を持つこともあります。
深い穴あけ加工の際に用いられます。
2.ドリルを機能・用途から種類分け!
最後に、ドリルの機能や用途から見た種類について、代表的なものをご紹介いたします。
まず、段付き(ステップ)ドリル。
これは径が異なる段が二つ以上備わったドリルになっており、段付き穴や、穴開け・面取り加工を同時作業することができるのが特徴です。
段付きドリルには単溝と副溝タイプが存在しています。
またスターティング(リーディング)ドリル。
切削する際、いきなり穴あけを始めると、所望の位置の穴開けからズレてしまう場合があります。
そこでスターティングドリルによって予め位置決めをすることで、高精度な。
加工が可能となります。
また、穴開け後の面取りに用いられることもあります。
似たドリルでセンタードリルというのがありますが、こちらはセンター穴をつけるための機器になります。
リーディングドリルよりも華奢なため、位置決めの際はスターティングドリルを用いることが一般的です。
その他では切削油を給油えきる油穴付きドリル、円筒状の穴開けに使うコアドリル、テーパー加工も一緒に行えるテーパーピンドリル、薄板用ドリル等と豊富な種類が存在します。
3.まとめ
ドリルの種類についてご紹介いたしました。
ドリルは主に先端工具の素材や構造、ねじれ等で種類分けできること。
機能や用途によっても様々なドリルがあること。
ご予算や求める加工精度、開けたい穴の大きさや種類によってご自身に合うドリルは異なってくることなどをお伝えできたでしょうか。
もっとも、ドリルはサイズや細かな形状は製品によって異なってきます。
個別の商品について知りたい場合は、ぜひお問合せ下さいませ!