ローム社【ROHM】は小型・薄型機器の無線給電化を容易に実現するワイヤレスチャージャーモジュール「BP3621」「BP3622」を開発しました。
最適化されたアンテナ・レイアウト設計技術の搭載で開発工数削減に貢献します。
目次
<背景>
近年、スマートフォン、スマートウォッチなど幅広いアプリケーションで、接点端子を無くし、防水・防塵性を高めることができる無線給電機能の導入が加速しています。
しかし、既存の無線給電規格は周波数が低く、規格準拠するためにはアンテナの小型化に限界があり、より汎用的に小型機器で利用できる規格・方式への期待が高まっています。
また無線給電機能は、アンテナ形状・サイズ・距離によって給電効率が変わるため、その実装には電子機器側で試作・調整・評価等を繰り返す必要があり、アンテナ設計・レイアウト設計において、非常に多くの開発負荷が課題となっていました。
こうした中、ローム社では小型・薄型機器で無線給電機能を容易に実現できる13.56MHzワイヤレスチャージャーモジュールを開発しました。
<新製品の特長>
1.アンテナ基板一体型モジュールにより開発工数を大幅削減し、容易に無線給電機能を実現
新製品は、ローム社独自のシミュレーションを駆使したアンテナ設計技術およびマッチング調整、配線ロスを低減する基板レイアウト設計技術を搭載したアンテナ基板一体型のモジュールです。
送電モジュールと受電モジュールをペアで使用することにより、最大200mWの給電量を実現します。
アンテナと制御回路を別で構成する場合と比べて、給電特性を保証しているため、アンテナ設計・レイアウト設計や給電評価を行うことなく製品評価が可能。
開発工数や基板修正における設計負荷を大幅に削減し、容易に無線給電機能を実現できます。
2.13.56MHz高周波数帯の採用でモジュールの小型化を実現、筐体設計の自由度向上に貢献
新製品は、スマートタグなどの小型機器やマウスなどのPC周辺機器に向けて、13.56MHz高周波数帯の磁界共鳴方式*2採用によりアンテナを小型化。
既存の無線給電規格で難しかったアンテナ・マッチング回路・ワイヤレスチャージャーICを内蔵した小型モジュールを実現しました。
また、無線給電製品として接点端子をなくして防水・防塵性を高めるだけでなく、搭載部品をすべて表面に実装した裏面フルフラットの基板構造により、筐体への貼り付けを容易にすることで、筐体構造のシンプル化や設計の自由度向上に貢献します。
3.モジュール内蔵のアンテナでアプリケーションのデータ通信機能拡張に貢献
新製品は、NFC通信規格と同じ13.56MHzの高周波数帯を使用しているため、モジュール内蔵のアンテナで給電と通信の双方に対応できます。
双方向のデータ通信(通信速度212kbpsで最大256バイト)やNFC Forum Type3 Tagのタグ通信が可能となり、ファームウェアのダウンロード、センサデータ・デバイス情報・認証情報のセキュアなデータ転送や書き換え、バッテリー出力電圧値の転送といったアプリケーションのデータ通信機能拡張に貢献します。
BP3621の主な仕様
形名:BP3621
特性
送電/受電 | Power Transmitter |
---|---|
モジュールタイプ | Wide Range Type |
モジュールサイズ [mm] | 35×26 (t=1.5) |
重量 [g] | 0.8 |
給電範囲 (d)[mm] | 10 |
インターフェース | 8pin, 0.5mm pitch, FPC connector |
動作温度範囲(Min.)[℃] | -10 |
動作温度範囲(Max.)[℃] | 50 |
特長
- Wireless power transmitter
- Optimized for wireless charging with BP3622
- 212 kbps wireless communication
BP3622の主な仕様
形名:BP3622
特性
送電/受電 | Power Receiver |
---|---|
モジュールタイプ | Wide Range Type |
モジュールサイズ [mm] | 24×17 (t=1.5) |
重量 [g] | 0.38 |
出力電力 (Max.)[mW] | 200 |
給電範囲 (d)[mm] | 10 |
インターフェース | 8pin, 0.5mm pitch, FPC connector |
動作温度範囲(Min.)[℃] | -10 |
動作温度範囲(Max.)[℃] | 50 |
特長
- Wireless power receiver
- Optimized for wireless charging with BP3621
- 212 kbps wireless communication
用語解説
※1)NFC Forum Type3 Tag:
NFC(Near Field Communication)とは、13.56MHzの周波数を使用して触れる程度の距離で通信する近距離通信技術で、NFCフォーラムにて仕様を定義している。Type3はタグ規格の一つ。
※2)磁界共鳴方式:
送受電に用いるアンテナ(コイル)を共鳴状態にして磁場の振動を伝え、電流を流す方式。
◆ ワイヤレスチャージャーとは
給電量が200mWまでの無接点給電を可能とする技術であり、小型電子機器に最適
ワイヤレスチャージャーの応用領域としては残されたワイヤー「電源ケーブル」をなくす技術です。
接点端子を無くすことができるため、モバイル機器から産機まで広範囲なアプリケーションで活用が期待されています。