インバーターを見たことがなくとも、絶対にインバーターを搭載した家電製品は身近にあるはずです。
それくらい、私たちの生活に欠かせないインバーターを、実はどのようなものかよくわかっていない、という方もいらっしゃるでしょう。
確かにインバーターは目立つ電子部品ではないこと。また、コンバーターと混同されやすく、わかりづらくなっている節があります。
そこでこの記事では、インバーターとはどのようなものかを解説いたします。
1. インバーターとは?
インバーターは英語でinverterと表記し、直訳すると「反転するもの」となります。
では、何を反転するかと言うと、電流・電圧です。
具体的には、直流を交流に変換する回路またはデバイスそのものを指します。
インバーターはパワーエレクトロニクスにおける代表的な素子であり、産業用途から民生用途まで、幅広いシーンで用いられてきました。
なお、似た用語でコンバーターと呼ばれるものがありますが、こちらはconvertが語源となっており、「転換するもの」という意味です。
交流を直流に変換する機器を指しており、日本語では順変換装置や整流器と呼ばれます。
インバーターはこの逆の作用を行うため、逆変換装置と呼ばれることがあります。
「直流を交流にする」と言われても、イマイチわかりづらくなかなか用途も思いつきづらいかもしれません。
これを知るためには、直流・交流がどのような電流・電圧であるのかがわからないとイメージがつきづらいので簡単おさらい解説をします。
「直流」は常に一定の電圧を供給します。
一方の「交流」は一定周期で電圧のプラス・マイナスが入れ替わり、反転している状態となります。
この反転が一秒の間に何回転するかを周波数と呼びます。
この「周波数」がポイントです。
インバーターは、直流電源から任意の周波数を持った交流電流を生成し、使用する電子機器に合った電流電圧を供給できるのです。
ちなみに一般家庭に供給される交流は、AC100Vの電圧/50Hzか60Hzの周波数と決められており、関東では電力会社から1秒間に50の波、関西なら60の波が送られてきます。
このインバーターが最もよく使用されている機器が、モーターです。
通常、商用電源は交流で供給されますが、一般的な電子回路は安定した直流で駆動します。
ただし、モーターは直流駆動の個体と交流駆動の個体があり、それぞれに利点がありますが、インバーターが活躍するのは交流駆動のモーターです。
交流駆動のモーターは構造がシンプルで、かつ耐久性があるという利点から、家電等にもよく利用されています。
しかしながらモーター単体では、回転数などを制御することはできません。
そこでインバーターを用いて、任意の周波数を生み出すことで、所望の回転数をモーターに動作させることができるのです。
なお、モーター以外にも直流から交流にするシーンは多々あります。
例えば太陽光で蓄電された直流電流は、家庭用に交流へ変換されることとなります。
「なぜ電子部品は直流駆動が多いのに、わざわざ交流にするの?」と、ここでも疑問が生まれてくるかもしれません。
これは、直流は交流に比べて電圧変換にコストがかかる、というデメリットがあるためです。
必要以上のエネルギーを持ったままの直流電圧を電子機器に直接送ることは、エネルギー損失や機器への負担を増加することに繋がります。
そこでインバーターを用いて任意の交流電圧に変換することで、適切なエネルギー消費を行うことが可能となります。
一方でインバーターはその動作原理から、ノイズを起こしやすいというデメリットも抱えています。
ノイズが入ってしまうと機器が繋がりづらくなったり、誤作動を起こしたりするケースがあります。
そのためインバーターには、配線分離やノイズフィルタの設置など、ノイズ対策が行われることとなります。
★コンバーターについての詳しい解説はこちら
2. インバーターの原理・仕組み
インバーターの動作原理は「スイッチング」です。
現在インバーターには、MOS FET等の高速スイッチング素子が搭載されています。
一般家庭にある家電製品の多くは、波がキレイに整った「正弦波(サインカーブ)」と呼ばれる波形でないと動かないものがあります。
インバーターはこの波形を作り出すために、PWM制御(パルス幅変調:Pulse width modulation)と呼ばれる電圧制御を行います。
PWM制御は、現在の電圧制御方式で最も一般的なスタイルとなります。
どういうものかと言うと、交流の向きに合わせてスイッチのオンオフを行いますが、その時間を調整することで欲しい周波数(欲しい幅のパルス)を取り出す、というものです。
ちなみに、ただ周波数だけ変えているというわけではありません。
インバーターでは周波数と電圧は正比例となっており、周波数が上がれば電圧も上がることとなります。
なお、前述の通り、インバーターと言った時にデバイスそのものを指すことも回路を指すこともあります。
ただ、デバイスとしてインバーターという時は、インバーターだけでなくコンバーターとコンデンサを含むことが一般的です。
仕組みとしては、商用電源(コンセント等)から供給された交流電流を一度コンバーターで直流に整流し、コンデンサで平滑を行い、そしてインバーターで上述したPWM制御を行ったうえで任意の交流電圧を取り出す、というものです。
★MOSFETについての詳しい解説はこちら
★コンデンサについての詳しい解説はこちら
3. インバーターの種類と用途
インバーターはあらゆる電化製品に用いられていますが、いくつかの種類に分かれます。
交流電圧・周波数を変えるインバーターは「VVVF(Variable Voltage Variable Frequency)」と呼ばれ、直訳すると「可変電圧可変周波数」です。
モーターの回転速度を変えるために用いられるインバーターの種類となります。
例えば現在のエアコンや冷蔵庫は、一定の温度が維持されるように設計されています。
これは、温度センサで屋内(または庫内)の温度を計測し、設定温度よりも高ければモーターの回転数を増やし、逆に設定温度に保たれていればモーターの回転数を減らして調節を実現しています。
ちなみに最近のエアコンが「省エネ」と言われている訳は、インバーターのスイッチング素子にMOS FET等、低消費電力の半導体素子を使っていることが挙げられます。
また、任意の周波数を取り出すインバーターは「CVVF(Constant Voltage Variable Frequency)」と呼ばれます。
直訳すると「定電圧可変周波数」です。
例えばIH調理器は、加熱の際にコイルへと電圧印加を行います。
このコイルにインバーターを使って高周波の電流を流すとさらに強く加熱され、低周波の電流を流すと温度が下がることとなります。
同様の原理で、蛍光灯の明るさを変えることなどにも応用されています。
さらに、「CVCF(Constant Voltage Constant Frequency)」と呼ばれる、定電圧低周波数インバーターでは、安定した交流電源を供給するために用いられています。
例えば停電時のUPS(Uninterruptible Power Supply)は、電圧低下を起こさず一定の交流電流を供給し続けることが求められるため、CVCFインバーターの存在が欠かせません。
このように、インバーターはありとあらゆる電子機器に使われており、その可能性は広がっていくばかりです。
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4. まとめ
インバーターについてご紹介いたしました。
インバーターとは、直流電源から交流を作り出す変換装置であること。
コンバーターと混同されることもありますが、こちらは交流から直流を作り出すデバイスであり、インバーターの方を「逆変換装置」と呼ぶ場合があること。
インバーターは任意の周波数を生成することもできるため、モーターの回転制御で主に使われることなどをご理解頂けたでしょうか。
年々、インバーターを搭載した電子機器は市場に増えていっています。この機会に、ぜひインバーターを理解しておきましょう!