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自動車や電力機器に使われるヒューズとは?

「ヒューズが飛んだ」といった言葉を耳にしたことはありませんか?

自動車のオーディオやシガーソケット、あるいは電気や電子機器などに過電流が流れたことで、電子部品の一つであるヒューズが切れ、駆動しなくなる現象を指します。

これは故障ではありません。

むしろヒューズが切れることは過電流が流れたにもかかわらず、回路が安全に保たれたことを意味します。

この記事では、回路の保護に欠かせないヒューズについて解説いたします。

ヒューズ

1. ヒューズとは

ヒューズは電力ヒューズとも呼ばれます。

電力回路や電力機器などで主に使用されており、通常時は導体として電流を流す電子部品となります。

しかしながら一定以上(定格以上)の過剰な電流が流れた時、内部の導線を切ることで絶縁体となり、他回路に電流を流れません。

つまり、ヒューズ自身で過電流を遮断し、後に続く回路を保護する役割を果たしているのです。

また、大電流が流れたことで機器自体が過剰に加熱してしまったり、それが原因で発火を起こしたりといったことを未然に防ぐためにも有効です。

詳しく解説いたします。

① 原理·仕組み

ヒューズは二本のリード線が低融合金で接続された構造を取っています。

そしてその低融合金は特殊樹脂でコーティングされており、ガラス管などのケースにパッケージングされていることが一般的です。

このヒューズは前述の通り通常時は導体として電流を通していますが、ヒューズの定格以上に電流が流れ込んだ時、低融合金はジュール熱(導体に電流を流した時に発熱する現象のこと)が発生します。

低融合金はその名の通り低融点であるため、このジュール熱で溶断することでリード線を切り離し、結果として絶縁体の役目を果たすのです。

この溶断する部分のことを可溶体またはヒューズエレメントと呼びます。

溶断する温度を発生させる電圧が定格電圧にあたり、ヒューズエレメントの成分や大きさ・太さなどで数値が変わります。

なお、一般的には線長が短いほど定格電流は大きく溶断時間が長くなります。

逆に線長が長いと抵抗も大きくなるため、定格電流は小さく溶断時間は短くなります。

また、線径が太いほど定格電流は大きくなります。

とは言え回路が耐えられない過電流が流れた時には確実にヒューズを飛ばす必要があります。

一方で通常時に切れてしまっては目的を果たせません。

そのためデータシートを確認し、所望の定格電流に副ったヒューズを選ぶことが封用です。

こういった仕組みから、一度溶断してしまうとヒューズは交換しなくてはなりません。

そのため「ヒューズが切れる」「ヒューズが飛ぶ」などと呼びますね。

内部が切り離されたかどうか目視でわかるように、ヒューズのケース部分は透明であったり、表示機能があったりすることがほとんどです。

また、交換しやすさも大切になってくるため、ラグ端子やソケットで取り付けられます。

とは言え小型機器などでは表面実装型も少なくありません。

② ヒューズとブレーカーの違い

しばしばヒューズと混同されるのがブレーカーです。

確かにブレーカーはヒューズのような役割を果たします。

家庭用電源でお馴染みのブレーカーは配線用遮断器とも呼ばれ、電気を使いすぎたり過電流が流れたりすると回路が遮断される仕組みとなります。

しかしながらヒューズと異なるのは、回路を切り離す部分がバイメタルであること。

ヒューズ同様にジュール熱を利用したものですが、バイメタルという熱膨張率の異なる二枚の金属板を貼り合わせたものを用いており、一定の電流(熱)が流れると膨張・湾曲する特性を利用します。

バイメタルの湾曲によってラッチ部分が取り外され、回路間の接点が遮断された状態になることで絶縁します。

ヒューズは一度溶断してしまうと交換しなくてはなりませんが、ブレーカーはラッチを再びかけてあげることで何度でも利用することが可能です。

とは言えヒューズの方が安価であることもあり、全ての家庭用電源がブレーカーに置き換わっているかと言うとそうではありません。

また、バイメタル式は冷えるとまた収縮して元の状態に戻るのですが、完全には真っ直ぐにならず、一度ブレーカーが落ちるとその後繰り返しやすくなる、といった側面もあります。

そのため近年ではデジタル計測による電子式ブレーカーが出回るようになってきました。

こちらはバイメタル式よりも機械的構造が少ないため経年変化に強いだけでなく、マイクロプロセッサによって過電流検出や引き外し指令が行われるので、高精度であることも大きな利点です。

2. ヒューズの特性と選び方

ヒューズは線径や線長の他、低融合金によっても特性を変えます。

そのため選びたい個体がどのような特性を持っているか知ることは、安全なヒューズ選びを行うためにも欠かせません。

① 溶断特性

溶断とは前述の通り、過電流が流れた際に内部で切れて回路間を遮断する現象のことを指しますが、この電流が流れた時、どれくらいの時間で溶断をするか表したものが溶断特性です。

と言うのも、ヒューズは定格電流値が流れても遮断されることはありません。

しかしながらこの定格電流を超えた電流が流れると溶断が行われますが、過電流が流れてから何秒で確実に遮断するかどうかは、製品によります。

この溶断時間はISOを始めとした工業規格で標準化されており、すぐにヒューズが溶断する速動、通常、すぐにはヒューズが溶断しないタイムラグ(遅断)などに分類されます。

なお、溶断時間には上限と下限が設けられています。

ヒューズが耐えられるからと言って過電流を流し続ければ電線や回路が破壊されたり、場合によっては炎上してしまったりするケースがあるためです。

下限は通電開始時の突入電流を過電流と認識し、溶断しないための措置となります。

② 定格電圧

ヒューズは基本的に定格電圧であれば電流を遮断することはなく、電流を流し続けることになります。

しかしながら環境や経年によって通電容量と定格電流が必ずしも一致するとは限らず、定格電圧を超えて印加し続けることはヒューズが切れるだけでなく破損や故障、炎上に繋がるため、実際に回路で使用する電圧よりも余裕を持った定格電圧のヒューズを選ぶようにしましょう。

③ 遮断容量

ヒューズは遮断容量(ブレーキング・キャパシティ)または短絡電流(ショート・サーキット)と呼ばれる特性も確認する必要があります。

これは、ヒューズが破損することなく溶断できる最大電流値のことで、これを超えると機器の破損に繋がります。

「どうせ切れるのだから、どれだけ高い電流を流しても変わらないのでは?」と思われるかもしれませんが、ヒューズは破損するとケース内でヒューズエレメントが飛び散ってしまったり、そこから熱を発して回路を炎上させたりする危険性があるため、定格電圧と並んで非常に重要な確認すべき特性となります。

④ 周囲温度

ヒューズは発熱によって溶断する電子部品です。

そのため周囲温度に左右される面が多く、実際の溶断時間や遮断容量が変化します。

ただし、変化率はヒューズエレメントの成分にもよります。

この変化率が少ないほど周囲温度に影響されず、性能としては高いことを意味します。

⑤ 形状·サイズで選ぶ

現在、様々な形状のヒューズがラインナップされています。

ガラス管にリード線と低融合金がパッケージングされたものがよく出回っていますが、その他にも挿入用端子がついているもの、表面実装タイプなど様々です。

また、専用のヒューズリンクを持ち、ホルダーに装着して使用するタイプなどもあります。

サイズが大きいほど定格電圧・遮断容量が大きくなることが多いです。

3. ヒューズの安全規格

保護回路の多くに言えることですが、ヒューズもまた「回路を守る」という性質条、安全規格が重要になってきます。

なぜならヒューズによって機器の破損や火災事故を防ぐことができますが、言い換えればヒューズが正常に動作しなくては回路の安全を守ることができないためです。

そのため、ヒューズを購入する際には、各種安全規格の認可マークが記された製品を購入する必要があります。

ただし、ヒューズの安全規格は世界共通ではありません。

例えば日本では電気用品安全法(Product Safety Electrical Appliances & Materials:電安法)に基づき、各認定検査機関で認可を受けています。

認可を受けたヒューズ製品にはPSEのロゴがつくこととなります。

A種、B種、J60127規格に分かれており、B種は独自基準となりますが、A種は米国で主流のUL(Underwriters Laboratories)という規格に準拠しています。

J60127規格は欧州を始め世界で広く用いられているIEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)に準拠しています。

メイドインジャパン以外のヒューズを購入する際は、その製品が作られた各国で採用している規格と、認可マークを知っておきましょう。

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