LCRメータをご存知でしょうか。
インピーダンスを利用して電子回路の中の受動素子―抵抗・コンデンサ・インダクタの値を測定できる機器となり、適切な等価回路を作成するために重宝されています。
とは言え「LCR」「インピーダンス」についてあまり詳しくない方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、LCRメータについて、またLCRメータを理解するうえで欠かせないインピーダンスについて解説致します。
1. LCRメータとは?
LCRメータとは、電子回路の中でも抵抗・コンデンサ・インダクタと言った受動素子の値を計測するための機器です。
インダクタはL、コンデンサはC、抵抗はRと表記されるため、このような名称となっているのでしょう。
ちなみに受動素子というのは、電力の供給や増幅、整流などといった能動的な働きをせず、供給された電力を蓄積したり放出したり、あるいは消費したりといった受動的な動作をする素子です。
これら受動素子は、構造やパーツ精度、素材などによって特性が異なります。
それぞれでどのような値を計測しているかは後述しますが、これを正確に知ったうえで用いないと期待する働きを見せてくれず、結果として所望の電子回路が作成できないことを意味します。
各受動素子の値をLCRメータで測定したうえで、用途に合わせて理想的な回路を工作することが望まれます。
2. LCRメータの計測方法
LCRメータはインピーダンスを計測に用います。
インピーダンスとは「流れる電流と印加する電圧の比率」です。つまり抵抗です。
すなわちインピーダンスは交流回路における「電流の流れづらさ」を示します。
「妨げる」を意味する、英語のimpedeが語源となっています。
ただし抵抗ではありません。なぜならインピーダンスは抵抗とリアクタンス(コンデンサやコイルなどといった素子の電流の流れづらさ)の双方を表す用語であり、素子そのものではないためです。
ある素子のインピーダンスを計測することは、その素子がどのような条件下で電流が流れづらくなったり、逆に影響を受けなかったりするのかを確認することができます。
つまりLCRメータでは、条件ごとの「電流の流れづらさ」から受動素子それぞれの特性を知れるというわけです。
LCRメータは測定したい受動素子に、周波数や交流電圧を印加します。
印加後の各素子の電流と電圧の大きさ、そして位相差を計測することでそれぞれのインピーダンスを求めます。
LCRメータでは基本的には初期設定で等価回路がモデルとなっており、パラメーターに換算して各数値を計測します。
例えば抵抗。
抵抗は基本的に直流・交流で抵抗値が変化することはないと言われていますが、これはあくまで理想的な値であり、実際には寄生インダクタンスや寄生容量が見受けられます。とりわけ周波数が高くなるほど、リアクタンスのようにふるまうことがあります。
LCRメータでインピーダンスを計測することは、どの程度までの高周波領域で用いることができるのかを知ることに繋がります。
コンデンサの場合は、静電容量が大きいほどインピーダンスは低くなり、また周波数が高いとやはりインピーダンスが低くなります。
つまりインピーダンスを計測することで、周波数特性はもちろん静電容量の特性も得られることを意味しています。
コイル(インダクタ)の場合は交流で抵抗を強めるため、被計測抵抗器にいくつかのテスト周波数を流すことでインピーダンスがどのように変化するかを見れば、周波数特性を得ることができます。
LCRメータを使って各素子の各値を正確に知ることで、用途に合った適切な部品購入や使用が可能となります。
LCRメータとは、電子回路の中でも抵抗・コンデンサ・インダクタと言った受動素子の値を計測するための機器。
一般に市販された素子をご購入になる場合は、データシートにこういった周波数特性は記載されているものです。
しかしながらLCRメータは部品のサプライヤーはもちろん、メーカーの製品開発や品質管理、あるいはより詳細な値の特定によって所望の電子回路を作ることには欠かせない機器となっております。
近年では各メーカーから多機能品や低価格品、小型軽量品など多彩なラインナップが展開されています。
操作性もよくUSBといったインターフェースが充実したLCRメータもございますので、ぜひご自身に合ったLCRメータをお選び下さい。
なお、LCRメータの接続方法には2端子法や3端子法、4端子法等があります。
方法によって操作性や使用環境下での誤差が変わってきますので、お気をつけ下さい。
また測定方法にも、いくつか種類があります。
代表的なものは「自動平衡ブリッジ法」と「RF I-V法」です。
自動平衡(じどうへいこう)ブリッジ法はLCRメータが4端子を有し、かつその4端子全てに被測定素子が接続される手法です。
原理はオペアンプの応用です。
広範囲のインピーダンス測定を高精度で行うことができ、また測定の温度範囲も広いです。
一方で回路が複雑になるため100MHzを超える高周波域での測定には向きません。
RF I-V法は高周波域での測定に向くLCRメータの方式です。
RF I-V法は広帯域の電流検出トランスを用いており、被測定素子に流れる電流(I)とそれに比例した電圧(V)によってインピーダンスを測定します。
その他ブリッジ法や共振法などが用いられてきました。
3. まとめ
LCRメータについてご紹介いたしました。
LCRメータとはLCRメータとは、電子回路の中でも抵抗・コンデンサ・インダクタなどの受動素子における特性を求めるための測定デバイスであること。
計測にはインピーダンスを利用しており、各素子がどういった条件下で電流が流れづらくなったり、あるいは影響を受けなかったりするのかから測定できること。
種類があるため、ご自身の用途にあったLCRメータを選ぶことをお伝えいたしました。
製品開発や商品管理に携わる方は、知っておきたいデバイスですね。