今やあらゆる電子デバイスに搭載されているマイコン(マイクロコントローラー,マイクロコンピューター)。
電子工作を始めようとするにあたって、マイコンを理解することは非常に大切です。
とは言えマイコンと一口に言っても様々な種類・製品があり、どこから調べていけばいいのかわからない…
そんな悩みに直面される方もいらっしゃるでしょう。
マイコンの種類分けは様々な観点から可能ですが、大まかに「機能」で分けるとワンチップマイコン,ワンボードマイコン,シングルボードマイコンの三種が挙げられます。
この記事では、これら三種のマイコンがどのような機能を果たし、またどのような製品があるのかを解説致します。
1.マイコンの種類①ワンチップマイコン
家電やウェアラブルデバイス等、様々な電子デバイスに搭載されるのがワンチップマイコンです。
デバイスの制御には絶対不可欠な存在と言っていいでしょう。
本項で詳しく解説致します。
【概要】
「ワンチップ」の名称通り、RAMやROMといった記憶装置,あるいはCPUのような計算装置・・・各種機能を搭載した集積回路(ICチップ)がワンチップマイコンです。
世界で初めて市販化されたマイコンは、1971年に開発されたIntel 4004と言われています。
1957年、カシオ計算機(当時の社名は樫尾製作所)が、世界で初めて順電気式計算機「14-A」を開発して以降、電卓の小型化・高性能化があらゆる産業界から要請されるようになりました。
なぜなら電気的な計算処理はこれまでの人力から大幅な効率化を実現させたためです。
この電卓のためにLSI開発競争が進み、ワンチップマイコンがついに発明されるに至りました。
このワンチップマイコンが急速に広まった理由の一つが「ユーザー自身で動作変更が可能」な点です。
当時既に様々な電子デバイスに搭載されたICはありましたが、そのいずれも汎用性は低く、製品開発や製造の度にICもまた開発をしなくてはならないといった難点を抱えていました。
しかしながらワンチップマイコンでは、ソフトウェアによってユーザーが動作書き換えを行い、目的に応じた開発環境を整えられるといった大きな魅力を有していたのです。
現在でもこの特性は変わっておらず、ワンチップマイコンはC言語などのプログラミングによって、ユーザーが何度でも書き換え可能となっています。これこそが、ワンチップマイコンの大きな利点です。
また、小型化が容易なうえにスピーディーなのも嬉しいところです。
なお、誕生当初は計算処理が主な役割でしたが、現在はスイッチやセンサー類を同時に用いて様々な制御を行うことが可能です。
とは言えワンチップマイコンは拡張性はないので、必要に応じた機能を有した製品を購入のうえ、実装する必要があります。
どういうことかと言うと、パソコンのようにワンチップマイコンによってデータ入力をしたり、動画を再生したりすることはできません。
しかしながら例えばエアコンに、「室内温度を感知する」「室内温度とユーザーの設定温度を比較する」「比較したうえで冷やすまたは温める」「リモコンの信号を受信する」「受信したうえで適切なスイッチングを行う」・・・
これらの動作全てがそれぞれのマイコンによって、スピーディーに処理されている、というわけです。
ちなみにワンチップマイコンは低価格なのも嬉しいところ。
一つ数百円程度で販売されていますし、製品展開も豊富です。
プログラムの書き込みに製品のブランドに応じたライターが必要となり、それは10,000円程度しますが、開発環境の初期投資と考えれば高いとは言えないでしょう。
2.マイコンの種類②ワンボードマイコン
ワンボードマイコン(またはワンボードコンピューター)とは、一枚のボード(プリント基板)上に必要機能を搭載させたマイコンです。
「必要機能」とは言えシンプルで、マイコン・入出力装置・電源装置といった具合です。
このボードはワンチップマイコンほど小さくはありませんが、こちらも名刺サイズ程度に収まっていることがほとんどです。
とは言え一口にワンボードマイコンと言っても、黎明期と現在ではやや意味合いが異なります。
もともとは評価ボードの一種として用いられていました。
評価ボードとは製品の半完成品をボード上に載せたデバイスで、試作段階での動作確認を行うことが目的となります。
現在では一般ユーザーや初めて電子工作を行うユーザーでも簡易に使えるワンチップマイコンといった立ち位置。
後述するシングルボードマイコンと似たような立ち位置となりますがOSは搭載しません。
また、ワンチップマイコンのようにC言語などのプログラミングによって書き込みを行い、また各種スイッチングやセンサーによって様々な機能を実現することが可能となります。
よく普及している製品としては、Aruduino(アルデュイーノ)が挙げられます。
オープンソースのワンボードマイコンであり、学生や一般ユーザーでも低価格で使用することのできるボードとして高名です。
もちろん企業の使用例も多く、インターネット上にノウハウが出回っているため、初めて電子工作に携わる方にとってはまず使ってみたいワンボードマイコンではないでしょうか。
3.マイコンの種類③シングルボードマイコン
シングルボードマイコン(シングルボードコンピューター)とは、簡単に言うと前述したワンボードマイコンにOSを搭載したタイプのプリント基板となります。
OSとはWindowsやAndroidに代表されるオペレーティング・システムのことで、もちろんプログラミングによって書き換えもできるのですが、パソコンとしても機能するといった優れもの。シングルボードマイコンにキーボードやマウス,ディスプレイを接続すれば、超ハイスペックとはいかないものの、小型パソコンのように動作させることも可能です。
なお、使えるOSは主にLinuxとなっております。
ワンチップマイコンやワンボードマイコンと比べると、シングルボードマイコンはかなり後発です。
2000年代から徐々に製品化が進められていきましたが、2012年のRaspberry Pi(ラズベリーパイ,ラズパイ)で爆発的に普及することとなりました。
Raspberry Piもまたオープンソースであることが特徴ですが、さらにもともと教育用途で開発された経緯があるため、より幅広い層にまで認知されていることがポイントです。
電子工作に携わったことがない方でも、その名前は知っていることが多いでしょう。
CoreStaff ONLINEのマイコン(マイクロコントローラー)に関連するメーカー一例は
▶STMicroelectronics<STマイクロエレクトロニクス>
3.まとめ
マイコン(マイクロコントローラー)について、主に機能で種類分けされる「ワンチップマイコン」「ワンボードマイコン」「シングルボードマイコン」についてご紹介致しました。
簡単に分類すると、ワンチップマイコンがコンピューター草創期、小型化と高性能化を目的に開発されたICチップの一つであること。
現在では各種スイッチやセンサーを搭載することで電子デバイスに様々な機能を実現させていること。
ワンボードマイコンとはワンチップマイコンをより簡易に使えるボードであり、
オープンソースの製品が普及していること。
シングルボードマイコンはOSを搭載したワンボードマイコンであり、
学生や一般ユーザーはもちろん、企業でもよく用いられていることをお伝えできたでしょうか。
この機会に、ぜひマイコンの種類を抑えてみて下さい。