家庭でのインターネットの爆発的な普及に貢献した「ADSL」。
日本国内ではフレッツ社が2000年からサービスを開始しました。
ある一定の世代の方々にとっては馴染み深いのではないでしょうか。
「ダイヤルアップ接続」「ISDN」などを用いていた頃には考えられない高速かつ大容量通信が可能で、かつインターネットを月額制で利用できることの先駆けにもなった、インターネット史において非常に意義深い存在です。
スプリッタは、ADSLで必ず使われる電子機器です。
電話機とモデムそれぞれに接続される、あるいはモデムに内蔵されていることもありますが、スプリッタがなくてはスムーズな電話回線利用やインターネット接続はできません。
この記事では、スプリッタとはどのような機器なのか、その使い方などを解説いたします。
併せて「スプリッタ」の名前を持つ、その他電子部品もご紹介いたしますので、この機会にぜひチェックしてみてください。
1. スプリッタとは
スプリッタはsplitter「分裂させるもの」という意味の用語で、DSLフィルタや周波数分波器などと呼ばれることもあります。
この名前の通り、信号を分岐させるために開発されました。
どういうことかと言うと、一つのアナログ電話回線から伝送されてきた信号を、「電話用」と「インターネット用」に分別してから送り込む、というものです。
今でこそひかり電話やIP電話などが出回っていますが、昔ながらの電話回線と言えばアナログ信号です。
しかしながらADSLはデジタル信号(デジタル加入者線:DSL:Digital Subscriber Line)を用います。
そのため、アナログ回線は音声を電話線に載せて伝送できることに対し、デジタル回線では音声を「0」「1」の2進法でのデジタル信号に変換させなくてはなりません。
そこでアナログ・デジタル用の信号にスプリッタで分岐させることで、同一回線でそれぞれの機能を用いることができる、というわけです。
ただし気を付けてほしいのが、ここではまだデジタル信号には変換されていない、ということ。
デジタル変換を行うのは、後述するモデムの役割となります。
逆にインターネット側から電話機側へスプリッタを用いて信号を送り込むことも可能です。
低周波信号と高周波信号を合成します。
こういった機能から、スプリッタを混合器として利用するケースも見られます。
なお、「電話」とひとまとめにしていますが、電話機と同様にアナログ回線を使用するファクシミリやアナログ・モデムなどもスプリッタを用いてデジタル加入者線と一緒に併用することが可能です。
2. ADSLとは?なぜスプリッタが必要?
ADSLとは、DSLの派生サービスです。
速度や距離ごとにCDSLやSDSLなどもありますが、冒頭でも述べたように、ご家庭でのインターネット利用を普及させたのはADSLの功績でしょう。
DSL自体がデジタルデータ通信を用いてインターネット接続することを示します、これによって、従来のアナログ通信では信じられないような出来事を次々と実現しました。
アナログとデジタルの大きな違いの一つに、周波数があります。
アナログが低周波であることに対し、デジタルは高周波ですね。
一般的に、高周波であるほど高速であり、かつオリジナルの音声をそのまま伝送するアナログ回線と異なり、長距離でもノイズの影響を受けづらいというメリットがあります。
では、デジタル回線だけでインターネットを賄えばいいかと言うと、昔はそうではありません。
現在は光通信や無線LANなどが主流となってきましたが、当時ADSLがポピュラーになれた要因の一つに、「既存の電話回線をそのまま使える」ということが挙げられます。
つまり、もともとNTT社がサービス展開していた電話回線の空いた部分を利用して高速インターネット通信を楽しめる、というメリットが大きかったのです。
そのためADSLは、基本的には電話が引けるところであればどこででも利用することができました。
もちろん今では光通信などの方が断然高速なのですが、マンションやアパートなどの集合住宅だと、その住宅施設全体が光回線に対応していなければ利用することはできません。
これを鑑みれば、ADSLがいかに浸透しやすかったかが容易に推察できますね。
ただ、周波数の帯域が異なる信号を同時に使うことはできません。
そこでスプリッタを使って一つの電話回線をアナログに使えそうな低周波・デジタルに使えそうな高周波に分け、一方は電話機に、一方はADSLモデムに伝送する、という手法が採られるようになりました。
そのため前述の通り、スプリッタをDSLフィルタや周波数分波器などと呼ぶことがあるのです。
ちなみにこのスプリッタとモデムが一体になった機器もリリースされています。
分波されることで、同一回線を使っているにも関わらず、電話用・インターネット用でそれぞれが干渉しあうことはありません。
なお、ADSLは2023年をもって廃止となります。
そもそも2025年にはアナログ回線が廃止してしまうのです。
居住地域に光回線が敷かれていない場合は継続できるようですが、利用者数が年々減っていることを見ても、いずれ完全に光通信へと変わっていくことでしょう。
3. スプリッタの使い方
スプリッタは三つの端子を持ちます。
一つを電話回線側(Phone端子)に、一つをモデム側(Modem端子)に、そしてもう一方を加入者線からの配線側(LINE端子)に接続します。ちなみに先ほど少し触れましたが、Phone端子をファクシミリに接続して使用することも可能です。
また、スプリッタが内蔵されたモデムを使用する場合は、電話機もモデムに繋ぐこととなります。
なお、スプリッタ単体で駆動するわけではありません。加入者は、いくつかの周辺機器が必要になってきます。
そんな中で絶対不可欠なのがADSLモデムです。
モデムは信号をインターネット通信用のデジタル信号へと変換するために用いられます。
スプリッタで分波されたデジタル信号はモデムに到達し、その後初めてパソコンなどにインターネット回線を送り込むことができる、というわけです。
4. まとめ
ADSLに欠かせないスプリッタをご紹介いたしました。
スプリッタとはDSLフィルタ分波器とも呼ばれるように、電話回線からの信号を低周波・高周波に分岐させ、電話機・ADSLモデムそれぞれに適切な信号を伝送させるデバイスであること。
ADSL自体がアナログに当たる電話回線を利用することを前提にしたものであるため、どうしてもスプリッタが必要なこと。
ただし実際にADSLインターネットの高速通信に使われるデジタル信号に変換するのはモデムであることをご理解いただけたでしょうか。
もしご家庭でADSLを使っていたら、この機会にスプリッタの存在をチェックしてみてくださいね。