普段何気なくパソコン上でファイルを圧縮したり展開したりしていますが、この作業は、デジタル回路上でデータを「符号化(エンコード)」「復号(デコード)」することで実現しています。
また、音楽を再生したり録音したりすることも、このエンコードとデコードの繰り返しです。
エンコードを行うハードまたはソフトウェアをエンコーダー、デコードを行うハードまたはソフトウェアをデコーダーと呼びます。
そして、今やエンコーダーとデコーダーは、私たちの生活に欠かせません。
これらがなければ、膨大なデータを送受信することもできなければ、音楽や動画というアナログ形式のデータをデジタルデバイスで楽しむことはできないためです。
さらに近年では、バーコード・リーダーやロボットなどの最先端技術でも重宝されています。
この記事では、「デコーダー」に焦点を当てて概要や役割、用途を解説いたします。
1. デコーダーとは?
デコーダーとは、デコード(復号)するためのデバイスを指します。
プログラムなどのソフトウェアの場合もあれば、デバイスや回路などのハードの場合もあります。
「復号」と言うからには、まず先に符号化があるわけですが、なぜこれらの過程が必要なのでしょうか。
それは、符号化することでデータを用途にあった形態に変換できるためです。
冒頭でも簡単に解説しましたが、昨今のCPUが扱うデータはきわめて膨大です。
大きいデータのまま転送することは、使っているコンピューターにも負荷がかかってしまいますし、例えばそのままメールなどで相手に送るとすると時間や通信費・使用する通信量が莫大になってしまいます。
そもそも、現在のメーラーには容量制限がありますね。
そこで私たちはZIP形式などに圧縮して送ることになります。
圧縮とは、本当にオリジナルのデータをそのまま小さくしているのではなく、別の容量の少ないデータ形式に変換する、ということです。
この圧縮が符号化(エンコード)であり、展開など復号を行うのがデコーダーです。
圧縮されたデータはオリジナルではないので、そのままでは閲覧することができないため、必ず復号しなくてはなりません。
また、アナログ信号とデジタル信号間の変換でもエンコーダーおよびデコーダーが活躍します。
私たちが見たり、聞いたり、感じたりしていることはアナログに分類されます。
一方のデジタルは基本的に交わらない「0」と「1」で構成される世界ですので、アナログで表現できることを出力する、というのは不可能です。
その逆も然り。
デジタル回路では膨大な量のデータを高速で送受信することができますが、アナログは「0」「1」だけでデータを構成することはできないので、送受信できるデータ容量も速度も限られています。
例えば動画を圧縮やリサイズなどせずにそのまま送った場合、時間が大幅にかかってしまいます。
もっとも、現在のメールやLINE等のインターネット経由の交換手段は、自動的にリサイズされるものがほとんどですが、とにかくデジタルデータに変換、つまりエンコードすることで高速送信することが可能となります。
そして受信側ではデコーダーを用いて復号し、アナログ信号へと変換させ、オリジナルのデータを楽しみます。
このようにエンコーダー・デコーダ―はデジタル通信には必要不可欠な代物です。
■エンコーダーとデコーダーは必ずセットで使われる?
ここまでエンコーダーとデコーダーを並列してご紹介してきましたが、この二つのデバイスは必ずしも一緒に使われるわけではありません。
例えば映像や音楽再生のみの機能を持ったDVDプレーヤーや地上デジタル放送に対応したテレビなどはデジタル信号を復号するデコーダーのみが搭載されます。
しかしながら、コンピューターや携帯電話など膨大なデータを取り扱ったり、ネットワークによって信号伝送を行ったり、データを記録したりするデバイスにおいては、エンコーダー・デコーダ―がどちらも必要となってきます。
なお、エンコーダー・デコーダ―両方の機能を持ったコーデックというデバイスも各メーカーからラインナップされています。
★コーデックについての詳しい解説はこちら
2. デコーダーの種類と用途
デコーダーは用途によって様々な種類があります。
これまでデータの圧縮・展開について一例として用いてきましたが、画像ファイルに主に使われるデコーダーは、GIF(Graphics Interchange Format)やJPEG、PNG(Portable Network Graphics)などが挙げられます。
動画ファイルだと、現在最も標準的な国際規格H.263やH.264、あるいはMPEG2-PSやMP4などが有名です。
音声ファイルではAAC(Advanced Audio Coding)、AC-3などがあります。
ただ、これらはエンコーダー・デコーダーが一緒になったコーデックとして扱われます。
純粋なデコーダーですと、文字コードを復元するJISやUTF-8/16、Unicodeなどが挙げられます。
よく意味不明な記号や漢字の羅列を指して、「文字化けした」といった話を聞いたことがありませんか?
この文字化けは、エンコーダーとデコーダーの形式が異なった場合に起こる現象です。
デコーダーでエンコードした時と同じ文字コードに復号してあげれば、正しい文字列が表示されます。
また、ブログなどを運営されている方はご経験があるかもしれませんが、「パーマリンクを日本語にしたら、なんだかよく分からない文字列がたくさん出てきた」といったケースがあります。
これは、多くのブラウザでは日本語が認識できないため、ブラウザ側でURLをエンコードしたことで発生しています。
ブラウザが扱える半角英数字に勝手に変換しているのです。
URLデコーダーを用いることで、もともとパーマリンクに使っていた日本語に復元することが可能です。
こういったデジタルデータ上でのデコーダーの他、前述したように録音・再生機器に用いられたり、録音機のノイズリダクションで重宝されたりすることもあります。
加えて、LINEのIDを交換したり会員登録したりする際によく用いられるようになってきた、バーコード・リーダーもデコーダーの大切な役割です。
バーコードの波形をデコーダーによって顧客情報やURLなどに復号することで、スマートフォン上の画面などでアナログなやり取りができるようになります。
さらに近年では、冒頭でも言及したように、ロボット研究にも用いられます。
例えば現在、ロボット制御に人間の意思を反映させる研究「BMI(ブレイン・マスター・インターフェース)」が進んでいます。
この研究の手法の一つに、人間の脳活動の無数のデータから、ある意図(例えば腕を動かす、頭を動かすなど)の波形を取り出す、というものがあります。
ここでデコーダーを用いることで波形をアナログ信号に復号させ、ロボットに反映させることで、意思とロボット制御を連動させる、というものです。
まだ研究中の分野ではありますが、デコーダーの活躍によって、人類の夢は広がり続ける、ということを是非知っておきたいですね。
3. まとめ
デコーダーについて解説いたしました。
デコーダーとは、符号化(エンコード)したデータを復号(デコード)させるためのデバイスであり、エンコーダーおよびデコーダーがなければ、膨大なデータを送受信したり、動画や音楽などといったアナログ信号をスマートフォンやパソコン上で楽しめなかったり、あるいはそもそも録画・録音も容易ではありません。
デコーダーはバーコード・リーダーやロボット研究など、私たちの生活をより進歩させてくれる最先端の分野でも活躍していることなどをご理解いただけたでしょうか。
動画を見たり音楽を聴いたりする時に、ぜひデコーダーの存在を思い出してみましょう。
きっと理解が深まるはずです。
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