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SSR?SSD?ソリッドステートってどんな意味?

「ソリッドステートリレー」「ソリッドステートドライブ」「技術をソリッドステート式にする」などといった言葉を目にしたことがありませんか?

1948年のトランジスタ開発から続く半導体時代にあって、私たちの身の回りの電子機器の多くはこのソリッドステート式に拠って成り立ってきました。

また、自動運転などと言った、未来の新技術でも注目度が高まっている概念です。

そんなソリッドステート、実はどんな意味かわからない、と言った方もいらっしゃるでしょう。

そこでこの記事では、ソリッドステートとはどのような技術であるか、また、ソリッドステートの代表的な使用例をご紹介いたします。

ソリッドステートのひとつソーラー電池を利用しているソーラー時計

1. ソリッドステートとは?

ソリッドステートはしばしば「半導体」と訳されることがあります。

また、「機械的な可動部のない電子部品・電子機器」を指してこう呼ぶこともあります。

どちらも間違いではありませんが、ソリッドステートの説明としては不十分です。

ソリッドステート(solid state)とは、固体状態を指す英語です。

ちなみに紳士服売り場でソリッドタイと言う用語を見かけるかもしれません。

無地のネクタイを指すのですが、固体⇒カッチリした、と言ったニュアンスで使われています。

エレクトロニクス産業においては、真空管とトランジスタを対比するために用いられてきました。

1 真空管とトランジスタの違い

真空管とは半導体が発明されるまでに整流・増幅器として用いられてきた電子素子です。

種類や用途によって構造は異なりますが、真空管の仕組みを簡単に解説します。

ガラスなどのチューブ内に複数の電極(フィラメント)と金属のプレートが配置されており、かつチューブ内は真空状態となっています。

このチューブの中に少量のガスや水銀を入れフィラメント電極に電流を流すと、高温によって熱電子が発生し、その電子がプレートに移動していきます。

この時チューブ内は真空であるため、酸素などの分子によって移動が邪魔されません。

こうして電子が移動していくことでフィラメントからプレートにむけて電流が流れることとなり、構造によって整流したり、増幅したり、あるいは発振したりといった役割を担います。

しかしながら真空管はいかんせん大きく、壊れやすく、かつ消費電力が大きいことが難でした。

1948年にトランジスタが発明されると真空管にとって代わっていき、半導体が注目されるようになります。

トランジスタ(および半導体)は真空管とは異なり、シリコンなどの半導体材料内部で真空管と同じ働きを発生させます。

例えばトランジスタはp型半導体とn型半導体用い、それぞれの半導体内部の電子の移動を利用して電流を流さなかったり、増幅させたりする素子ですね。

このように、固体状の物質内部で起こる電子現象を利用した素子や回路、装置をソリッドステートと呼ぶようになりました。

こういった経緯から、半導体と同義で用いられることもあります。

なお、ソリッドステートが世に輩出されたことから、小型・軽量で高性能な低消費電力電子機器が私たちの身の回りを取り囲むようになりました。

現在、真空管がまだ使用されている無線送信機器や真空管アンプなどの一部を除き、ほとんど全ての電子機器はソリッドステート式に置き換わりつつあると言ってもいいでしょう。

2 ソリッドステートのもう一つの意味

真空管との対比、すなわち半導体を指す以外に、もう一つソリッドステートの意味があります。

それは、機械的な可動部を持つ装置の対義語として用いる、というもの。

例えばメカニカルリレーに対してソリッドステートリレー、というものがあります。

リレーとは継電器のことを指し、電気信号や電流を電子回路に伝送させるための素子です。

このリレーにおいてスイッチ機能は欠かせません。

スイッチのオンオフによって入力端子から入ってきた電気信号を駆動回路・出力回路に送りこんで出力させるためです。

このスイッチは長年「有接点リレー」とも呼ばれる機械的な可動部によって担われてきましたが、機械であるためどうしてもパーツの摩耗などが原因で寿命がきます。

そこで、このスイッチにフォトカプラと呼ばれる光素子を用いることで、光を通して入力信号・電流を出力側に伝えるようにした機器がソリッドステートリレーです。

無接点リレーとも呼ばれます。

このように、半導体を用いて機械的な可動部をなくすことをソリッドステートと呼ぶようになりました。

2. ソリッドステート式を採用するメリット

現在、私たちの身の回りのあらゆる電子機器はソリッドステート式に置き換わりつつある、と申し上げました。

もちろんメカニカルリレーやハードディスク、蛍光灯、チューブアンプなど、現役で活躍している非ソリッドステート機器は少なくありません。

別添えのコントローラーなどは不要で、比較的低価格で回路を実現できるためです。

しかしながらソリッドステート式であれば駆動部品がいらず、パーツ同士の摩耗や寿命を気にしなくてもいいこと。

軽量・小型化が容易であること。エネルギー消費を抑えること。

機械的な駆動パーツがなくなることで、多くの部品を直列または並列に並べる、など、配置レイアウトが自在にアレンジできると言った多数のメリットを有しています。

3. ソリッドステート式を用いた電子部品・機器の紹介

ソリッドステート式を用いた電子部品・機器はどのようなものがあるのでしょうか。

また、どのような使われ方をしているのでしょうか。

代表的なものをご紹介いたします。

① ソリッドステートリレー(SSR)

「ソリッドステート」として最もよく聞く用語が、SSRではないでしょうか。これは、ソリッドステートリレーを意味しています。

前項でもご紹介しましたが、リレーは日本でいうところの継電器です。

スイッチングによって電気信号や電流を電子回路に流したり遮断したりする機器で、私たちの生活だとリモコンや自動販売機などで用いられます。

今例に挙げた機器は、スイッチ一つで目的を達成するためのものです。

通常、家電製品を起動したり容量のある缶ジュースを引き出したりするには、大きな電力消費を必要とします。

しかしながらリレーは小さな電流によってスイッチのオンオフを行って回路を繋ぎ、その先のプロダクトへと大電流を流すことで所望の動作を引き出すことを実現します。

これによって消費電力を低減したり、実際の大電流を遠隔操作できるためスイッチおよびそれを操作する人間が感電してしまうようなリスクを防いでくれるのがリレーの大きな役割となります。

このスイッチ部分、従来は機械的な可動部が担ってきました。

鉄心が巻かれたコイルに小電流を流し、磁界ができて磁石のようにふるまったこのコイルに可動式のパーツが引き寄せられ、接点が接触したり離れたりして電子回路を制御する、といった仕組みです。

この構造から有接点リレー(有接点シーケンス)などと呼ばれています。

大電流下での使用にも向いているうえに温度変化にも優れており、また多極式にして多数の出力回路を得ることができるという一方で、機械的な可動部に依存するためスイッチングの回数には上限があります。

どうしても摩耗や劣化が避けられず、経年によって使えなくなってしまう(あるいは使えたとしても危険)のです。

衝撃や振動も、機器の動作に悪い影響を及ぼします。また機械的な可動には動作速度に限界があることも事実です。

そこで注目されているのが、ソリッドステートリレーなのです。すなわち、半導体を用いたリレーです。

半導体の電気信号を利用したリレーとなり、機械的な可動部を持たないことから無接点リレー(無接点シーケンス)とも呼ばれています。

ここで使われる半導体素子としては、フォトカプラが挙げられます。

入力端子(または入力回路)の間に上記のスイッチングのための半導体素子(フォトカプラ)を挟み、後に駆動回路・出力回路・半導体素子・出力端子と続く構造が一般的です。

このフォトカプラ(フォトアイソレータ、オプティカル)というのは発光ダイオードとフォトトランジスタやフォトサイリスタ等の受光素子で構成された電子部品です。

ちなみに英語でPhoto Couplerと表記し、光でカップリングするといった意味合いがあります。

このフォトカプラ、「発光素子」と「受光素子」を有する、というのがミソ。

電流を流すとダイオードが発光し、その光が受光素子に入射します。すると受光素子部分から光起電力が生じ、電流が流れる仕組みとなっています。

このフォトトランジスタ自体は応答性に優れるというわけではありません。

しかしながら入力信号を数百~1000倍ほども増幅させて出力させることができるため、少ない電流で大きな電力を動かすリレーとして特性に優れていると言えます。

このソリッドステートリレー、光によって信号の伝送を行うため、繰り返しになりますが機械的な接点を持ちません

つまり、発光ダイオードが発光することでフォトトランジスタに電流を流すため、入力側・出力側に電気的・物理的な繋がりはないのです。

前項でも言及していますが、これこそが、ソリッドステートリレーの大きな特徴であり利点です。

機械的な可動部を持たないためスイッチングによる金属パーツの摩耗はなく、そのため何度でもスイッチングすることが可能です。

高頻度のスイッチングを必要とする環境下において、ソリッドステートリレーは大変重宝されています。

機械的なパーツも少なくなるため衝撃や振動に強いこと。長寿命であること。

また電気信号がスイッチの駆動となっているため、高速スイッチングが可能なことも使用のメリットとして挙げられます。

その他では小型軽量化が容易なこと。また制度や応答時間、感度が安定していることなども嬉しいところですね。

ちなみにソリッドステートリレーは「スイッチング回数による寿命はないけど、素子自体やはんだ付けの劣化などは発生するため取り換え周期はある」といった声もありますが、有接点リレーと比べると驚くべき長寿命を有していると言えます。

なお、使用推奨年数はメーカーによって異なってきます。

一方でソリッドステートリレーはオン抵抗を考慮しなくてはならない、といった面もあります。

メカニカルリレーではあまり気にされることはありませんが、ソリッドステートリレーにはオン時に抵抗値が発生し、電力を消費してしまうことはもちろん、熱として放出されてしまいます。

発熱が大きくなると破壊されてしまうので、放熱対策が求められます

ちなみにソリッドステートリレーは定格を超えると破壊されてしまうことがほとんどです。

使用環境によって事前に製品の定格を確認しておくことが、きわめて重要です。

大電流下ではそれだけ大型のヒートシンクが搭載されることが多くなり、小型なソリッドステートリレーのメリットが打ち消されてしまうことに繋がります。

そのため大電流下での使用は有接点リレーの方が適しているといった声もあります。

またリーク電流(漏れ電流)にも配慮しなくてはなりません。

また温度特性があまり高くないこと

有接点リレーと比べると高価格帯になることも特徴の一つです。

なお、ソリッドステートリレーは多くのケースでa接点は一つとなり、直流電流での駆動であることが一般的となります。

② ソリッドステートドライブ(SSD)

SSDはメモリ装置です。

従来のハードディスクドライブ(HDD)に代わって、やはりソリッドステート式が注目されるようになってきました。

従来のHDDはプラッタと呼ばれる磁気ディスクが複数内蔵されており、それらが高速回転することによってあらゆる位置に記録されたデータを読み取り、保存していくものです。

保存できるデータ量が多く比較的安価でしたが、ディスクなどといった構成するパーツが多く、機材に収めるためのスペースが必要であったり、衝撃に弱かったりといったデメリットを持ちます。

そんなHDDの代替品として誕生したのがソリッドステートドライブです。

HDDと異なり、記憶媒体にディスク、あるいはモーターやヘッドなどといったメカニカルなパーツを用いず、メモリチップを用います。

このチップは半導体で構成されているため、ソリッドステートドライブのことをシリコンドライブや半導体ドライブなどと呼ぶこともあります。

仕組みはフラッシュメモリです。

1980年代、東芝社が開発しました。

これは、電圧印加によって読み込みたい情報の電子をチップ内部に格納し、逆に消去したい時は逆電圧をかけ、電子を追い出すものです。

省スペースが可能で耐衝撃性にも優れ、また、直接メモリチップに記憶させるため、アクセス速度が速いという利点があります。

HDDの代替品という誕生経緯があるためHDDと同じ外観・インターフェースを持ち、変わりに使用することが可能です。

一方でデータの書き換えに回数制限があったり、容量が少なかったり、HDDと比較してお値段が高め、という課題もあります。

また、揮発性メモリであるため、何かあった時にデータが消失してしまいます。

ソリッドステートドライブは、現在ノートパソコンを中心に利用されています。

③ LEDランプ

Light Emitting Diodeの略称であるLED。

発光ダイオードを指しますね。

初代LEDにあたる赤色発光ダイオードは1962年開発と歴史のある半導体素子ですが、ソリッドステートの代表モデルとも言えます。

そのため、ソリッドステート・ライティングといった呼称もあります。

と言うのも、LEDが開発されるまでは、ガラス級でできた白熱電球や、ガラス管に入った蛍光灯が光源として用いられてきました。

これらはもちろん今でも使われつづけている照明器具ですが、ガラスを外装に用いている以上衝撃などで割れやすく、また、寿命が早いことは避けられませんでした。

一方のLEDは半導体です。

p型半導体とn型半導体をくっつけた構造をしており、正孔と自由電子が結合することによって光ります。

このLEDは長寿命、低消費電力、優れた応答速度(スイッチを入れたら明滅はせずすぐに点く)、頻繁なオンオフを行っても劣化しないなど、日常生活において非常に利便性が高く、現在照明器具として普及がどんどん広がっています。

なお、半導体材料によって、発光色を変えることができるのもLEDのメリットです。

④ 太陽電池

1990年代、日本を代表する時計メーカー「シチズン」社からエコ・ドライブと呼ばれる新作時計が発表され、世界中で大きな話題となりました。

デジタルにしろ、アナログにしろ、電池式時計は内部に小型電池を内蔵します。

電池の寿命は通常二年ほど。電池切れのまま放っておくと、液漏れを起こして機械全体がダメになってしまうこともあるなど、やや面倒なメンテナンスは避けては通れません。

しかしながらエコ・ドライブは、文字盤部分にソーラーセルを搭載することで、太陽光で電源供給を行う機構を開発したのです。

これは、世界初のソーラー腕時計です。

そしてこの太陽電池もまた、ソリッドステートへのシフトの一例です。

仕組みは様々なのですが、pn接合型の半導体を用いることが一般的です。

いわゆるフォトダイオードを利用したもので、光の入射によって光起電力が発生し、その信号を駆動力として使う、というものです。

ちなみにフォトダイオードといった受光素子はソーラーセルとも呼ばれますが、セルがたくさんあればあるほど感度が高くなり、安定した電力供給を実現します。

しかしながらシチズン社のすごいところは、腕時計という直径が5cmにも満たない文字盤にソーラーセルを収めながら、効率も両立したことです。

なお、腕時計のみならず、石油に依存しない電力として、世界中で注目度が集まっているソリッドステート技術でもあります。

これらの他にも、デジタルカメラなどに用いられるイメージセンサやCCD、半導体レーザー、ジャイロセンサなどがソリッドステート技術として挙げられます。

4. まとめ

ソリッドステートと呼ばれる技術様式についてご紹介いたしました。

ソリッドステートとは「固体状態の」という意味が転じて半導体を用いた技術様式や機械的な可動部を持つ装置の対義語として使われること。

私たちの身の回りの電子機器は、続々とソリッドステート式にシフトしていっていること。リレーやメモリ装置、照明器具などのソリッドステート式の仕組みなどをお伝えできたでしょうか。

また、自動運転などといった、開発目覚ましい分野でも期待されています。

今後のソリッドステート技術から、まだまだ目が離せませんね!