※2024年5月30日ローム調べ
<要旨>
ローム株式会社は、スマートフォンや小型IoT機器などにおいて、温度、圧力、流量などを検知・計測したセンサ信号の増幅に最適な超小型パッケージのCMOSオペアンプ「TLR377GYZ」を開発しました。
新製品は、これまでロームが培ってきた「回路設計技術」、「プロセス技術」、「パッケージ技術」をさらに進化させることで、一般的にオペアンプでは難しいと言われている小型化と高精度化の両立に成功しました。
オペアンプの誤差要因として、入力オフセット電圧*1とノイズの発生があります。
これらは増幅精度に関係する項目で、どちらも内蔵するトランジスタ素子サイズを大きくすることで抑えられますが、小型化とは背反関係になります。
ロームは、独自の回路設計技術により開発したオフセット電圧を補正する回路を組み込むことで、トランジスタ素子サイズはそのままで最大1mVの低入力オフセット電圧を実現。
同時に、独自のプロセス技術により定常的に発生するフリッカノイズ*2を改善したほか、素子レベルから抵抗成分を見直すことで、入力換算雑音電圧密度*3 12nV/√Hzの超低ノイズも実現しました。
さらに、独自のパッケージ技術によりボールピッチを0.3mmまで狭小化したWLCSP(Wafer Level Chip Size Package)を採用。従来品比約69%、従来小型品比でも約46%のサイズ削減を達成しています。
<製品動画>
<新製品プレゼン”Featured Products”>
<背景>
スマートフォンやIoT機器では端末の小型化がますます進んでおり、搭載される部品にも小型化が求められています。
一方オペアンプについてはアプリケーション制御の高度化のために、センサからの微小信号を高精度に増幅する必要があるため、高精度を維持したままでの小型化が求められています。
こうした背景から、ロームは、これまで培ってきた「回路設計技術」、「プロセス技術」、「パッケージ技術」をさらに進化させることで、「小型」かつ「高精度」という2つのニーズを両立したオペアンプを開発しました。
<製品主要特性>
超小型かつ高精度な新製品は、モバイル機器で必要とされるシャットダウン機能を搭載しており、スタンバイ時の消費電流を削減できます。
<アプリケーション例>
・スマートフォン、計測センスアンプを搭載する小型IoT機器など
<リファレンスデザイン / アプリケーション評価キット>
Evaluation Board
TLR377GYZ-EVK-001
TLR377GYZ-EVK-001は、CSPパッケージであるTLR377GYZをSSOP6のパターンに接続するための変換基板です。
<高精度シミュレーションモデル「ROHM Real Model*4」について>
新製品の検証用シミュレーションモデルでは、ローム独自のモデルベース技術を駆使して、 IC実物の電気的特性と温度特性を忠実に再現することで、IC実物とシミュレーション値の完全一致に成功した高精度SPICEモデル「ROHM Real Model」を完備。
確実な検証により、実機試作後の手戻りを防止できるなど、効率的なアプリケーション開発に貢献します。
このSPICEモデルは、ローム公式Webから入手可能です。
<用語説明>
- *1) 入力オフセット電圧
- オペアンプの入力端子間に生じる誤差電圧のことを入力オフセット電圧と呼ぶ。
- *2) フリッカノイズ
- 半導体などの電子部品には必ず発生する雑音。パワーが周波数に反比例するので、低周波になるほど大きくなる。1/fノイズや、ピンクノイズと呼ばれる。雑音にはその他にサーマルノイズ(熱雑音・ホワイトノイズ)などがある。
- *3) 入力換算雑音電圧密度
- 入力端子間を短絡して,出力に現れた雑音電圧密度を入力端子に換算した値。アンプには、利得(増幅率)が存在するので、出力雑音電圧密度を利得で割ることでアンプ自体の雑音特性を公平に評価する。
- *4) ROHM Real Model
- ローム独自のモデルベース技術により、IC実物とシミュレーション値の完全一致に成功した高精度シミュレーションモデル。