モノのデジタル化やオートメーション化,またIoTが急速に普及していく中、比例するかのように重要度を増している素子は数多存在しますが、そのうちの一つがアクチュエータです。
例えば今お使いのスマートフォンに。
身の回りの家電に。そして近年ではロボット工学でも活躍しているアクチュエータは、ぜひ知っておきたいデバイスの一つです。
この記事では、アクチュエータの概要や種類,用途について解説致します。
目次
1. アクチュエータとは?
アクチュエータは英語で表記するとactuatorとなり、直訳すると「作動させるもの」。
この表記通り、アクチュエータは駆動装置とも呼ばれ、機器を任意に動かすためのデバイスです。
とは言え「動かす」といっても、色々な手法があります。
例えばスイッチングするのか、回転するのか、あるいは点灯するのか・・・
この答えは、様々です。
なぜならアクチュエータとはエンジンともなる動力源と機械部分を組み合わせられて構成されており、発せられた信号は機械部分を任意の運動へと変換させ、駆動するためです。
この任意の駆動は、直線運動であったり往復運動であったりらせん運動であったり本当に多種多彩。
仕事の数だけ動きがあると言って過言ではありません。
また、近年では非常に精密な制御を行うアクチュエータ製品もラインナップされています。
例えば車のワイパーを動かしたい時、ハンドル部分のレバーを使って制御するでしょうが、レバーを押しただけでは普通ワイパーの往復運動には繋がりませんよね。
しかしながらアクチュエータを取り付けることで、動力源から供給されたエネルギーがワイパーの機械部分にリンクして、往復運動を可能にします(仕組みは後述)。
また、カメラでレンズをズームイン・ズームバックする動作や扇風機の羽根をボタン一つで回転させるのも、アクチュエータとなります。
ちなみにモータやエンジンをアクチュエータに分類することもあり、広義の意味ではあらゆる産業をカバーしている、オールマイティーデバイスと言えます。
2. アクチュエータの種類とその仕組み
アクチュエータの仕組みとしては、動力源(エネルギー供給)+動力源を任意の信号へと変換する回路+機械的要素となっています。
例えば機械的要素にはギア等が用いられますが、どういった制御を行うかによってその形状・使われる素子は様々です。
そのためアクチュエータを種類分けするとなると、動力源に何を有するかが重要となってきます。
■ 電気式アクチュエータ
私たちの身近な家電を始め、多岐に渡る製品に組み込まれるアクチュエータで電気式が採られており、高効率かつ高精度な制御が可能であること。
加えて比較的小型軽量化が容易であることが特徴です。
近年パワーエレクトロニクス技術の需要が高まる中で、製品群の品質や信頼性が格段にアップグレードしたことも背景として大きいでしょう。
低速でも安定した動作が望めるのも、電気式アクチュエータの特徴でありメリットです。
電気式の動力はDC(直流),AC(交流)サーボモータの他、ステッピングモータや直線運動を行うリニアモータ(この中で直流・交流の種別あり)等が存在します。
■ 油圧式アクチュエータ
油圧式とはポンプのピストン運動によって油(非圧縮性液体)を循環させることで流体エネルギーへと変換するアクチュエータです。
これは、パスカルの原理を用いたもの。油圧ポンプを稼働させるための動力源にエンジンや電源が存在することとなりますが、そのエネルギーが小さくとも油圧によって大きなパワーへと変換し、よりパワフルな駆動を可能とします。
この特性から大動力下でのアクチュエータの使用が可能となり、堅牢性も考慮されます。
高い精度での位置決めや速度の制御が得意であるため、パワーショベルでおなじみの油圧モータや油圧シリンダ,また物体を攪拌したり方向転換させたりするロータリーアクチュエータ等の使用例があります。
油の管理は必要となるものの、こちらも大変ポピュラーな方式です。
■ 空気圧式アクチュエータ
エア駆動式アクチュエータと呼ばれることもあります。
空気圧式もまたポンプのピストン運動を利用しますが(いわゆるエアコンプレッサ)、流体は空気となるため油圧式に比べて低負荷かつ柔軟な操作が可能となります。
また、比較的簡易的な設備で用いることができるとあって、小型軽量化も容易です。
一方で高速・大出力が得意であるにもかかわらず安全性が高いことも、大きなメリットですね。
とは言え油圧式と比べるとエネルギー効率は低く、また精密な速度制御には向きません。
■ ピエゾアクチュエータ
ピエゾとは圧電素子と日本語では表記され、文字通り圧力を加えることで電圧を生じさせる特性(圧電効果)を持った素子を指します。
石英やトルマリンといった物質が有名ですね。なお、ライターにはこの原理が用いられます。
また、この素子に電圧印加すると変形する作用を逆電圧効果と呼び、アクチュエータではこの作用によって得られた素子の変位を機械駆動部の制御に利用しています。
できるだけ大きい変位を得られるよう設計されますが移動量はそう多くは泣く、一方で高速動作に向いていること。
加えて非常に小型であることから携帯電話といったウェアラブルデバイスや人体に入れられる医療機器として応用されることも。
■ その他のアクチュエータ
これらの他では、電磁石で動力を得るソレノイド式アクチュエータや超音波モータを利用したタイプ等、非常に多岐に渡っています。
なお、動力源の制御にはスイッチやプッシャー。
あるいはハンドル,レバーを用いることが一般的です。
3. アクチュエータの用途と市場
前述の通りアクチュエータは近年ますます精密な制御や機械的動作が可能となっており、ワイパーの往復運動やドアの開閉といったベーシックな用途に留まりません。
ロボットの関節動作や複雑かつ精密な動きを要する医療機器,あるいは未来の世界では、パワードスーツへの応用に…なんて夢も広がっています。
また、ゲームの世界でも非常に注目されていますね。
ディスプレイ上での操作に合わせてコントローラが振動したり、何らかの反動を与えたり…そんなゲーム体験をしたことがありませんか?
この振動を駆動させるのもアクチュエータであり、より臨場感溢れる感覚のためには、精密制御の訴求は欠かせません。
さらにただ動力供給⇒機械部の駆動の動作をなぞるだけでなく、センサを併用することで状況に応じた制御やセンサで収集したデータを用いてAI化し、自律駆動を行う技術開発も進められています。
アクチュエータは突き詰めると「ボタン一つで任意の動作を行わせる」ためのデバイスです。
そのためモノのデジタル化やオートメーション化,またIoT・・・こういった時代の要請から今後ますますアクチュエータ需要は高まるでしょう。
事実、タイプや用途にもよるものの、多くの機関でアクチュエータ市場の成長が今後も続くことが予測されており、今最も目が離せない市場の一つと言えるのではないでしょうか。
4. まとめ
アクチュエータについて解説致しました。
アクチュエータとは動力源+動力源を任意の信号へと変換する回路+機械的要素を備えた素子であり、エネルギー供給によって任意の回転運動を行ったり、精密制御を加えたりするためのデバイスであること。
タイプや用途によって千差万別ではあるものの、動力源によって「電気式」「油圧式」などに分類できること。
アクチュエータ市場はロボット工学を始めあらゆる産業で重要度を増しており、今後さらなる成長が予測される市場を有することをご理解頂けたでしょうか。
電子工作に携わる方も、そうではない方も、ぜひアクチュエータについて知っておきたいですね!