絶縁抵抗計というデバイスをご存知でしょうか。
「電気の流れづらさ」、すなわち電気抵抗・絶縁性を計測するために欠かせないデバイスとなっており、我々の安全な生活を下支えしてくれる存在です。
とは言えあまり聞きなれない用語かもしれません。
そこでこの記事では、絶縁抵抗計の重要性を解説するとともに、その原理や種類について解説致します。
1,絶縁抵抗計とは?
絶縁抵抗計とは、電気デバイスや電線が「どの程度絶縁しているか」を計測するためのデバイスです。
同名の電気試験装置メーカーが商標としている「メガー」の名でも呼ばれています。
そもそも「絶縁」とは、電気が流れない状態です。
電気デバイスと絶縁することは、安全のために絶対に欠かせないことです。
ではどことどこを絶縁しなくてはならないのか。それは電路(でんろ。電気が通じている場所のこと)間はもちろんのこと、大地と電路の間もまた絶縁することが求められます。
と言うのも、電気は高い場所から低い場所へと流れる性質を持ちます。
このため高電圧のデバイスと大地がきちんと絶縁されていないと、電路の接地面からずっと大地に電気が流れ続けてしまい(いわゆる漏電ですね)、火災を招いたり人や動物が感電してしまったりといった危険なトラブルを起こしてしまうためです。
この絶縁のために用いられる素子が「絶縁体」です。
反対に電気をよく通す素子を導体と呼びます。
絶縁体は様々ですが、ゴムやセラミック,あるいはポリエチレンといった高分子素子も有名ですね。
私たちがコンセントから伸びるプラグを触っても感電しないのは、電線がこういった絶縁体で覆われているからに他なりません。
一方でこの絶縁体は経年で劣化していきます。劣化すれば、当然ながら絶縁性も維持できなくなってきます。
家庭用ケーブルであれば「電線がはみ出してしまった」というような見た目で劣化を判断できるかもしれませんが、配線の多い産業用電気機器だと目視することは到底できません。
絶縁物の劣化によってショートしてしまうことを絶縁破壊と呼びます。
絶縁破壊によって大地へと電流が流れて、回路が過剰電流によって故障するだけでなく発火したり、大地に漏電して感電を引き起こしたりします。
そこで絶縁抵抗計の出番です。
絶縁抵抗計は数値によって「どの程度絶縁しているか」を示してくれるのです。
この数値が十分でない場合、その電気機器は絶縁破壊を起こす可能性がある、ということになります。
これは、万が一絶縁機能が不良であったり漏電してしまっていたりした時でも、その発見に有効です。
なお、絶縁抵抗計の単位はΩ(オーム)ですが、数値はその100万倍が基準となるためMΩ(メガオーム)が用いられます。
絶縁抵抗計の数値が高ければ高いほど、絶縁性の高いことを指し示します。
また、この絶縁抵抗計が低いということはきちんと安全管理ができていないことを示唆し、何らかの対策が求められます。
ちなみにわが国の電気設備技術基準第58条では、使用電圧300V以下かつ対地電圧150V以下の場所で0.1MΩ以上、使用電圧300V以下かつ対地電圧150V超の場所で0.2MΩ以上、使用電圧が300V超の場所では0.4MΩ以上の絶縁抵抗が基準値として必須です。
これは、漏洩電流が1mA以下に抑えることが安全のために重要であるためです。
絶縁抵抗計の原理は、電流が流れていない被測定物に直流電圧を印加することで電流を計測して抵抗値を求めるというものです。
いわゆるΩの法則ですね。
種類については後述しますが使い方は基本的には同一で、LINE端子とEARTH端子が搭載されているため、それぞれを被測定物に接続させます。
正極側のEARTH端子を接地側に接続させ、LINE端子は負荷側に接続します。
あとはスイッチをオンにして計測します。
2.絶縁抵抗計の種類
絶縁抵抗計は製品によって様々な種類がラインナップされていますが、表示形式ごとに「アナログ」「デジタル」の二種に分類することができます。
デジタルは視認性に長けていますが、市場的にはどちらかと言えばアナログ表示製品の方が多いかもしれません。
また、製品によって低電圧用と高電圧用にも分かれており、用途に沿って種類を選んでいく必要があります。
この電圧は「レンジ(英語で範囲の意味)」としてスペック記載されており、測定したい電圧によって単レンジ,3レンジ,可変式レンジなどが存在します。
複数レンジは設定切替えができるため、例えば250/500/1000Vとあった場合はこの三種の電圧下での測定が可能となります。
なお、どの製品も定格電圧を超えての使用はできません。
そのため購入前には、ご自身が使用する電気機器の電圧をしっかり確認しておきましょう。
近年では精度のみならず測定スピードを向上させたり、BluetoothやUSBを搭載していたり、防滴構造になっていたりと、非常に利便性高い製品が多岐に渡ってメーカーから展開されています。
性能が高い製品ほど、その分高額にもなります。
また、レンジが多い方が高価格です。
3.まとめ
絶縁抵抗計についてご紹介いたしました。
絶縁抵抗計とは電路間や電路と大地間の絶縁度合いについて計測するためのデバイスであること。
万が一絶縁破壊や漏電が起きていた場合、ショートによって発火したり大地から人や動物が感電してしまったりといった大きな危険に繋がること。
そのために絶縁抵抗計でしっかりと絶縁抵抗値を把握していることが安全管理上求められること。
また絶縁抵抗計には製品によって様々な種類があり、「アナログ表示」「デジタル表示」,あるいは測定電圧レンジなど用途に合わせて購入できることを解説しております。
私たちの生活に欠かせない電気を扱う上で、ぜひ知っておきたいデバイスです。